アイリスとの話 2
奴隷……そんなことを心配していたのか、この子は。
ロワーズはアイリスを保護をするつもりのようだけど、この子にとってはその言葉は到底信用できることじゃないよね。急にアイリスのこれからを勝手に決めてしまったことを少し後悔する。でも、余計なお世話と分っていても……今は力を育てるまではロワーズたちの庇護下で過ごした方がいいと思う。
アイリスをギュッと後ろから抱きしめ、明るい声で言う。
「マー君、期待しているところ申し訳ないんだけど、ウエステリア王国には奴隷制なんかありましぇーん」
「やめろ。抱き着くな。俺は真剣に聞いてんだ!」
アイリスがややイラついたように言うので、真面目な声に切り替え尋ねる。
「アイリス。今はアイリスって呼ばせてね。どうして私がアイリスを奴隷にしないといけないの?」
「それは……鑑定で見たんだろ?」
「ああ、魔力やスキルのことね」
「権力ある奴はなんでもできると思ってる。俺の魔力やスキルが分かれば、絶対自分のために利用しようとするんだ」
アイリスは権力者と何かトラブルになって逃げたのだろうか……でも、私は権力者でもなく、アイリスの力を必要ともしていない。
「私に権力があると思うの?」
「銀髪だし、騎士団長といい、エマも絶対貴族だろ?」
軽く笑い後ろからアイリスの頬を突き言う。
「ぶっぶー。ハズレです。二週間前に森の中で迷子のところ保護されたばかりの、迷子の銀髪です。しがない平民のエマですよ」
「それは……お前たちも捕まってんのか?」
「アイリスにはそう見えるの?」
「いや……」
私とシオンは決してロワーズたちに捕まっているわけではない。逆に丁重に扱われ過ぎて怖いくらいだ。
「ロワーズ団長の言ったことを覚えてる?」
「保護するって……でも、そう口で言ってるだけで嘘かもしれない」
アイリスに何があったのかはまだ詳しくは聞かない。無理に尋ねても今はまだ話してくれなさそうだ。乱れたアイリスの髪を指で梳かしまとめる。
「初めから全てを信じなくていいよ。これから本当かどうか吟味していけばいい。嫌だったらいつでも一緒に逃げようか? 私から見たロワーズは……まぁまぁ信用できる人物だよ」
「なんだよ、それ。団長の事、呼び捨てだし」
「あ……呼び捨ては心の中だけね。内緒にしてね」
「ぷっはは」
アイリスの純粋な笑い声を聞き、目を細める。
その後もアイリスと他愛もない会話をしていたら、いつの間にか二人とも意識を手放していた。
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