第27話 大きなタコの足を持ち帰ってくれたセマルグルさん
「戻ったぞ」
「お帰りなさい、セマルグルさん」
「おかえりー!」
ヴォーロスと一緒に洗濯機を完成させた後、もう一つの作りたい物を作ろうとした所で、セマルグルさんが戻って来た。
「あ、今回はイカじゃなくて、タコなんですね」
「うむ。前に足を奪ったからな。もしかしたら仲間を連れ、この辺りの海から逃げてしまったのかもしれぬ。クラーケンを探したが、どうしても見つからないので、大タコにしたのだ。やはりクラーケンの方が良かったか?」
「いえいえ。イカもタコも、どちらも美味しいですから、大丈夫ですよ」
ひとまず、大きなタコの足から滴る海水をボールに取り、後でこれから塩を作ろう。
あと、せっかく大きなタコの足を持ってきてくれたので、やっぱり作るとしたら、アレしかないわよね。
「セシリア。何だか、随分と変わった調理器具を作っているんだね。ポコポコ丸い窪みが沢山あるんだけど」
「うん。そういう料理なのよ。まぁ楽しみに待っていてね」
前に作ったお好み焼きと同じ様に、小麦粉で生地を作るんだけど、野菜は入れない。
あと、ダシを入れたい所だけど、流石に無い物ねだりは出来ないからね。
丸い窪み……たこ焼き用の鉄板にオリーブオイルを延ばしたら、窪みの半分くらいまで生地を入れて、それぞれの窪みへタコのぶつ切りとネギを投入。
再び生地を入れて、外側が焼けるまで少し待つ。
少ししたら、千枚通しみたいな棒でクルクル回して……出来上がりっ!
「ほぉ。面白い食べ物だな。このような形の食べ物は初めて見るな」
「そうだね。クルクル回すだけで、こんなに綺麗な球体になるのも興味深いね」
「ふっふっふ。研修で大阪へ行った時に、有無を言わさず練習させられたからね。本当は紅ショウガや天かす、ソースやマヨネーズなんかが欲しいところだけど、少し塩を振っているから、そのままどうぞ」
そう言って、二人のお皿――無駄に舟の形にしてしまったけど――へ、たこ焼きを乗せてあげると、早速ヴォーロスがパクっと口へ。
「お、美味しいけど……あ、熱いねっ!」
「む……そ、そうだな。だが、これはこれで……いや、少し熱いか」
「あ! ごめんっ! 一口でパクっといっちゃうと、凄く熱い……って、遅かったわね。お水を汲んで来るから、待ってて!」
そう言って、バケツを手にしようとしたけれど、余程熱かったのか、ヴォーロスもセマルグルさんも、直接川へ。
うぅ……ごめんなさい。
「だ、大丈夫? 口の中を火傷とかしてない?」
「僕は大丈夫だよー。ちょっと驚いちゃったけどね」
「わ、我も平気だ。う、うむ。問題ない」
ヴォーロスとセマルグルさんに謝りながら、今度は冷たい食べ物を作ろうと思い……閃いてしまった。
だけど、それはまた明日。
今日は、少し頑張って作りたい物があるのよね。
火傷に気を付けながら食事を終え、後片付けを済ませた所で、具現化魔法を使って洗濯機の近くに大きな大理石の箱作る。
「セシリア。今度は何を始めるの?」
「ふふ……少し待っていてね」
洗濯機へ繋がる筒を途中で分岐させたら、クネクネと筒の中を通る距離を長く取るようにして、箱の上から水が出る様にした。
次は、電気で加熱するヒーターを、そのクネクネの部分に設置して、中の水を温める事が出来るようにする。
これで筒からはお湯が出てきて、大理石で作った箱――バスタブへ。
「じゃじゃーん! という訳で、お風呂の完成ー! 追い炊きは出来ないけど、お湯に浸かれるっていうだけで、素晴らしいわよね!」
早速ヴォーロスに協力してもらい、水を熱して出て来たお湯を溜め……うん。熱湯とまでは言わないけど、お風呂にしては熱すぎるお湯で、火傷しかけてしまった。
ちょ、調子に乗って飛び込まなくて良かったわ。
今日はいつも通り、川で水浴びになってしまったけど、明日は筒の長さを調整して、お風呂に入ってみせるんだからっ!
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