13話「二人目」


「はい!確かに騎士の体の一部を確認しました!これにて依頼完了です!」



 何とか誤魔化せた様だ、表情を崩す事なく凱亜は心の中で安堵の息を漏らした。


 結局、あの日の夜。

 僕はゲリュオンと互いに手を取り、短い人生を共に歩む事を決定した。


 今は、ギルドの人に討伐の報告をした所であった。

 仲間にしてしまった為、どうすれば良いか迷っていた所、ゲリュオンはそんな迷える凱亜を見て、こう言った。



「ジャンクパーツを渡せば、きっと騙されるぞ?」



 と、告げ口する様に言ってくれると同時にゲリュオンは凱亜に自分が持っていた古びた鎧の一部の様なパーツを、凱亜に手渡したのだ。


 手に取った時。凱亜は以下にも、って感じの鎧の一部である様に感じた。


 古びて、折れ曲がったかの様にして歪な形となってしまっている金属片の欠片の様な物。



 これを、討伐した証拠としてギルドの受付嬢に見せたら騙せるとゲリュオンを言ってくれた。


 最初は半信半疑であり、バレたらどうしようと不安で仕方なかった。



 実際の所、討伐の証拠としてこの欠片を出そうとした時は、息を飲んで少しばかり緊張してしまった。

 バレたらどうしよう、と。もし渡したら偽物とか言われるのではないだろうか。

 もしかしたら違うとか言われるのではないだろうか。



 ◇◇



 しかしそんな不安はすぐに吹き飛んでしまった。

 意外な事に、これですと言ったら何にも疑われる事なくすんなりと依頼達成と言われてしまったのだった。


 そして、失敗続きで危険な依頼と言う事もあってか、報酬金の量はゴブリン退治の時とは比べ物にならないくらいの大金だった。


 これなら宿に泊まりながら、数週間毎日3食食べてても何ともなく生活していけるレベルだ。



「おぉ!!これは…!」



「失敗続きだったからか、もの凄い量だぞマスター!」



 シルヴァは布袋の中にぎっしりと入った金色に輝くGの内の一枚を取り出し、熱心になって見つめる。


 それは凱亜も同様だ。

 数え切れない程に、袋の中に敷き詰められた金色のGを見て、少しばかり嬉しくなる。

 こんな大金を見るのは久しぶりだ。


 これで、暫くは美味い飯が食える生活を送る事が出来るだろうと、凱亜は思った。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「ふむ、今の時代も変わらず硬貨を使っているんだな…」



 部屋のベットに座り込みながら、ゲリュオンは興味深くGを見つめていた。



「ゲリュオン、勝手に使わないでくれよ?」



 ゲリュオンの大きな手に乗っけられた一枚のG。

 まるで、頭部のモノアイで細かく分析する様にしてコインの形をしたGをゲリュオンは見つめている。


 ゲリュオンの手は大きく、その手の大きさではGの大きさはまるで豆粒程度の大きさでしかなかった。



「いやいや、ワタシは食事も睡眠も必要ないからな。特に金を使う予定はない。それに態々、少し大きい部屋を借りなくても良かっただろうに…」



「いや、一人部屋じゃゲリュオンが入れないじゃん?」



「別に外で構わない、暑さも寒さもワタシは感じないからな」



 そうゲリュオンは、何の動揺も見せない様な落ち着いた口調で言う。


 それに対して凱亜は、内心で…。



 ―――そう言う事じゃねぇ…。



 と、一言呟く。別に寒いとか暑いの問題ではない。

 ゲリュオンは仲間だ。僕達二人目の大切な仲間なんだ。


 まだ会って日は浅いが、決して信用出来ない訳では無い。



「いや、同じ仲間として。当然の事だ…」



「……」



 凱亜の熱い友情の言葉に、ゲリュオンは何も言わず、と言うか何も言う事が出来ずに、ただ静かに凱亜の事を見つめる。


 数秒程、誰一人として口を開く事はなく、部屋の中で沈黙の場が続いた。



「……フッ、やはりニンゲンとは面白い…」



「ん?何か言ったか?」



「……いや、そう言うのならそうさせてもらおう…」



 ゲリュオンは素直に凱亜の言葉に甘える事とした。


 外で待っているのではなく、彼らと同じ様に部屋の中で過ごすと言う事を。



 ◇◇



 そしてこの日の夜は、一晩中三人で起きていた。外の世界は既に深い夜に落ち切っており、インク色の空には星の様な光が散りばめられ、月明かりの様な光が差していた。



 凱亜とシルヴァは眠る、と言う事を忘れるかの様にして深夜になっているにも関わらず凱凱達が借りている部屋は常に蝋燭による明かりが灯っていた。



 何をしているのかだって?



 ゲリュオン→凱亜→シルヴァの三人でそれぞれ親睦会と言う名目で、面白い話をしているのだ。


 気分は姉と夜更かしして、部屋でゲームをしたりアニメの映画を見ている様な気分になった。



 全員、何かしらの面白い話や過去の話を持ち寄って、過去を語る様にして話す。


 ゲリュオンは、今まで見てきた景色。そして過去に起きた出来事について。


 凱亜はこの世界に来る前の話を、そして追放されたと言う重要な事も。


 シルヴァはおとぎ話の様な、童話の様な話を聞かせてくれた。

 どれも異世界が舞台である為に、知らない様な内容ばかりだったが、何故かドイツの英雄的存在であり、竜殺しとも呼ばれるジークフリードの話が突然出てきて驚いたが…。



 そして、そんな風に寝る事忘れて夜更かしをしていたら、翌日寝不足になって凱亜とシルヴァが寝坊したと言う事は内緒で……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る