第26話 ヴォーロスとのお散歩
ステンレスの筒を生み出しながら、ヴォーロスと一緒にひたすら川を遡って行く。
流石に水平だと水が洗濯機へ流れていかないので、僅かにだけ角度をつけているんだけど……中々川が洗濯機分の高さにまで上がってくれない。
「……よく考えたら、川が一メートルくらい高い場所まで上がるには、山の近くまで行くか、滝でもないと無理よね」
「んー、メートルっていうは分からないけど、その筒の高さまで上がるには……あ! でも、頑張れば滝があったはずだよ!」
「そうなの? よし、頑張るわねっ!」
ポカポカ陽気の川沿いの道を、ヴォーロスと一緒に散歩がてら歩いていると、遠目に動く何かが見えた。
今のは、野犬……かな?
「ヴォーロス。さっき向こうに何か居なかった?」
「今のはブラッディ・アントだよ。珍しい闇魔法を使う、大きなアリなんだー」
「えっ!? 今のがアリなの!? 物凄く大きいけど……ひとまず防御魔法を掛けておくわね」
私とヴォーロスに防御魔法を掛け、害意のある魔法を無効化するようにしておいた。
どんな魔法を使うか知らないけど、とりあえず一安心かな?
「あ、大丈夫だよ。あのアリは、そんなに強くないから。今も、五体くらいいたのに、大慌てで逃げて行ったしね」
「そうなんだ。まぁでも念の為に、このまま行きましょうか」
暫く歩いていると、草むらばかりだったのが、いつの間にか林になっていて、木陰の中を歩いて行く。
更に歩いて行くと……あれ? 今、木が動いたような気がするんだけど。
「ヴォーロス。さっき、そこに生えていた木が、横に動いたというか、歩いて行ったように見えたんだけど」
「あ、それならきっと、デス・トレントじゃないかな? いわゆる、人面樹ってやつかな」
「え……何それ。めちゃくちゃ危ないんじゃないの?」
「ううん。そんな事ないよ。ほら、さっきのアリと一緒で、もう何処かへ行っちゃったでしょ? 名前は凄いんだけど、戦いを好まないし、大人しいんだよ」
うーん。確かにヴォーロスの言う通り、名前は凄いけど、すぐに逃げちゃう魔物ばかりね。
更に進むと、その後もいろんな魔物っぽい生物を見かけるんだけど、皆すぐに逃げてしまう。
一度、大きなモフモフの狼さんを見つけて、思わず追いかけたんだけど、凄い速さで逃げられてしまった。
まぁこんな林……というか森の中に住んで居るくらいだし、普段見かけない私やヴォーロスが居たら逃げちゃうのも仕方ないか。
……狼さんはモフモフに顔を埋めたかったなー。
そんな事を思っていると、
「あ、ここだよ。ほら、小さいけど滝になっているでしょ」
森の奥に小さな――と言っても二メートルくらいの滝を見つけたので、延々と伸ばしてきたステンレスの筒を滝の近くまで持って行き、ろうとのように広げて水を受けられるようにする。
あと、落ち葉や蛙さんとかが入って来たら困るので、水の受け口に細かい網を作って……出来たっ!
この筒を通って水が洗濯機に流れ込めば、ポンプ問題も解決ね。
「あ! しまった! ヴォーロス、急いで帰るわよ!」
「え? どうかしたの?」
「洗濯機側の筒に、蓋をして来るのを忘れちゃったから、この水が延々と注がれちゃうの! 洗濯機から水が溢れたら、水浸しになっちゃう!」
「じゃあ、僕の背中に乗って。セマルグル程じゃないけど、本気を出したら結構速いから」
「え!? いいのっ!? じゃあ、お言葉に甘えて……ふふっ、モフモフだー!」
「じゃあ、行くよ? しっかり捕まっていてね」
そう言うと、ヴォーロスが勢いよく走りだし……わぁ、本当に速い!
流石に、筒を通って行く水より速く……という訳にはいかなかったけど、溢れる前に戻る事が出来たので、洗濯機の排水口を開き……事なきを得た。
やったー! これで洗濯機が完成したのと、もう一つ作りたかった物が作れるようになるわっ!
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