第9話 パーティを組もう
それから仲間を紹介するという話になったので王都へ戻ることになった。
ちなみにウルトは小さく軽くなってもらい俺のポケットに入っている。
中の荷物大丈夫かと思ったがキャブチルトした時に運転席の中の物は全て異空間に積み込んだそうで問題無いらしい。
それとポケットの中にいると会話に参加出来ないとのことでイヤホンを付けることを勧められたので俺の左耳にはワイヤレスイヤホンが装着されている。
イヤホンを通じてウルトと会話出来るらしい、ほんと便利すぎるわ……
帰りの道中は周囲の警戒をウルトがしてくれたのでかなり楽に戻ることが出来た。
【生命感知】の範囲内に入る生き物がいたら報告してもらえるのでかなり気が楽だった。
結局魔物に襲われることも無く無事王都へたどり着くことができた。
「では私たちの泊まっている宿へ行きましょう。クリード様もそこに泊まるとよいと思いますよ」
「そういえば泊まる場所も決めてなかったな……」
考えてなかったな。無意識にウルトのベッドで寝ればいいと思っていたのかな?
まぁせっかくパーティを組むって話になっているのだし同じ宿に泊まった方が都合もいいだろう。
しばらく歩いて宿に到着。入口の上には【小鳥の囀り亭】と書かれた看板が掛けられている。
中へ入り代表してソフィアがカウンターにいる女性に声をかけて俺の事を紹介してくれた。
「うちは1泊1食付きで大銅貨1枚だよ、何泊するんだい?」
「そうだな……サーシャたちは何泊取ってるんだ?」
対応悪いな……いや日本が良すぎるだけでこんなもんか?
気にしても仕方ないしスルーしよう。
「私たちはあと半月くらいですかね?」
「正確にはあと16泊分を支払っています」
サーシャが大体半月くらいと答えたのでソフィアが正確な日数を教えてくれた。16泊か……
「サーシャたちに合わせたい、16泊で頼む」
店員の対応がアレなのでこちらが下手に出る必要もないだろ。
客と店員は対等だ。
「はいよ、なら大銅貨16枚だよ」
支払うために城で貰った袋を開いて中を見る。
しまった、そういえば中身確認してなかった……
袋の中には金銀銅色んな色と大きさの硬貨がたくさん入っている。
ヤバい、どれがどれか分からない……
「クリード様どうされました? まさか持ち合わせが?」
俺が袋を覗き込みながら固まっているとサーシャが声をかけてくれた。
「実はどれがどれかわかんなくて……」
あまり大きな声で言うのも恥ずかしいので小声で返すと、サーシャは微笑んでから袋を俺の手から奪い取った。
「もぅ、クリード様数えるのが面倒とかどれだけめんどくさがり屋さんなんですか? はい女将さん、大銀貨2枚からでお願いします」
「あらま、女の子に支払いさせるなんてダメな男だねぇ……自分の分くらいしっかり管理しなよ! はいお釣り」
「面目ない、次からはそうさせてもらおう」
サーシャが機転を効かせて適当な……いや結構無理矢理な言い訳をしてくれたが結局俺が悪者、まぁこれは仕方ないだろう。
あとで通貨関係のことも教えてもらおう。
お釣りとして渡された銀貨2枚を袋に入れていると今度は鍵を手渡された。
「はいよ兄さん、これが鍵で部屋はサーシャちゃんたちの右隣だよ。面倒臭がらずちゃんと自分で管理しなよ?」
女将はニヤニヤと笑みを浮かべて鍵を渡してくれた。
一言多いんよ……
それからサーシャたちに案内されて部屋に移動。
自分の部屋はスルーしてサーシャたちの取っている部屋に入った。
中では黒いローブを着た女性がベッドの上でダラダラしておりとても荷物番をしているふうにには見えない。
「リンさん戻りましたー、新しい仲間を紹介するのでちょっとこちらに来てもらえますか?」
「んぇ? 仲間?」
リンさんと呼ばれた女性は体を起こしてこちらを見る。
そして俺の顔を見て怪訝そうな表情を浮かべた。
「え? 男? サーシャちゃん男は聖女的に不味くない?」
ちゃん呼びか……言葉遣いもちょっと怠そうなのが印象的だな。
見た目は燃えるような赤い髪を無造作に伸ばした感じの覇気のない感じ。
人生に疲れたオーラが出ている所謂残念美人って感じかな?
こういう雰囲気がたまらん! 好き! って人もいるだろうけど俺はそうじゃなくて良かった。
「もぅ、聖女的にってなんですか? クリード様はいいんですよ、なんと異世界から来た勇者様の1人ですから!」
むふーとドヤ顔で胸を張るサーシャ。そんなに胸を張るとお胸様が……
体のラインが出にくいはずの修道服着てるのに目立つんですよ……
「勇者? サーシャちゃん門前払いされたって言ってなかったかしら?」
「うっ……これには訳がありまして……」
門前払いを指摘されてしどろもどろになるサーシャ、打たれ弱すぎだろ。
「クリード様は聞いた事のない職だったからと追放されたのです! 王城の前で途方に暮れていたクリード様に声をかけて引き込みました、これで教国に帰らなくて大丈夫です!」
途方に暮れてたとか言うなよ、傷付くだろ?
「ふーん? それで強いの?」
「ステータスはそこそこ……そういえばクリード様、ウルト様となんやかんやがあってステータスも上がったと言ってましたよね?」
いきなりこっちに話振るのね……
「そういえば詳細は言ってなかったっけ? えっとね……」
ステータスを開いて口頭で伝えると、サーシャは口をあんぐりと開けて固まり、リンさんは興味深そうに頷いている。
「元のステータスは知らないけど十分強いじゃない。それにスキルの効果でステータス上昇って気になるし、気に入ったわ!」
ビシッと指を刺された。
なんかロックオンされた気がしてならない。
「まぁ教国のボンクラ共が何か言ってきてもクリードが勇者の1人って言うなら黙らせられるしいいんじゃない?」
ボンクラって……口悪いなこの人。
「ならリンさんも賛成ですね? なら早速パーティ登録しにギルドに行きましょう!」
「それはいいけどみんな冒険者登録してないでしょ?」
「さっきして来ましたよ! ほら!」
サーシャは自分の冒険証を取り出してリンさんに見せる。
ソフィアとアンナもそれぞれ取り出して見せている。
「あら、登録してたのね。なら面倒なことはさっさと済ませちゃいましょうか」
リンさんはそう言って立ち上がりさっさと部屋を出てしまった。
「あぁもうリンさん! 待ってくださいよー!」
俺たちは慌ててリンさんの後を追って冒険者ギルドへと向かったのだった。
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