第14話 ピザパーティ
「すみません。こんなに沢山交換していただいて」
「いえ、違うのです。聖女様がお持ちいただいたグレート・トラウトは、本当に価値の高い魚ですので、たったこれだけの物とは釣り合わないのです」
「じゃあ、これだけで十分ですよ?」
「流石にそれだけでは少なすぎますので、いつでも宜しいので、また聖女様がこの村を訪れてくださった際に、また残りをお渡しさせていただこうと思っております」
ひゃー。ヴォーロスが捕まえてくれたお魚って凄かったのね。
もしかして、さっき村長さんがあの川の事を死の川って呼んでいたのは、この魚が住み着いているせいなの?
でも、何にも気にせず、あの川の水で洗濯したり水浴びしていたりするんだけど。
とりあえず、ヴォーロスはお昼に獲っていたし、魔物ではないのかな?
ただ、海の魔物は昼間でも遭遇する事があるっていうし、例外もあったりするのかもしれないけど。
とりあえず、思っていた以上にチーズや牛乳が手に入ってしまったし、また次に来た時もくれると言っている。
断ってもダメっぽいし、少しお礼をしておこう。
王宮のお仕事を思い出しながら、集中し……この村とその周囲に向けて作物を成長させる土魔法を使用しておいた。
「あの、聖女様。今のは?」
「はい。沢山いただきましたので、この地に聖女の加護を与えたんです。今年は例年よりも作物が少し早く、かつ多めに収穫出来ると思いますよ」
「おぉ、ありがとうございます!」
「あと、マティスさんの家の傍に、果物の樹を植えておいたんです。今回皆さんに飲んでいただいたジュースの元となる、ブドウという果物が実りますので、村の方たちで分けて召し上がってくださいね」
「おぉぉ! あの、この世の物とは思えぬ旨さの……重ね重ね、ありがとうございます!」
この世の物とは思えぬ……えーっと、実はその通りで、日本で私が食べていたブドウなんだよね。
まぁでも、一本くらいなら大丈夫かな? 土魔法で毎日実を付けさせる訳でも無いし、種なしブドウだし。
とはいえ、念押しはしておこうかな。
「こほん。最後に、先程申し上げたブドウですが、その実は決して村から出さず、村の方たちだけで食べる様にしてくださいね」
「畏まりました」
「では、そろそろ参りますね」
そう言って、村から出ようとして、
「せーじょのおねーちゃん! またきてね!」
リリィちゃんが走り寄って来たので、ギュッと抱きしめ……あぁぁモフモフ! ちっちゃいけどモフモフ! リリィちゃんパワーを沢山もらって村を後にした。
……
「セシリア、おかえり」
「ただいま、ヴォーロス。あのお魚、ありがとうね。あれのおかげで、こんなに沢山色んな物と交換してもらえたんだー」
「そうなんだ。それは良かったよ。あれくらいなら、いつでも獲れるからね」
来た時に案内してもらった場所まで戻って来ると、ヴォーロスとセマルグルさんが待ってくれていた。
「ふむ。その器に入っている物が、チーズという物なのか?」
「そうなの! こんなに沢山もらっちゃったから、家に戻ったら早速ピザパーティねっ!」
「それは楽しみだな。……ところで、帰りの道案内はヴォーロスに任せても良いか?」
「構わないけど……どうかしたの?」
「いや、気にするでない。では、先に帰っていてくれ」
何だろう? 突然セマルグルさんが何処かへ飛んで行ってしまった。
ヴォーロスと顔を見合わせつつ家へ戻り、早速貰ったチーズを使ってピザを作っていると、もうすぐ焼き上がりというところで、セマルグルさんが何かを持って戻って来た。
「待たせたな」
「おかえりなさい……って、セマルグルさん。それは!?」
「ふっふっふ。ヴォーロスが魚を獲って、沢山チーズを得たのであろう? だから、我もチーズと交換してもらえるであろう、得物を捕まえて来たのだ」
「捕まえて来たのだ……って、この羊を!?」
「うむ、その通りだ。これで、またチーズが手に入るのであろう?」
なるほど。セマルグルさんは、私の持っている分がチーズの全てだと思ったんだ。
そうじゃなくて、ヴォーロスがくれた魚が凄すぎて、また次回行った時にまた残りを貰えるという説明をすると、
「くっ……ヴォーロス! いつの間に、獣人たちの価値が高い物を調査しておったのだ」
「えぇー。僕はそんなの知らないってば。そこの川で、いつも捕まえている魚を渡しただけだよー」
「とりあえず、この羊は元の場所へ……え? 場所を覚えてないの? ……こ、ここで飼うしかないかな」
新たなモフモフ……というかモコモコが増え、皆で焼きあがったピザを食べる事に。
「う、旨いっ! 焼いたチーズとは、このように旨いものなのかっ!」
「凄いね。トロトロに伸びて……あぁぁ、落ちちゃう!」
私がシロと名付けた羊には、ピザの代わりにコーンをあげ……皆で美味しく食事を済ませた。
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