第48話 一件落着……?

 バステトさんに小麦粉を使った簡単な調理を教え、調理器具をプレゼントしたあと、鬼人族の村に居るデュークさんの所へ。


「……という訳で、守り神様が欲していたのは量ではなくて、種類だったのよ」

「なるほど。では、量はもっと少なくて良いと?」

「えぇ。実際、小麦もコーンも倉庫で保管されていたしね」


 バステトさんたちの姿は見ていないが、会話出来たという事にして、毎日のお供えの品を変えてもらう事に。

 バステトさんの異空間倉庫魔法に入れると、時間が進まないから生ものでも良いと思う。

 特にお魚なんて喜ばれるんじゃないかな?


「ほ、本当これだけで良いのでしょうか?」

「大丈夫よ。むしろ、これでも多いくらいだし」

「そ、そうなのでしょうか……い、いえ、セシリア様がそう仰るのなら、間違いないですよね」


 小麦とコーンに代わって野菜やお魚に玉子など、種類は増えたものの、これまでに比べて遥かに量が少ないからか、デュークさんがちょっと心配そうにしている。

 けど、バステトさんとマヘス君はモフモフ猫ちゃんだからね。

 これでも多いくらいだからね?

 デュークさんと同じように、村長さんたちも不安そうにしているけど、気にせずバステトさんの祠へ。


「あ! セシリア様っ! 石が左側に!」

「えぇ、大丈夫よ。ちゃんとお話ししたから」

「ありがとうございますっ!」


 奥の祠へ進むと、大量の小麦が置かれていた。


「あの、セシリア様。これは一体……」

「たぶんだけど、多過ぎるから返すって事じゃないかな? 今回運んで来た分量でも多いくらいだし」

「そうなのですね。では、量が多過ぎて全ては運べませんので、運べる分だけ持ち帰るようにいたします」


 それから、昨日と同じように持ってきた魚などを奉納して……無事に終わった。

 魚はきっとマヘス君も喜んでくれるだろう。

 喜び、じゃれてくれるマヘス君の事を思い出しつつ、私も家に帰る事にした。

 それから、またお礼として食材を貰ってしまったので、今日はデザートを……惣菜ではなく、フルーツたっぷりのクレープを作り、ヴォーロスやセマルグルさんと一緒に食べる。


「んー、晩ご飯は何にしようかなー」


 夕方になって、夕食を何にしようかと考えていると、何かが私の腕の中に飛び込んできた。


「えっ!? な、何!? ……この毛艶とモフモフ具合は、マヘス君!?」

「にゃー」


 一体何があったのか、お魚を咥えた黒猫のマヘス君が私の腕の中で返事をして……慌てて魚を咥えなおす。

 この魚は、デュークさんが納めたものだよね? ……と、そんな事を考えていると、二匹目の黒猫、バステトさんが現れる。

 バステトさんがすぐに女性の姿になり、


「セシリアよ。マヘスが迷惑を掛けてすまないのじゃ」


 頭を下げられてしまった。


「あの、突然どうされたんですか? 今朝、朝食の後に祠へ帰られましたよね?」

「いや、そうなのじゃが……その、同じ材料を使っても、私が作った料理より、セシリアが作った方が美味しいと言われてしまったのじゃ」

「……あの、このお魚は?」

「おそらく、マヘスなりの報酬というか、セシリアへの気持ちの現れだと思うのじゃ」


 えーっと、それはつまり、マヘス君の大好物である魚を、報酬として私にあげるから、代わりにご飯を作って欲しいという事だろうか。


「あのね、マヘス君。バステトさんが……お母さんが作ったご飯の方が、愛情たっぷりで美味しいはずだよ?」


 子供を諭すように、優しくゆっくり話し掛けると、何回かマヘス君がニャーと鳴いて、


「ちがうの! おかあさん、りょーりがヘタなんだもん! くろこげのスミなんてたべられないよー!」

「えっ!? えぇっ!? ま、マヘス君!?」


 私の腕の中に居た黒猫マヘス君が、黒髪の幼稚園児くらいの男の子に変身した。

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