私、エロいけど心臓とか肝臓は食べないからね。

猫野 尻尾

第1話:1000年って長かったわ。

注、この作品は性的要素を含みますので、苦手な方は読まずにスルーしてください。

よろしくお願いします。


俺は「堂島 一郎どうじま いちろう 」っていう。

年齢は25才、職業は主に古民家の建築デザイナーなんかやっている。

フリーターみたいなもの・・・だから毎日が仕事で毎日が休みみたいなもの。

出世なんかより自分がやりたいって思うことを優先している。


休日の観光地は混むと思って、俺は平日古民家を訪ねるため三重県に

やってきた。


旅のメインは古民家だが、来たついでに応瀬古神宮おうせこじんぐうを巡った。

俺はノスタルジックなものに興味があるせいか、神社とかそういう荘厳で神秘的な

佇まいが好きだった。


それから七里度浜海岸の「泳ぐぞ!鯉のぼりちゃん」を見に行って帰りに

白瀧大明神しらたきだいみょうじんに寄った。


平日ということもあって参拝客はまばら。


清流で身を清めてから参拝したあと神社の横に鎮座してあるって言う

ご神体を拝みに行った。


ご神体は木できた格子の囲いの中にあるはず。

で俺は格子の中を覗き込んだが、肝心のご神体が見当たらなかった。


で、しかたがないので立ち去ろうと思ったら、どこからか俺の足元に

丸い玉・・・玉だから丸いに違いない・・・玉がコロコロと転げて来た。


俺はその玉を拾って確かめて見た。

それは玉虫色に輝いて美しいみごとな玉だった。

見ていると、つい吸い込まれそうになった。


神社にお祀りしてあったものなのか?

それはまるで拾ってくれって言ってるように俺の前に転がって来たのだ。


俺は玉を放置する気にならず、そのままバッグにしまった。

その時は、帰りがけにでも神主さんに返しておけばいいと思った。


神社の階段を降りる前に何百年も生き抜いてる神社の木々を愛でて、

新鮮な空気を吸って帰ろうと思ったら、参拝客の一人に声をかけられた。


思いがけず、俺の知り合いだった。

久しぶりの出会いで少しテンションが上がった。


すっかり話が盛り上がって、俺は神主さんに玉を返すのも忘れてしまった。

結局、玉をバッグの中に入れたまま、家に帰ってきてしまった。


で、バッグの中から玉を取り出して、どうしたもんかと思って

そこらに置くとコロコロ転がるから、固定しておいたほうがいいだろうと思って

台所から皿を一枚持ってきて、それに玉を乗せてショーケースの上においた。


そして置いたまま、次の日まで忘れて寝てしまった。


で、次の日仕事に夢中になってると、あっと言う間に1日が過ぎて

寝る前にシャワーを浴びてから、キンキンに冷えたビールを飲んでてなにげなくショーケースの上に置いた玉を見ると色が変わってるのに気付いた。


たしかに拾った時は玉虫色だったはずなんだが、今は単色って言うか

真っ白に変わっていた。


変だなって思った。

俺は光の加減で玉の色が変わるのかと思った、だから夜になると白い色に

変わるのかなって思った。


そしたら玉は白いまま少しづつ光りはじめた。

そして見る間に眩しいくらい部屋中が真っ白な光に包まれた。

何事が起きたんだって思ったが、それがしばらく続くとゆっくりと収まった。


日眩しい光が収まったと思ったら、なんとそこに白い髪の女が白い着物を着て

座っていた。


不思議なものって、大概こういう感じで光に包まれて登場したりする。


上から下までオール白って、白無垢?・・・結婚式から逃げてきた

花嫁さん?・・・。

まさかさっきの白い宝から出てきたのか?


俺は少し、後ずさりしながら言った。


「ちょっと落ち着くから待ってくれる?」

「ありえないことは、なかなか把握するのに時間がかかるだろ?」


女はまだ?ってふうに首をかしげて俺を見た?


「ところで君は?」


「私、白瀧大明神しらたきだいみょうじんのご神体」


「はい?・・・ご神体って、あの玉がご神体だろ?」

「俺は、ご神体を持って帰っちゃったんだ・・・」


「あなた、白瀧大明神のご神体ってなにか知ってる?」


「え?知らない・・・白瀧さんは昨日はじめて行ったからね」


「あなたね、ご神体が祀られてる横の立て札読まなかったの?」


「ああ、読んでないわ・・・」


「白瀧大明神のご神体は白蛇だよ・・・で、私がその白蛇・・・女性特有の

病気の治癒や安産の信仰を集めてるの」


「白蛇?・・・って、どこからどう見ても女性じゃん?」


「そうだよ・・・今は人間の女性に化身してるんだよ」

「あなたのためにね・・・白蛇のままじゃ会話できないからね」


「なんで、あの玉、俺の足元に転がってきたんだ?」


「あのね、あなたが白瀧大明神に来た日、あの日はね、私が1000年の封印から

解けて、ようやくあの格子の中から出てくることができるようになった日だったの」

「1000年って長かったわ・・・」


「いつ出てやろうかなって思ってたところに、なんだか間抜けヅラで

格子を覗いてる男子がいたから・・・こいつについてっちゃおうかなって思って」


「間抜け毛ヅラって俺のことか?・・・失礼だな」


「本当は、あなたが 人畜無害で人の良さそうな人だなって思ったからね」


「 神社に1000年も閉じ込められてたらさすがに飽きちゃうでしょ・・」

「だから玉になって持って帰ってもらおうと思って・・・」


「はあ・・・確信犯的な・・・」

「分かった・・・悪いけど玉に戻ってくれる?・・・明日、玉を白瀧大明神に

返しに行くから・・・」


「え〜せっかく出てきたのに、私を見捨てるつもり・・・あなたってそんなに

冷たい人なの?」


「だってさ、白蛇の飼育方法なんか知らないし・・・」


「飼育ってなに?・・・その言い方ひどくない?」


「だってさ・・・蛇って生きたネズミとか喰うんだろ?」


「あのね、人間でいるときはネズミなんて食べないの・・・」


「じゃ〜なに食べるんだよ」


「人間の心臓と肝臓・・・」


「まじで?・・・絶対置いとけないだろ、そんなやつ」

「ネズミ食うって言われた方がまだマシだわ・・・」


「って言うか、最初にもどって冷静になって考えてみろよ」

「白蛇が女に化けてるって、そんな馬鹿な話あるか?」


「あら、中国じゃ、かなりメッジャーだよ、白蛇伝説って言って・・・」

「もっともあっちの白蛇はめっちゃエロくて、やっぱり人の心臓と肝臓を食らう

って話だけど・・・ 」


「さっきのは冗談でね、私、心臓も肝臓も食べないからね・・・

エロいだけだから・・・」


「エロいだけって・・・まあそこは妥協するとして・・・やっぱり爬虫類は

無理だわ」

「今夜はここに泊まっていいから・・・明日、白瀧さんへ帰ってくれないかな 」


「俺、明日白瀧大明神まで玉を持っていくからさ・・・」


「ダメだよ・・・せっかく来たんだから・・・ここから動かないからね・・・

どうしてもって言うなら白蛇に戻ってやるから ・・・」


「いや、待て待て、俺はまじで爬虫類ダメなんだ。」

「勘弁してくれよ・・・よりによって蛇って、俺、トカゲもダメだし・・・」


「ただの蛇じゃありません・・・白蛇です・・・」

「白がついてるのとついてないのじゃ大きく違うからね」

「蛇ってひとまとめにして呼ばないで」


「私は神の化身なんだよ、それって、めちゃ尊いんだよ」

「ほんとは崇めてもらわないといけなんだからね」


「そうなんだ・・・君って偉い蛇・・・白蛇なんだ・・・」

「つうかさ・・・俺もう疲れた・・・」

「・・・ちなみに聞くけど・・・君の名前は?あるんだよね一応名前とかって?」


「私の名前は「寧々」ねね


「ねね?・・・ねねって言うんだ、君さ昔、豊臣秀吉の奥さんだったことある?」


「誰よ、それ?」


「ん〜まあいいわ・・・蛇なんて言うからなんかもっとオドロオドロしい名前

かと思った」

「意外と可愛い名前なんだね・・・君って」


「蛇じゃなくて白蛇だよ」


「あ〜だな・・・白蛇の寧々ちゃんか・・・」



第2話がもしあるなら、つづくのじゃ。

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