第131話:帝龍祭②

 今日は帝龍祭二日目だ。

ちなみに十二人のトーナメント戦を具体的に説明させてもらうと、一日目四試合、二日目四試合、三日目準決勝二試合、四日目決勝一試合である。


今日はシード権の奴等も全員戦う。俺は最終試合なので三試合目までは初日同様、ヨルムンガンドの上で優雅に観戦させてもらおう。


「アルテー。ポテト買ってきたぞ~」

できる男ルーカスが大量のジャンクフードを買ってきてくれたので、皆で食べながら観戦しよう。あれだ、映画見ながらポップコーン食うみたいなノリだな。


ルンルンで席に着いたら、リリーがジト目を向けてきた。

「あんたここにいていいの?今日選手として出場するんじゃないの」

「大丈夫だろ。まだ二日目だし」

「どういう理論よ……」


「アル兄様、今日の相手は誰なの?」

「まだトーナメント表見てないからわからんな。昨日勝利した四人のうちの一人だろう」

「えぇ……」


母ちゃんがやれやれといった感じで言った。

「皆何を言っても無駄よ。アルは昔からこういう子なんだから」

「そうだぞ」

「褒めてないわよ」


というわけで、二日目の一回戦が始まった。

「今日の一回戦の選手はルル侯国代表、無敵要塞ブレイズ・キール!伯爵と言う地位に驕らず、研鑽に励んできた彼の護りはまさに鉄壁!!!」


「そしてついにシード権選手の出場です!キール伯爵の相手はサミュエル聖王朝代表の聖王です!天使族最強と謳われる彼女は一体何を見せてくれるのか!?乞うご期待です!!!」

両者に歓声が上がった。


「どんな魔法使うんだろうね~」

「魔力の感じから推測するに、固有魔法ってことは間違いない」

「お兄様も覚醒者だから、固有魔法所持者が出てきてもあまり驚かなくなっちゃった~」

「すまん」

それはマジでごめん。


ブレイズ伯爵がドアップでスクリーンに映された。

「俺は己がどこまで行けるのか、試してみたい。胸を借りるつもりで挑ませてもらおう」

ほう。謙虚で良い奴じゃないか。うち(黒龍騎士団)に欲しい。


次は聖王がドアップで映された。

「世界中の下等なヒューマン共に天使族の王の力を見せて差しあげます。感謝しなさい」

あちゃー。会場が静まり返っている。

なかなか香ばしいコメントを残した彼女だが、ある一定の層からは絶大な人気を誇る。


「はぁはぁ」

「せ、聖王様……」

「もっと罵倒してぇ」


何を隠そう、世界中のマゾ達から大人気なのである。

まさにあんな感じで。

おい、両手で己を抱いてグネグネするのをやめろ。


「これで実力が本物ってのが恐ろしいよな!」

「まったくだ」


「二日目、一回戦目スタートぉ!!!」


「行くぞ!【無敵要塞】!!!」

キール伯爵の固有魔法は《防御盾》だ。初日はそんなに使っていなかったが、今回は最初から最大展開し、彼の所以たる無敵要塞という技を駆使して戦うようだ。


別にヤケクソになったわけじゃない。

キールは相手が完全な格上だということを理解した上で、初動からわざとかっ飛ばしているんだ。聖王が相手の場合、小手調べなんかする暇は無いからな。


「なかなか分かってるじゃないか。キール伯爵。気に入ったぞ」

「あんたが他人を褒めるなんて珍しいわね」

「ああいうわかっている戦士の戦いは見ていて楽しいからな」


キールは一つの弾丸となり、突進を仕掛ける。

だがまだ聖王は動かない。

あと数メートルの所まで迫った瞬間、彼女はそっと呟いた。

「風」


凄まじい突風が吹き、キールは元の位置にまで戻された。

地面が抉れる程の力だ。


オリビアが目を丸くした。

「覚醒者なのに属性魔法を?」

「いや、違うな。彼女の言葉に魔力が乗っていた。あれは恐らく《言霊》魔法だろう」

「何よそのチートみたいな魔法は……」

「色々制限はあると思うが、それを加味しても確かにチートじみているな」


これはマズいな。キールはゴリゴリの近距離マンだから、そもそも近づかなければ話にならない。


「木の根よ。あの男を拘束なさい」


硬い石材でコーティングされたはずの舞台から次々と木の根が生え、キールの足に絡みついた。

「うぉっ。なんだこれは!」


彼は持ち前の怪力で強引に引きちぎり、再び聖王に接近。

地面を削りながら突き進むその姿は、まさに歴戦の怪物。

並みの戦士であれば尻もちをついて白旗を上げるレベルだ。


今度は接近に成功。

聖王目掛けて戦斧を振るう。

「止まりなさい」

「うっ……」


しかしキールは動きを停止してしまった。

「跪きなさい」

「くっ……」

キールは跪き頭を垂れた。


「石の槍」

地面から鋭い槍が生え彼の喉元で止まった。

聖王は彼の頭を片足で踏みつけ、言った。

「このままだと死んじゃいますよ?大きいだけの凡夫さん」

「こ、降参だ……」


「聖王の勝利です!!!!」

ウォォォォォ!!!


観客たちは大盛り上がりだ。

「なんだよ、あれ!魔法なのか?」

「でも属性魔法と言えば属性魔法だったよね?」

「あのキールが成すすべなく敗れるとは……」

「はぁはぁ……いいなぁ」


彼等の言葉を要約させてもらうと“なんかよくわかんないけどスゴい”、である。


ルーカスは冷静に分析する。

「全然本気出してなかったよな?聖王」

「ああ。本気のホの字も出してないぞ」

「キール伯爵応援してたんだけどな、俺」

「同じく」


ルーカスはうちのアホ親父と同じ、『護りの剣』を得意とする騎士だからな。何かキール伯爵と通ずるものがあったのだろう。


「続いての二回戦目はリオン王国代表、撃滅拳のブラッドフォードです!彼女は昨日素晴らしい戦いを見せてくれました!今日もよろしくね!!!」


「その相手は魔王です!シード権の選手でございます!魔人族を率い、大陸で恐れられる魔王の実力やいかに!!!」


ドアップでブラッドフォードが映された。

「俺は勝つぞ!絶対にな!見てろよ兄弟達!!!」

といい、片腕をグッと掲げた。


やはり冒険者はこうでなくてはな。彼女のおかげで冒険者に対するイメージがどんどん良くなっている気がする。サンキュー、ブラッド。


次は魔王が映された。

「三秒で終わらせてやる。くっくっく……」

きっしょ。


「二回戦目開始ー!!!」


熱い戦いが始まると思いきや、試合は唐突に終わりを迎えた。

魔王は両手を広げ、魔法を唱える。

「【世界崩壊】(ガイアブレイク)!」


奴を中心に破壊のエネルギーが広がり、凄まじいスピードで舞台を飲み込んでいく。

結界が張られているので俺達には害は無いがブラッドはヤバい。


思わず口に出してしまった。

「逃げろ、ブラッド」


「くっ……」

彼女は《縮地》魔法を駆使し、全速力で後退する。

片足が飲み込まれてしまったが、全魔力で縮地を発動し、どうにか逃げ延びた。


会場は静まり返った。

「「「「「……」」」」」


「ま、魔王の勝利ー!!!」

ウォォォォォォォォ!!!


聖王の時より大歓声が上がった。

今のは派手だったし、目に見えて凄いからな。

恐らく禁忌級魔法だろう。


ブラッドに医療班が駆けつける。

よく見ると右足の膝から先が消滅していた。

あれはもうエリクサーが無いと完治しないレベルだ。

龍薬を量産できるようになったら送ってやろう。

ナイスファイトだったぞ。


「アルテ、あれって何魔法なんだ?」

「シンプルに《消滅》魔法だろう。応用性の無い、クソつまらん魔法だ。顔も気持ち悪いし」


「ねぇアル兄様。なんか魔王こっち見てない?」

「俺がこの前、【天照】を披露したのがよっぽど悔しかったんだろう」

「だから大規模魔法で舞台ごと破壊したってことね!」

「ああ。ただの目立ちたがり屋だな。ああいうのはいつか痛い目を見る」

「私もそう思う!」







「エクスはどう思う?」

「ブルル」

「そうか」


そんなことより、お腹が減ったらしい。


~~~~~~~~~~~~~~~

【お知らせ】

皆様お疲れ様です。

ついに明日【閃光】の書籍が発売されます!

七万文字書下ろしとなっているので、もう一度楽しめると思います!

是非よろしくお願い致します。


モンスター文庫様からの出版になるので、全国の書店に並びます!(しかもお手頃価格)

またネットでも購入できます!


ここだけの話、二巻が出せるかどうかは皆様にかかっているので、よろしくお願いしますね(ボソッ)


(๑╹ω╹๑ )ヨロシク ←レイ

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