護衛

 次の日、目がカッと開く。天井が青い……。

 昨日はヨハンの訪問のせいで精神的に疲れたので夕食を取ると、さっさと寝た。

目覚めは良く、日課の瞑想をする。これからのことを整理するために、やるべき事をリストアップする。


1.仕事、またはお金を手に入れる方法を探す。

2.魔法のレベルを上げ、体術や武器も使えるようになる。

3.子供たちが自分で身を守れるように鍛える。


 ひとまず重要なのはこの三つ。

 あと銀髪は目立つのでこの髪色をどうにかしたい。どこでもめだっているので正直困っている。ロワーズは魔法属性の髪色は染まりにくいと言っていたけど……光の魔法でどうにかできそうな気がする。

 そんなことを考えているとドアがノックされる。リリアだ。


「エマ様。おはようございます。朝食後、ロワーズ様からお話があるとのことで執務室にお越しいただくよう申しつかりました」

「リリアさん、ありがとうございます。子供たちも一緒で大丈夫でしょうか?」

「本日はエマ様のみでお越しいただくよう仰せつかっております」


 朝食を取った後、リリアの案内でロワーズの執務室へ入ると二人の騎士に慌ただしく敬礼された。ディエゴともう一人は初めて見る女騎士だ。

ロワーズはまだ来てないようで、ソファに腰を掛け待つけどなぜか全員が無言で気まずい。

 少ししてロワーズが申し訳なさそうにやってくる。


「遅くなった。すまない」

「いえ、長くは待っていません」

「そうか。早速だが後ろにいるはエマ嬢たちを今後護衛する二人だ。ディエゴは知っているだろうが、女騎士はアリアナという」


 アリアナと紹介された女騎士は長いポニーテールの紺色の髪に気の強そうなつり目をした二十代半ばの女性だ。しなやかな腕の筋肉と腰の剣が彼女に良く似合っていた。

 でも、護衛とは……?


「護衛ですか?」

「そうだ。イアンに扮したユージーン・オレオは尋問をできる状態じゃないが、もう一人の賊は協力的だったのでいろいろ情報が得られた」


 協力的……平和的な話ではないのだろうと思いながら深くは尋ねずに相槌を打つ。


「それはよかったですね」

「ああ、奴らの狙いは私の暗殺だった――」

「ええ!」

「心配するな。初めてではない」

「そ、そうですか」


 自分の命が狙われたのに大事ではないかのように話を進めるロワーズにやや違和感を抱きながらも話に耳を傾ける。


「イアンに扮したユージーンの固有スキルの暴走で様子がおかしくなったようだ。賊が言うには急遽予定を変更して私の子供と思い込んだシオンを狙ったようだ。ただやつらのまとめ役はどうやらあの逃げた下男のようで……勘違いしたまま去ったなら、エマ嬢たちはまた狙われる確率が高い」


 あのモブがリーダー? ダイカンサマーと妄想魔法が出したゴマすり男以外特に何も思い出せない。でも、シオンがまた狙われるのは嫌だ……かといってあの男がどこにいるかも分からないから、誤解を解くのは不可能だ。銀髪が目立つ分、これは困った状況だ、


「それから、もう三週間ほどここに滞在、途中でクライスト侯爵領地ミュエラに数日滞在した後に王都へ向かう予定だ。狙われる可能性があるエマ嬢たちにもついて来てもらう。すまないが異論はなしだ」

「こちらとしても、そのほうがありがたいです」


 どちらにしても狙われるかもしれないなら大勢の騎士と一緒にいたほうがいい。それに私はこの世界のことをほとんど知らない。一人ならまだしも、子供の安全を第一に行動すべきだ。


「本来なら北の砦に残ってもらい、ヨハンにエマ嬢らを任せようと思ったのだが――」

「絶対にロワーズさんと一緒について行きます」


 ヨハンと置いてけぼりとかやめてほしい。食い気味にロワーズに返事をする。


「あ、ああ。もちろんだ」

「ですが、できれば仕事が欲しいです。ただでお世話になるのは気が引けるので」

「仕事か……こちらもエマ嬢の魔力の高さと鑑定の力を借りたい。私が個人で雇用するのはいかがだろうか?」

「ロワーズさんが雇用主ですか? それは……雇用条件はどのようなものでしょうか?」

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