第67話:連邦対策会議

帝立魔法騎士学園の二年生に進級してから八ヶ月経ち、早くも季節は冬になった。

そんなある日、俺は帝都にある実家から帝城まで歩いて向かっていた。


「時間が経つのは早いな、本当に」


頬を赤くしながら白い息を吐き、静かな裏通りを進む。綺麗な雪景色を楽しみながら、着実に歩を進めていく。アデルハイドには一ヵ月前から雪が降っており、人族だけでなく近くに生息している魔物まで静かになっている。でもバルクッドよりはマシだ。うちは近郊に聳える天龍山脈の影響で、この時期には馬車が進めなくなる程の大雪が降るからな。そのため冬眠する魔物も結構生息している。


この一年も本当に色々なことがあった。

まず春には近衛騎士団長に絡まれたり、オリビアの弟(シスコン)の面倒を見たりした。彼女らとは暫く会っていないのだが、元気にしているだろうか。もしシスコン君が冒険者ランクをガンガン上げていたら、それはそれでちょっとおもろいな。応援させてもらおう。


次は夏だ。確か夏の初めにはオストルフで巨大なスライムもどきを討伐した。あれは結構楽しかったので、今でも鮮明に覚えている。ちなみにその時にゲットした青い結晶は、あの後エクスが美味しく頂いたので安心してほしい。別に進化しなかったし、魔力の総量も増えなかったが本人というか本馬は満足気だったので良しとしよう。元気が一番である。


また長期休暇の前には例年通り帝王祭が開催された。決勝戦でリリーとオリビアがぶつかり、非常に熱い戦いを見せてくれた。観客も大盛り上がりだったな。リリーは去年ソフィアに阻まれ準優勝だったが、今年はオリビアに勝利し、見事優勝をもぎ取った。彼女はその後の打ち上げで狂喜乱舞していたので、余程嬉しかったのだろう。もちろん俺も死ぬほど喜んだ。誰とは言わないが、某シスコン少年も涙を流しながらオリビアの健闘を称えていた。それとエドワードとルーカスも頑張ったので、思い出に残るいい大会になった。


そしてかくいう俺も長期休暇中に色々な所を飛び回っていたのだが、それを今ここで話すと長くなるので、もし機会があればゆっくりと語らせていただこう。


あとここだけの話、帝王祭が終わってからほとんど学園に行っていない。学園を訪れる度に友人達に怒られたので、来年からはきちんと通おうと思う。今思えば俺の長い人生の中で学園に行けるのはたったの三年間だけなのだ。


「来年こそは熱い青春とやらを味わってやろうじゃないか」


俺が三年に進級すると同時に、我が家の天使であるレイも入学してくるのでな。お兄ちゃんのカッコいい所を沢山見せて、もっと株を上げなければ。


「まぁその前に...」


丁度帝城に到着したので、いつも通り【龍紋】を見せてから正門を潜った。

そして現在案内役の騎士の背中を見ながら歩いているところだ。


「今日は何人来るんだっけ?」


「帝国の重鎮は全員参加する決まりなので、恐らく五十人は超えるかと」


「多いな」


実は今日、アルメリア連邦との総力戦に備えて大きな会議が開かれるのだ。俺はそれに参加するためにわざわざここを訪れたのである。親父は用事があって大分前に到着しているはず。やっぱり貴族の当主は大変だな。兄貴に擦り付けて良かったわ。


暫く進んだ後到着し、大会議室の扉を開けて堂々と中に入る。すると長いテーブルの奥には親父や魔王(フレイヤさん)が着席していた。なぜか二人とも呑気に手を振っている。アイコンタクトをし、重鎮達の鋭い視線を浴びながら指定されている席まで進む。

ざっと見た感じ、親父達以外にも知り合いがチラホラいるな。さすがにエドワードはいないが、強硬派軍討伐戦の時に知り合った軍人たちや近衛騎士団団長であるレオーネや副団長のカルロスが座っている。なぜか二人とも呑気に手を振っている。アイコンタクトしておこう。ついに席に到着したので、静かに椅子を引いて着席した。


目の前に準備された高級茶を飲み、一息つく。

そして横に顔を向ければ、そこには...


「お主、久しぶりじゃの!」


SSランク冒険者【氷華のエリザ】という名の、のじゃロリババアが座っていた。


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「なんじゃその目は」


「いや、参加するのは知っていたが実際に会うとちょっとな...」


「ちょっとなんじゃ!気になるであろうが!」


「まぁ落ち着け。俺たちは今日帝国の最高戦力であるSSランク冒険者として呼ばれているんだ。もっとこう、威厳というものを持つべきだろう」


「そ、それは確かにそうじゃな...」


その最高戦力が席に着くなりキャッキャしてたら「こいつら大丈夫なのか?」ってなるからな。それに今回は陛下が参加する御前会議なのだ。いつも陛下にはお世話になっているので、迷惑はかけたくない。まぁ陛下が入室するのは最後なので、まだいないけども。


「暫く見てなかったけど、エリザは最近何してたんだ?」


「ちと用事があって、わらわは別大陸に赴いておった」


「いいなそれ。俺も今度行こうかな」


帝国には俺がいるとは言え、このピリピリしている時期にあのエリザが別大陸に行ったんだ。恐らく陛下からの重要依頼だろう。ここで内容を聞くのは野暮ってもんだな。


それから暫く雑談していると、陛下が入室したので全員起立し礼をした。そして陛下が着席した後に全員席に着いた。


「今日はちゃんと皇帝っぽいな」(小声)


「いつもはどんな感じなのじゃ?」(小声)


「親戚のおじちゃん」(小声)


「ぷっ」(小声)


その後会議は三時間にも及び、総力戦に関するほぼすべての事が協議された。

本当に欠伸が出るほど長かった。そのため俺が上手く内容を要約させてもらうと、連邦はまだ動きを見せていないが、念のため俺が調査に出向くことになった。あと一年半以内に総力戦が始まるはずなのに何も動きを見せていないのは、逆に怪しすぎるから俺も賛成だ。冒険者ユートの再来である。

ちなみにエリザは総力戦の際はランパードと共に戦う。また帝国の要所の防衛には他の高ランク冒険者達にも協力を仰ぐことになった。

細かいことは全部省いて説明しているので、わかりにくかったらすまん。


余談だが飛竜部隊は着実に成長しており、空の戦いは問題ないらしい。また最近は覚醒者の育成にも力を入れているらしく、覚醒者だけの特殊部隊を作るとか作らないとか。


あとは今までと変わらず、戦力増強をし態勢を整えながら連邦を牽制するみたいだ。ちなみにカナン大帝国の同盟国もいくつか存在するが、かなり遠くにあるので当てにはならない。


要するに俺がめっちゃ頑張らなければいけないってことだな。






まぁ、そんな感じだ(説明ド下手)。

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