聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。
向原 行人
第1章 追放された土の聖女
第1話 結婚破棄で追放されて、未開の地へ
「セシリア。お前はクビだ。もう来なくて良いぞ」
王都の中心にある王宮の一室で、第二王子であるルーファス様に呼び出されたかと思ったら、突然こんな事を言ってきた。
クビという事は、私を解雇するという事だけど……え!? 私、土の聖女なんですけど!?
「あの、ルーファス様。クビというのは本気なのでしょうか?」
「もちろんだ。お前は、毎日王宮で何をしている?」
「聖女として、土魔法や具現化魔法で……」
「それだ。土魔法とは何なのだ? 毎日、何かをしているが、全く目に見える成果は無いではないか」
なるほど。ルーファス様は私の仕事を理解されておらず、不信に思っているという事か。
簡単に言うと、土魔法を用いて、王都周辺で作られている作物の成長を促進したり、味や品質を良くしている。
それを物凄く広範囲に広げて使用しているから、一つ一つの作物に対しての効果が薄くなり、大した効果が無いように見えちゃっているのよね。
「ルーファス様。私は土魔法を用いて、この王都の作物を……」
「黙れ! 言い訳など無用だ! 黙って私の言葉を受け入れるならば、王宮からの解雇だけで許してやろうと思ったが、第二王子である俺様に反論するとは……決めたぞ。お前は、辺境の地ジャトラン送りとする」
ジャトラン!? ジャトランって、あの魔物が沢山居て、全く開拓されていない未開の地の事!?
というか、土魔法の事を聞いてきたのは、ルーファス様でしょ!?
「お、お待ちください! どうか今一度お考え直しを……」
「うるさいっ! 俺様の決定は絶対だ!」
「ルーファス様っ!」
「うるさいと言っているだろうが! ……そうそう。当然、お前との婚約は破棄だ。来る前は聖女だと聞いて喜んでいたが、いざ来てみたら、地味な上に何の成果もあげられない土の聖女だと? ふざけるのも大概にしろっ!」
いや、土魔法は決して地味なんて事はなくて、ただ建物内では使い勝手が悪いだけなのに。
だけど、ルーファス様は一切私の話に聞く耳を持ってくれず、
「……おい、この女を船に乗せろ。ジャトランへ連れて行け!」
「はっ! 畏まりました」
部屋に居た兵士さんたちに命じて、私を部屋から追い出してしまった。
……
ど、どうしよう。
土の聖女と呼ばれる程、私は土魔法を極めている。
王宮の外へ出れば、この兵士さんたちを倒す事くらい出来るだろう。
だけど、この兵士さんたちはルーファス様に命令された事を行っているだけで、何も悪くはない。
それに、この人たちを振り切って逃げたとして、私はお尋ね者として、もう太陽の下で暮らす事は出来なくなるだろう。
それならばいっそ、辺境の地で暮らした方が良いのかもしれない。
未開の地という話は聞いた事があるけど、小さな村くらいはあるだろう。
そこで、土魔法と具現化魔法を使ったお仕事を探して生きていく……うん、これだ。
兵士さんたちに運ばれながら必死で考え、ようやくどうしていくかの決心が着いたので、王宮に与えられていた自室の荷物を――といっても着替えや身の回りの品しかないけど――カバン一つに纏める。
「お待たせしました」
「アンタも運が無かったな。ルーファス様の虫の居所が悪かっただけだとは思うが……俺も仕事なんだ。悪く思わないでくれ」
「いえ、兵士さんたちが悪く無いと言うのは分かっておりますから」
そこから港へ連れて行かれて船に乗り……陸地がどんどん離れていく。
船の中で仮眠を取った後、
「嬢ちゃん、着いたぜ。降りな」
「ここが、ジャトラン……」
「あぁ。じゃあな」
私を陸地に降ろした船がすぐさま引き返していく。
後ろには広い広い海しかなく、前には村どころか家すらない、ただの草むらが延々と続いていて……あ、こんな場所で生きていくなんて無理だ……と、頭が真っ白になってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます