第47話 セシリアのお料理教室
「じゃあ、今から小麦を使った料理を作るんだけど、先ずはこれを粉にする必要があるの」
「ふむ。すり潰す感じかの?」
「その通りで、あの石臼を使って粉にするのよ。一緒にやってみましょうか」
そう言って、人間の姿になっているバステトさんを、石臼のところへ案内する。
「ふむ。一緒にと言うが、石臼とやらは一つしかないのじゃ」
「あ、大丈夫。すぐ出すから……ほら」
「む!? セシリアは人間族でありながら、私と同じ異空間倉庫魔法が使えるのか」
「あんな凄い魔法は使えないよー。そうじゃなくて、単に具現化魔法で今作っただけだもん」
「は!? 今作った……!? はっきり言って、私よりセシリアの魔法の方が凄いと思うのじゃ」
何故かヴォーロスやセマルグルさんが頷いているけど、異空間とかの方が凄いと思うわよ?
私の具現化魔法は、私が想像出来て、かつある程度仕組みを知っているものしか作れないし。
「具現化魔法の事は置いといて、小麦粉の作り方を続けるわね。まずは小麦の実をこの石臼の穴に入れるの」
「う、うむ。入れたぞ……ほう。次はこれを回すのか。……周りから茶色い粉が出て来たな」
「うん。それが小麦粉で、その粉を使っていろんな食べ物が作れるの。……で、実はここに、粉になったものがありまーす」
テレビの料理番組みたいだけど、これはただただ石臼を回すだけだからね。
という訳で、元々家にあった小麦粉を出すと、今度は料理台へ。
「次は、このボールにこの粉とお水、それからコーンを入れまーす」
「ふむ。あの黄色い実じゃな? だが、あの実はあまり旨くないのじゃ」
「大丈夫、大丈夫。あ、その芯の所は食べないので、黄色い実だけ外して入れたら、よーくかき混ぜますよー」
ここに少し塩を加えたら、適当な細い木の枝の先端に、きりたんぽみたいな感じで棒状にくっつける。
同じものを、それぞれ何本か用意したら、準備完了っ!
「なんとか出来たのじゃ。これを食べるのじゃな?」
「いやいや、まだ食べられないから。というか、小麦粉を生で食べたらお腹を壊しちゃうから、ちゃんと火を通さないとね」
「火か。ふむ……熱があれば良いのじゃな? では、何とかなるのじゃ」
バステトさんは、火は使えないけど熱なら……って、もしかして、電子レンジ的な魔法も使えてしまうのだろうか。
まぁ何にせよ、加熱出来れば良いんだけどね。
いつもはヴォーロスにお願いしてオーブンを使うけど、今回はバステトさんが調理する為の料理なので、違う方法で調理を――集めた木の枝に、ヴォーロスの雷魔法で火を点ける。
良い感じの焚火になったら、先程の枝を周囲の地面に差して、じっくり焼く。
暫くすると、良い香りがただよってきて……そろそろ良いかな?
「というわけで、特に料理名は無いんだけど、コーンを焼いたもの……の出来上がり! 少し冷ましてから食べましょー!」
バステトさんやマヘス君は猫だから熱いのが苦手だと思うし、ヴォーロスやセマルグルさんも、たこ焼きの一件で熱いのは避けた方が良さそうなので、ある程度冷ました所で食べてみる。
「おぉ、美味しいのじゃ! これが本当に、あの種と黄色い実なだとは思えないのじゃ」
「うん。セシリア、美味しいよー!」
「そうだな。これはなかなか……我としてはチーズが欲しいところだな」
セマルグルさんは本当にチーズが好きよね。
ひとまず、マヘス君も美味しそうに食べているし、何より小麦とコーンだけで作れるから、今のバステトさんの所にある食材だけで作れるはず。
「バステトさん。異空間倉庫へ石臼とボールに料理台を入れちゃって。私は具現化魔法で生み出せるし」
「す、すまないのじゃ。恩に着るのじゃ」
「どういたしまして。とりあえず、暫くはお供え物が無くても大丈夫かな?」
「うむ。あれだけあれば、十分なのじゃ」
これで、鬼人族さんたちの食料問題は解決よね。
良かった。
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