シオンの姓
「ん……」
「シオン、おはよう。よく眠れた?」
「おはよう、うん。ぼくよくねれた」
まだ完全に目覚めていないシオンがボーっとした顔で言う。トロンとした表情が可愛すぎて、誰かに攫われそうで……私は心配だよ。
天幕の入り口でハインツの声が聞こえる。
「エマ様、シオン様。おはようございます。本日の朝食は、ロワーズ様と同席をお願いいたします」
「分かりました。今準備します」
昨日は、結局ロワーズ達とは会わずに一日のほとんどを天幕の中で過ごした。軽く身支度をして、ロワーズの天幕に向かった。
ロワーズの天幕を入ってすぐの執務室エリアにはテーブルが準備されており、ロワーズとレズリーが談笑していた。
「ロワーズ様、エマ様とシオン様をお連れ致しました」
「ああ、二人ともこちらに座ってくれ」
ハインツが引いた席にシオンと座ると、隣に座ったレズリーに声を掛けられる。
「二人ともおはよう。昨日はゆっくり休めたかな?」
「おかげさまでゆっくり休めました。素性も分からない私たちなのに、何から何までお世話をおかけしております」
「お礼は俺じゃなく団長によろしく」
レズリーが隣に座るロワーズの肩を軽く叩く。
「もちろんです。ロワーズさん、いろいろと配慮していただきありがとうございます。大変感謝しております」
「よい。二人とも楽にしてくれ」
ロワーズは無表情? ううん、少し照れ笑いしてる。きっと地位がある人達だろうし、ある程度は丁寧に対応したほうが良いと思っている。
「前も紹介したが、私はロワーズ・フォン・クライスト。黒騎士団を預かっている団長だ。こちらは副団長のレズリーだ」
「エマ・シラカワです。こちらはシオンです」
「うむ。こちらも尋ねたいことは多いが、先に質問があるのならば聞く」
「それなら――二人のことについて教えてください」
この国について詳しく尋ねたかったけど、逆に自分が故郷のことを尋ねられると答えにくいので当たり障りのない二人のことを尋ねた。自国の情報なら別のウエストリア王国の人から聞き出せばいいだろう。
ロワーズはクライスト侯爵家の者で現在は伯爵位を賜っているという。レズリーは平民出身で騎士爵を賜っているという。家名は特例を除き貴族のみが持つことができるらしい。爵位は公・侯・伯・子・男・騎士と地球と然程かわらないようだ。騎士団は白・黒・紅・蒼・翠があり、白騎士団は近衛騎士団だそうだ。
主に貴族と騎士団についてある程度答え終わったロワーズが尋ねる。
「エマは家名があるが貴族なのか?」
あ、そうだ。さっきロワーズの自己紹介に釣られて、つい苗字まで言ってしまった。
「貴族ではありません。私たちのいた所では一般――平民にも家名がありました」
「それでは、シオンにも家名があるのか?」
ロワーズとレズリーの視線がシオンに向く。なんで急にシオンに話題を振るのだろうか。なんか怪しい。【鑑定】と心の中で唱える。
ロワーズ・フォン・クライスト
年齢:二十七
種族:人族
職業:黒騎士団団長
魔力6 体力8
スキル: 言語7、長剣、 短剣、槍、棒、 索敵、 統率、戦闘、俊足、 殺気、 防御、毒耐性、房中術、 精神耐性、ステップ、社交、交渉、作法、 ダンス
魔法属性:風・雷
魔法:生活魔法、風魔法、雷魔法
称号:黒い鬼、
レズリー
年齢:二十五
種族:人族
職業:黒騎士団副団長
魔力5 体力7
スキル:言語、長剣、短剣、 槍、弓、索敵、統率、 戦闘、俊足、 殺気、 防御、 房中術、精神耐性、交渉、 商人
魔法属性:火
魔法:生活魔法、火魔法
ユニークスキル: 鑑定
称号:黒狼
うん。とても強そう。二人ともまだ二十代なんだね。実年齢より少し上に見える。鑑定を持ってるのはレズリーだけだけど、やはりもうすでにこちらを調べていたのだろう。勝手に二人のステータスを見たという罪悪感は消える。
ロワーズの称号、
レズリーが、鑑定でシオンのステータスを見たからシオンの家名について尋ねたのか。ここは、どう返事をしようか。
「ん? どうしたの?」
私の服を軽く引っ張り、見上げたシオンが口を開く。
「ぼく、むこくせきじだから、みょうじはないっていわれた」
「え?」
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