第71話:教皇国特殊部隊②
~サイド、カリオス教皇国特殊部隊【六聖】~
「ねぇ隊長。俺せっかく六聖に選ばれたのに初任務が冒険者一人の抹殺って...興覚めにも程がありますよ」
「しかし相手はあの【閃光】だぞ。いくら我々にカリオス神の御加護があるとはいえ、決して油断するな。経験上、そういう奴から真っ先に死んでいく」
「とはいっても、結局一人の人間にできることなんて限られてますからね。うちの国でもたまに吟遊詩人が謳っているのを聞きますけど、あきらかに誇張されてるでしょあれ。【閃光】だの【終焉の魔術師】だの言われて絶対調子に乗ってるだけですって」
「確かにSSランクのソロ討伐などできるはずがない。だが、強力な従魔がいることは事実な上に冒険者ランクもSSだ。ある程度の実力はあるだろう。それに、お前が『六聖』に選ばれたのだって半分【閃光】のおかげなんだ。感謝しておけ」
「今回従魔はいないらしいですけど...。てか固有魔法≪光≫でしたっけ?完全にハズレ属性でしょ。ピカピカ光る以外に何ができるんですか?」
「ほらそういうこと言っちゃ駄目よ。仮にもカリオス神から授かった魔法なのだから」
「わかったよ姉さん。まぁ俺達『六聖』が大陸最強な事は変わらないし、ラッキーな任務だと思えばいいか。ここまで来るのに三ヶ月掛かったのは解せないけど」
「そうね。ふふふ」
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レクセンブルク近郊にある森の奥地にて、俺はカリオス教皇国の暗殺部隊と思われる六人組と対峙していた。対峙というか、完全に包囲されていた。
「お前らどうせカリオス教皇国の暗殺部隊かなんかだろ?」
「...」
面白くない奴らだな。ちょっと揺さぶりをかけてみるか。宗教国家の人間はあまり煽られ慣れてないイメージがあるから(偏見)。
「かのカリオス教皇国のエリート部隊ともあろう方々が、まさか連邦に顎で使われているのか?教皇国も落ちぶれたものだな。だっさ」
「...」
「ここまで言われてもビビッて言い返せないのか。てか黙ってるくらいなら、さっさとかかってこいよ。俺が何をするか怖くて動けないのか?六人で囲んどいて様子見とかマジで無いわ」
「...」
やべ、ちょっと楽しくなってきちゃった。でも遊びはここまでにして、そろそろ爆弾を投下しよう。
「はぁ...カリオス神もそんなもんか」
「き、貴様ぁ!!!」
六人全員が白い外套を着ているので顔は見えない。だが身体から漏れ出る魔力や闘気、身のこなし方から推測するに、今目の前でキレた奴が隊長だろうな。
「お前達!やれ!」
まず一番体格の良い暗殺者が大きく右腕を振りかぶって、なぜか隣の暗殺者を殴ろうとした。
煽られ過ぎて気でも狂ったのか?
だがその瞬間
【交換(リプレイス)】
「は?」
殴られるはずの暗殺者と俺の場所が入れ替わった。そして気が付けば顔の前に大きな拳が迫っている。これでは光速思考も間に合わない。最初から起動しておけばよかったとか後悔している暇は無いな。でもギリギリ【光鎧】は発動できそうだ。
俺は拳が顔面にヒットする直前に光の魔力を纏い。衝撃を減らすために後方へ跳んだ。
エリートとは言え、普通の身体強化を利用しただけの殴打なら大丈夫だろう。
【破壊の一撃(デストロブレイク)】
「!?」
ドォン
刹那物凄い衝撃が顔面に走り、俺は吹き飛ばされた。その威力は、タイラントの十分の一程度である。森の奥地にある少し開けた場所で地面を削りながら止まったので、大の字になったまま奴らの到着を待つ。
恐らく一人目が≪交換≫で、二人目が≪衝撃≫の覚醒者だろう。もしかして全員覚醒者なのか?ただのエリート暗殺者部隊かと思ったら、超超エリート暗殺部隊だったな。
「ほら隊長、こんなもんだって言ったじゃないですか。ランクが上がったのも従魔のおかげなんですよどうせ」
「油断するなと言っているだろう。よく見ろ、顔に傷が一つも付いていない」
「あれ?バレたか」
俺は死んだふりをしてみたのだが、普通にバレてしまった。ちなみに衝撃が身体中を走っただけで、傷自体は光鎧が防いでくれた。たぶんアレだ、盾で防御しても衝撃が貫通してくるタイプの攻撃。
今度は、ランクが上がったのは従魔のおかげとか言ってた奴が
「今度は俺にかかってこいよ。【閃光】だかなんだか知らないが、その綺麗な顔をボコボコにしてやる」
めっちゃ舐められてるな。まぁ確かにランクが上がったのは大体エクスのおかげだが。
自分から攻撃を仕掛けるのではなく、俺に突っ込まさせようとしているということはトラップ型の魔法か、それか一定の範囲に入ると発動するタイプの魔法のどちらかだな。俺の勘では後者だ。
そこで俺は【星斬り】を抜いた。星斬りから怒りの魔力が流れて来たので、俺も呼応して光の魔力を流した。二つの魔力が融合し、いつもより膨大な魔力が刀身を覆った。
【二日月(ふつかづき)】
三日月よりも速く威力の高い斬撃はそのまま件の暗殺者に向かっていったが一定の距離に達した瞬間から少しずつ減速していき、暗殺者はゆっくりと避けた。
≪減速≫の覚醒者ってところか。そりゃ「かかってこいよ」とか言うわな。
もし奴から俺に近づいたら、減速しているのがバレてすぐに離脱されるからな。
とりあえず≪交換≫、≪衝撃≫、≪減速≫の覚醒者の分析が終わったから、まずはこの三人から仕留めるか。対人は久しぶりだから少し楽しくなってきた。そろそろアドレナリンが出そうだ。
と思っていたら先ほどの三人が後ろに下がり、まだ戦っていない三人が前に踊り出てきた。
俺を舐めて遊び半分できてるのか、それとも三人一組で戦うという作戦なのか。
前者だと面白くないが、後者だったら初見殺しされそうで楽しみだな。
すると隊長らしき男の隣にいる暗殺者が口を開いた。
「うふふふ。私、弱者を甚振るの大好きなんですよ。特に若い男性が...」
まさかのサディストのお姉さんだった。ちょっと怖い。
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