罠
朝、目が覚め天井を眺める。
(んー、青い)
この部屋は天井までこんなに青かったんだ。
ベッドの両隣を見れば、子供たちはまだ寝ていたので静かに起きて瞑想をする。
ドドン
『瞑想のレベルが上がりました』
アナウンスのタイミングは相変わらず邪魔だけど、瞑想の集中力は前よりも途切れない。
シオンとアイリスがまだ眠そうな目を擦りながら起きると、リリアが部屋を訪れる。
「皆様、おはようございます」
「リリアさん、おはようございます」
リリアの後ろからはアンと初めて見るメイドがカートを押しながら入ると、朝食の準備を始めた。私の誓いが間違っていないのならば、リリアは侍女なので目上の者や客人にはお茶は入れるが配膳や水仕事は基本やらないという。それぞれの役割がちゃんとあるらしい。
リリアが初めて見るメイドの紹介をする。
「こちらはメイドのデイジーです。この部屋の担当になりますので以後お見知りおき下さい」
「よろしくお願いします、デイジーさん。私はエマで、こちらがシオンとマークです」
「エマ様。シオン様。マーク様。よろしくお願いいたします」
綺麗なお辞儀をしたデイジーを鑑定するが、特におかしい点はない。普通のメイドだ。
リリアが苦笑いしながら言う。
「エマ様、私たちのことは呼び捨てでお呼びください」
「私は短期で滞在させて頂いている身です。呼び捨てだとなんだか命令しているみたいで、正直苦手で……」
これは本当だ。私は確かにロワーズの客人という立場だけど、誰かを顎で使うような立場ではない。
「困りましたね。分かりました。それでも、人前では出来るだけ呼び捨てでお願いします。ロワーズ様の威厳にも関わりますので」
「あ、そうですよね。努力します」
ロワーズの威厳、そういう風に捉えられるのか……それならば郷に入れば郷に従えで私も努力しなければ。
朝食を終え、リリアがアンとデイジーを下がらせると持っていた布袋を開ける。
「ロワーズ様よりマーク様のお着替えの替えをお持ちしました。マークくんでよろしいのですよね?」
ああ、リリアの固有スキルでマークが女の子ってこと分かったのかな? 考えてみれば、いやらしいスキルだよね。相手の全身スキャンって……。
「はい、男の子で大丈夫です」
「かしこまりました」
リリアはそう言うとアイリスに服とマントを試着させる。相変わらず、サイズがピッタリだ。アイリスのマントの色もマントは私たちとお揃いだ。
「似合っているよ」
「お、おう。リリアさん、ありがとう……」
照れながらお礼を言うアイリスも新しい服に顔が綻んでいる。
リリアは満足そうな顔をするとその後、部屋を退室した。今日の予定は特に無い。
スキルを報酬で金貨二百枚ある。平民の一家族の二十ヶ月分ということだったけど、私たちはほぼ何も物が無いので……これからはもっとお金は必要になるだろう。
(お金を稼ぐ仕事か方法を早く考えないと……)
それにはスキルを鍛えないといけない。魔法も便利だし威力も強いのだけど……いざとなった時に使える魔法以外のことも鍛えたい。子供たちにも自分の身を守る力をつけさせたい。
やらないといけないことは多い――
「ん?」
ゴソっとドアの付近で音が聞こえた。誰かいるの? 不用心にドアは開けたくないけど、ドアの傍で少し大きな声で尋ねる。
「誰ですか?」
返事がない……それなら開ける必要ないでしょ。無視しよう。
野営地の件もあるから、一応侵入なんてされた時のために罠を仕掛ける。
水魔法で鳥黐をイメージして粘り気の強い液体をドアの前に撒き仕掛けておく。魔法はほんと便利だ。イメージしたら大抵の物は創造可能だ。
アイリスが床に撒かれた鳥黐を見ながら尋ねる。
「これ、なんだ? ベタベタするぞ」
「あ、触らないでね。これは、元々は鳥を捕まえるための罠よ。不届き者が入ってきたら嫌でしょう?」
「ドアの前にいる奴か? あれは多分……」
アイリスが何か言いかけたけど、おやつ用のクッキーを出しているのを見てそちらに気を取られたようで話が中断する。まぁ、誰であろうコソコソせずにノックすればいいだけの話でしょ?
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