第7話 戦闘を終えて

「ウルト、お疲れ様、助かるよ」

『私はマスターの安全と快適さを護るためだけに存在しますので、礼は必要ありません』

「お礼言っちゃダメなわけじゃないだろ? ならいいじゃん」


 お礼なんて俺が言いたいから言うもんだからね。


「あぁ、そうだウルト……」


 ウルトのスキルって何? と聞こうとしたがふと気が付いた。

 スキルとかのある世界って割とスキルは隠すべき、みたいな考え方あるよな?


 もちろん俺とウルトだけの時ならなんの問題も無いんだけどサーシャさんたちも居るしな……


『マスターどうされましたか?』

「いや……」


 確認した方がいいか? でも確認する相手がサーシャさんじゃ意味無くね?


 明確にパーティ組むって決まってるなら開示することに問題は無いだろうけど……


「クリード殿、どうかなさいましたか?」

「いや、ウルト……トラックのスキルを確認しようかと思ったんだけど、スキルって他人に隠すものなのかな? って思って」

「あぁ、なるほど。スキルについてはあまり吹聴するものではありませんが隠さないといけないというものでもありませんね」


 ソフィアさんはそう教えてくれた。

 なら聞いたら教えて貰えるのかな?


「じゃあソフィアさんのスキルって教えて貰えるの?」

「個人的には構わないのですが、立場上私は聖女様の護衛ですので手の内を晒す訳には……」



「クリード様、私の戦闘系スキルは【魔法(聖、光、空間)】【聖なる護り】【聖女の祈り】【魔法効果上昇】【浄化の光】です。私はクリード様に隠すことはありません。ソフィアとアンナもクリード様には隠さなくて良いですよ」


 言い淀むソフィアさんに被せるようにサーシャさんが自分のスキルを開示した。


「聖女様……わかりました。クリード殿、私の戦闘系スキルは【槍術】【身体強化】【気配察知】【騎士の矜恃】です」


【槍術】はそのまま槍の技術だろう。【身体強化】も多分イメージ通りなはず……【気配察知】もなんとなく想像出来る。


「【騎士の矜恃】?」

「はい。【騎士の矜恃】は背後に仲間がいる時筋力と耐久力に補正がかかるスキルです」


 ほぉー……なんかかっこいいな!


「自分は【剣術】【盾術】【堅牢】【衝撃緩和】の4つッス!」


 アンナさんも元気よくスキルを教えてくれた。

 アンナさんのスキルはなんとなくイメージできるな……


「クリード様のスキルは【とらっく召喚】と【とらっく完全支配】でしたよね?」


 俺のスキルか……なんか一気に増えたから覚えきれてないんだよな……

 サーシャさんたちも教えてくれたんだし隠す必要も無いよね?


 俺は「ステータスオープン」と唱えて自分のスキルを見ながら答えることにした。


「ええと……【トラック召喚】【トラック完全支配】【魔法(雷、氷、風、水、光、音)】【瞬間加速】【瞬間停止】【自己再生】【魔力吸収】の8つだね」


 なにも反応が聞こえないので自分のステータスから視線を外して3人に目を向けると、今日何度目かの驚愕の表情をしていた。


「く、クリード様! 喫茶店でお話していた時には2つだけだって言ってましたよね!?」


 言ったね。

 一緒に驚いてるってことは俺とサーシャさんの会話を2人も聞いてたんだね。


「うん。さっき【トラック召喚】でトラック喚び出してなんか魔力同期? っていうのやったらステータスも上がってスキルも増えてって意味のわからないことになってますはい……」


 3人からの視線の圧がすごくてだんだん尻窄みになってしまった……


「それは……スキルで召喚した存在からスキルを与えられたということですか……?」


 信じられないという顔で呟くサーシャさん。いや全員同じような顔してるな。


「そういうことになるのかな?」


 同期したら増えたし……


『失礼ながらそれは違います。私がマスターにスキルを与えたのではなくマスターのスキル【トラック完全支配】の効果により私のスキルを吸い上げたというのが正しいです』

「はぇー……とらっくもクリードさんも凄いッスねぇ……」


 あ、これ多分アンナさん理解するの諦めたな。


『申し遅れましたが私は株式会社三葉トラック開発により開発された【2030年式ウルトラグレート冷凍車モデル】、個体識別名称【ウルト】』です。御三方どうぞよろしくお願い致します』


 ウルトはそう丁寧にお辞儀をしてキャブチルト(画像の張り方分からないので気になる方は作者ページからTwitterに飛んで見てください)を行いお辞儀のように頭を下げた。


 ちょ、やめ! 運転席の中ぐっちゃぐちゃになる!


「ご丁寧にありがとうございますウルト様。私はアルマン教国にて聖女を務めておりますサーシャと申します。以後お見知り置き戴きたく存じます」


 サーシャさんは一度綺麗にお辞儀をしてから右手でソフィアさんを指し示した。


「こちらは私の護衛を務めるソフィアです。気高い騎士であり槍の腕は教国でも有数の存在です」

「ご紹介に賜りました護衛騎士のソフィアと申します。よろしくお願い致します」


 ソフィアさんは胸に手を当てて綺麗な礼をする。


「続きましてこちらも私の護衛騎士を務めるアンナです。少々言葉遣いに難がありますがご容赦頂けますと幸いです」

「アンナッス、よろしくお願いしまッス!」


 気をつけ! の姿勢からほぼ直角に頭を下げるアンナさん。

 なんだろ? 緊張してるのかな?


『私に対して敬称、敬語は不要です。マスター共々よろしくお願い致します』

「だってさ、サーシャさんたちも気軽に呼んであげてよ」



 なにやら堅苦しい雰囲気になりそうだったので間に入って和らげたい。


「私は普段からこの口調ですので……むしろクリード様とウルト様こそ私に対して敬称も敬語も必要ありませんよ?」

『そういう訳には参りません。私はマスターのために、人のために存在する機械です』


 ウルトも頑なだな……

 まぁ人の役に立つための産業機械ではあるから間違ってはないんだが……


「ならもうお互いそれでいいじゃん。ウルトもサーシャもそれでいいだろ?」


 お許しを貰ったので俺はあえて普通に話しかける。


「わかりました。クリード様は今後私のことはサーシャと呼んでくださいね? これでまたサーシャさんなんて呼ばれたら寂しくなりますよ?」

「ではクリード殿、私のこともソフィアと呼び捨てにして下さい。主人たる聖女様のことを呼び捨てにされる方から敬称付きで呼ばれる訳にはいきません」

「自分もアンナでいいッスよー!」



「わかったよ、ソフィアもアンナもよろしくね。できれば俺のことも呼び捨てで呼んで欲しいけど……まぁ慣れたらよろしく頼むよ」


 さっきのソフィアの言葉を借りるなら主人が敬称付きで呼ぶ人を自分が呼び捨てにする訳にはいかないとか言いそうだし。


 ウルトのおかげかちょっとだけ3人と打ち解けられた気がした。

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