四者面談 1
ハードな料理の時間が終了、青の間のドア前にいるアリアナに挨拶をして夜食にでもと箱に詰めた唐揚げを渡す。
「いえ、いただけません」
「ディエゴは食べてましたよ」
アリアナがディエゴを軽く睨む。
「食ってみろ。美味いぞ。なんなら俺が――」
「いえ、結構です。エマ様、ありがとうございます」
二人を置いて部屋に戻ると、シオンとアイリスがベッドで寝ていた。寝るにはまだ早い時間だけど。
「二人ともどうしたの?」
「……眠い」
アイリスが頭を上げボソッと言うと、そのまま寝落ちした。二人とも気持ち良さそうに寝ているので、邪魔しないように自分を魔法で洗浄する。
「うーん。まだ臭いような……」
まだ身体が揚げ物くさい気がするのでお風呂に入る。
風呂から上がってくる頃には、シオンもアイリスも眠そうだったけど起きていた。
「お風呂入れそう?」
「ん、うん」
アイリスがどうにか返事をする。
二人は夕食をとらせ、それぞれ風呂に入れた。シオンは相変わらず髪しか洗わせてくれないけどね。夕食に出た唐揚げをアイリスは目を見開きながら無言で食べ続け、シオンは「からあげだー」と喜んでいた。やっぱり唐揚げは最強なのかもしれない。
その晩は三人ともすぐに眠りについた。
◆
次の日、起きて瞑想後に朝食をする。
「わーい。またからあげだー」
あ、朝から唐揚げ……ガス、唐揚げを気に入りすぎでしょ。
子供たちは喜んでいるからいいけど、夕食、朝食と同じメニューで他の人は大丈夫かな?
朝食が終了するとハインツから伝言が届く。
「エマ様。朝食後にロワーズ様が執務室へお越し下さいとのことです」
「分かりました。ありがとうございます」
一人で執務室に向かい、ドアを開けるとロワーズ、レズリー、ヨハンがいた。回れ右と。
「どこへ行く気だ」
「お揃いでしたのでお忙しいかと」
「まあ、そこに座れ。話がある」
ロワーズにそう言われソファの端に座るとテーブルには山盛りの唐揚げが置かれていた。呼び出しの原因はこれかぁ……。
並ぶ三人のイケメン全員の注目を独り占め……合コンだったら特等席なのにな。
「エマちゃん、久しぶりだね」
「レズリーさんも元気そうでよかったです」
北の砦に到着してからはレズリーは忙しいようで、久しぶりに顔を見たような気がする。
ロワーズがトントンとテーブルを人差し指で叩きながら尋ねる。
「して、なんの話かは分かっているな?」
「……唐揚げですか?」
山盛りの唐揚げを見ながら言えば、ヨハンが笑いだした。
「カラアゲはエマ嬢の仕業ですか。面白いですね」
「……その話は後ほどだ。市場の粗悪品の小麦粉の話だ。エマの鑑定に粗悪品が市場に混じっていると出たとハインツから報告があった。詳しく話が聞きたい」
眉間に皺を寄せロワーズが尋ねた。
「そのことでしたか。はい。市場の八百屋の小麦粉に石が混入されているものがありました。その店の他の商品も質が悪そうだったので、隣の良品が多い店で買い物を済ませました」
「石だと……? どの店だ?」
急にヨハンが前のめりになって尋ねる。
「緑に白い線の看板がありました」
「マーレ商会か。驚きではないね。あそこは以前もパンの水増しでギルドから注意の勧告を受けていたからなぁ。しかし石は磨り潰されていただろう? やはり相当な鑑定――」
「ヨハン、水増しの件はどうなった?」
ロワーズがヨハンの言葉を遮ると、ヨハンが口角を上げながら言う。
「ぬらりくらりと逃げて従業員のせいにしたね。会頭は、狡賢い狸だよ」
「水増しは直接身体に害がないが、この石の件は事実ならば然るべき対処をしなくてはならない」
ロワーズ曰く、小麦粉をより白く見せるために石が混入されているという。大人には影響は大きくないのだが……子供が下痢や病気になるので、国内では違法で罰せられるそうだ。
ヨハンが腕を組みながら唸る。
「しかし、それでも外国諸国から入ってくるのにはまだ混じっていたりするから、一概に罰せない」
「え? 外国のじゃないですよ。リーヌ産小麦粉って出ていましたよ……」
そう言った後、すぐに後悔する。三人の視線が再び私に釘付けになる。
そうだった……情報収集の話はしていなかったな。うーん……ヨハンがワクワクな顔してこちらを見ている。鑑定の話はどうやらすでに知っている感じだけど、スキルの話になるのは避けたい。何か嘘で誤魔化そう。
「えと……」
「レズリー、ヨハンしばらく席を外せ」
ロワーズが急に他の二人を部屋から出すと鋭いまなざしで凝視される。怒られる?
「エマ、気づかなかったか? 山猫が出ているぞ。しかもなんだ……何故そんなに山猫の鼻が前に出ているのだ」
おい! この猫、何勝手に出来てきてるの! 魔力全然使った感じしなかったから気づかなかったよ。しかも嘘つき猫バージョンで鼻が伸びているの恥ずかしいのだけど!
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