第42話 守り神様の祠

 鬼人村の村長さんの所へ行くと、今日のお供え物の奉納を見学させてもらえる事になった。

 といっても、別に隠して居る訳でもないし、村に住む方なら誰でも見る事が出来るらしいけど。


「では準備が出来るまで少しおまちください」


 村長さんに外で待つように言われ、何の準備かと思って見ていると、大きな荷車に小麦やコーンが次々と積まれていく。


「デュークさん。もしかして、これって一回に納める量ですか?」

「はい。既にかなりの量なのですが、足りないそうでして」


 うわー。この量を毎日でしょ?

 そんなの食糧が枯渇するに決まっているわよ!

 けど、守り神様が何者かわからないけど、この量を毎日食べるの?

 身体の大きなヴォーロスでも、こんなに食べないわよ?

 開いた口が塞がらないというか、あまりの状況に唖然としていると、家の中から村長さんと娘さんが姿を現した。


「お待たせ致しました」

「凄い! 綺麗ですね!」

「ありがとうございます。宜しければ、聖女様にもドレスをお作りしたしましょうか?」

「貴女が作ったんですか!? ……い、いえいえ。私はドレスを着るような機会がないので」


 煌びやかな衣装を身に纏った娘さんが先頭を歩き、その後を村の男性たちが荷車を引いていく。

 その後ろをデュークさんと共に歩いて行くんだけど、舗装されていない土の道を進むのは大変そうだ。

 獣人族の村へ続く道みたいに、石で舗装しても良いのだろうか?

 けど、この道は奉納へ向かう人たちしか使わないのか、轍がハマっているし……お願いされたら対応する事にしよう。

 暫く進むと森が見えてきて、その手前に大きな岩があった。


「あれが、守り神様の意思を伝える石です。道の右側にあるので、守り神様はお供物を増やすようにと言っておられます」

「……あの岩が本当に動くんですか?」

「動く所は見た事がありませんが、左側にあったのを見た事はあります」


 ひゃー……この岩は流石に動かせないわね。

 それこそ神様とかじゃないと。

 そこから奥へ進むと小さな祠があって、その前に運んできた食べ物を積み上げる。

 その次は、村長の娘さんが奉納の舞というのを踊り、これで終わりらしい。


「では、私はここで様子を見ていますね」

「聖女様……わ、私もお供いたします」

「大丈夫ですよ。それにデュークさんは、家に帰ってあげないと、奥さんやお子さんが寂しがりますよ。私は平気ですから、気になさらないでください」

「……す、すみません。では、また明日のこの時間に参ります」


 デュークさんや村長さんたちが申し訳なさそうに村へ戻っていったけど、私は本当に大丈夫だからね。

 という訳で、祠の様子が見える広い場所まで移動すると、具現化魔法で石の家を作る。

 後は、夜まで待つだけ……なんだけど、夜に来れば良いよね?

 一旦家に戻ってご飯を食べようと思い、電車まで戻ろうと歩きだしたら、大きな岩のところでヴォーロスが待ってくれていた。


「セシリアー!」

「ヴォーロス。迎えに来てくれたの?」

「うん。セシリアと一緒に歩いて行った鬼人族たちが戻って来たのに、セシリアが居なかったから」

「そっか、ありがとう。……そうだ! ヴォーロスは、ここに居る守り神様って知ってるのかな?」

「ここ? ……あー、うん。知ってはいるけど……」


 あれ? 知っているというヴォーロスから、何故かはぐらかされてしまった。

 もしかして、凄く凶暴だったりするのかな?

 とりあえず守り神様っていうのが実在するのは分かったけど……ヴォーロスは教えてくれないかなー?

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