奇跡の本屋
小深純平
第1話
岩上信夫とその妻房子はやっと念願の本屋を開店することができた。2人は本が好きで毎日、本に囲まれていたい人生を選択したかった。2人は10年間コツコツと貯金をして、しかも、やっとの思いで金融機関から借り入れをして、関東の小さな町(妻の実家がある)の目抜き通りに100㎡(30坪)くらいの小さな本屋をだすことができた。
店づくりは不本意にも取次(問屋)の主導ではじまった。品ぞろえも取次の担当者の指導のもと、夫婦の意向はほとんど取り入れられなかった。2人はこの流れに少し違和感を抱いた。
店のオープンには、取次の応援が10名くらい駆けつけたり、店頭に華やかな祝い花が飾られたりと小さな店は賑やかさであふれていた。信夫は自分が思い描いていたオープンとは違い少し気恥ずかしさを感じていた。賑やかなオープンに合わせて多くの客が押し寄せた。取次の担当者は満足な笑みを浮かべて「順調な滑り出しですね。」と信夫に胸を張った。信夫は本来なら素直に喜ぶべきなのだろうが、なぜか疲れがどっと押し寄せ、取次の担当者の言葉に気持ち良く反応する余裕がなかった。
結局、初日は取次の思惑通り事が運び彼らは満足な言葉を残して帰っていった。
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