第50話  戦い終わって

人質は全員無事に救出し、時限爆弾も解除されていたと外の軍の人達から連絡があった。


任務は無事完了したことになる。



後は皆でアジト脱出するだけ。


だが侵入したメンバーがここに全ているわけではない。

東はともかく、倒れた北山の身が心配だな…ルミアに尋ねてみる。


「ルミ、北山は大丈夫なのか?」

「とりあえず一命はとりとめました。南城さんが見てますよ」

「…そうか、それならよかった」

「ただ…相当ボロボロですし、また前みたいに戦える保証はないかも知れません」


後で聞いた話だが、南城からもらった体に負担のかかるドーピングに、聖獣からの無理な力の供給。そんな危険な事をしていたと聞いた。

命が無事なだけついてるまであるのかもしれない…


「…まあそれでも死なずにすんでよかった。ルミにも南城にも感謝だな」

「神邏くんが感謝する必要はないですけどね」

「…いや、友人だしな。それに北山一人に任せた負い目もあったし…」


とはいえ北山本人は感謝してそうだが。


「朱雀、感謝するぜ」


ダストが頭を下げてきた。

…なぜ?


「仲間だった七人衆の手向けになった。利用されるだけされて死んでいったあいつらのな…」


利用したローベルトを自分の代わりに倒してくれた…その事に対しての感謝か。


「…別に俺は友人のためや、前回仕留め損なった自分の尻拭いをしただけだ」

「ああ。それでもだ。…だからあんま気にすんじゃねえぞ。感謝されることしたんだからよ」


…精神面を気にしてくれてるのだろうか?



「はい、とりあえずみんなお疲れ様!北山くん達も拾ってアジトを出よう!夏目さん達も待ってるだろうし」


ヒカリ先生が手を叩き、皆の背中を押し部屋から追い出す。


「せ、先生?」

「い~からい~から…ホント頑張ったね神くん」


また俺の頭を撫でるヒカリ先生

…俺の顔には笑顔はなかった。





アジト外へ出ると、人質の皆と西木さん達一部の天界軍の姿があった。


「シン!」


なっちゃんが駆け寄る。


「なっちゃん。無事出れたみたいだな。よかった…」

「よかったはこっちのセリフだ。私の方に危険なんて何もなかったぞ。力使って見たかったんだがな」


なっちゃんは大きなハンマーを担いでいた…

彼女が契約した聖獣の武器なのだろう。

どんな聖獣と契約したのだろう?


「いや、なかなか驚きましたね…Aランク魔族を打ち取るとはさすがは朱雀、いや修さんの弟なだけはある」


拍手しながら見覚えのない男が寄ってくる。

白髪の短髪だが前髪は目近くまで長く眉が見えない。

背丈はスラッとしていてモデルみたいな体格。

見た感じ二十代くらいの若い人物だ。


その人に対し先生は呆れ気味に、


「…風見、あんたいつ来たのかしらね?私と一緒に乗り込んだはずよね?」


どうやらヒカリ先生と共にここに来た天界軍のようだ。※41話で多少触れている。


「いえ自分の出番はなさそうでしたのでね。人質の皆さんと合流したので出口に案内したのですよ」

「だから来なかった…と?勝手というかなんというか。十三キングとしての行動してもらいたいものね」

「それは西将軍には言われたくないですねえ…」


…ぐうの音も出ない先生。


俺はこの風見という男の発言が気になっていた。


…この人修さんの弟と言った…兄の修邏の事か?


さすがという発言から兄の修邏の事をよく知ってそうな口ぶり。


だが修邏はたしか国家転覆を企んだ悪。

天界人にとっては憎む相手なはずだ。そんな男をさん付けし、憎しみも感じない喋り方だった。


さん付け自体は西木さんもしていたが…

修邏が率いてたと言われる、ジョーカーズなどという部隊にいた者なのだろうか?


「そういや自己紹介がまだでしたな。特殊部隊隊長兼、♡のキング…風見十二かざみとうじです。立場は十三ですが名前は十二なんでよろしく」


にこやかに挨拶されたので、

こちらもお辞儀し、


「美波…神邏です」


挨拶をかえした。



…特殊部隊…

西木さんが言っていた、少し疑ったほうがいいかもしれないという部隊。

俺の過去の記憶を消したかもしれない、裏切り者の可能性のある部隊だ…

※30話参照。



「兎にも角にも事後処理は我々がやっておくので、お疲れな朱雀達は帰宅なさっても結構ですよ」


まあそれはありがたい話ではあった。普通に戦っていたが元々高熱だったんだ。

早く帰って休みたい所…


「神ちゃんありがとう!」


急に誰かに抱きつかれた。

人質だったお嬢さんの一人のようだが…

どことなく見覚えあった黄間鈴という名の司令の姪っ子さんか…


「あ、あの…」

「憶えてない?小学校のとき少し一緒で天界でもクラスメイトになった黄間鈴!」


天界の記憶はないが、小学校となると人間界の話だ。

なぜ天界人の彼女が人間界の学校に通ってたのかは知らないが、それなら見覚えあるのは頷ける。

それにこれだけの美少女そうそう忘れないか…


…というか思いだした。


「…六年の時に転校してきた黄間さん?」

「そう!ホントにありがとう大好き!」


くっついて頬ずりしてきた。


すると九竜が動く。


「…はいはい再会の喜びはそれくらいにして帰りましょう~黄間さん。送るんで」


服引っ張って俺から引き剥がす。


「ちょっと〜なにするのよ九竜さん!久しぶりなんだからいいじゃない」

「限度がすぎるというか、それに暴れそうな人もいるで控えて」

「でもでも」

「お姉さんにチクるよ?」


そう言われると素直に引き下げる黄間鈴。

姉が怖いのだろうか?

九竜が知ってるとなると、天界軍なのだろうか。



ルミアが黙っているので様子を確認すると。

…なんか刀を手に持っている。

何に使う気だったのだろうか…?

そして彼女は笑顔だが目が笑ってなかった。



まだ目を覚まさない北山は軍の人が担架で運び出す。

一命はとりとめたとはいえ、まだ重症。

天界の病院に連れていき治療をしてくれるようだ。

…大事ないといいが。



「早く帰りましょう神邏くん、肩貸しますよ」


そう言うとルミアは俺の腕を自らの肩にのせ密着。


一行はそうしてゆっくりと家路へむかっていった。




「…それにしてもAランク相手に勝利となるとかなりの戦力という証拠…これは対帝王軍のメンバーに加えるべきでは?」

「…何言ってるの風見、神くんはまだ子供なのよ。今回の件だって私は反対だったのに」

「人間界中心に守ると彼が言うなら捨て置けない相手でしょ、帝王軍は。奴らは天界と人間界の支配を企んでいる。まず一番楽な人間界支配に動くという情報もありますしねぇ」



…一難去ってまた一難かもしれない。

ローベルト一味を倒したとはいえ、また強大な相手が控えている…。そんな気がしていた。






情報屋side。


魔界のある一等地。

そこに情報屋はいた。


「ふん…あれだけお膳立てしたというのにローベルトも使えんな」


情報を多く与え協力していたが失敗。ローベルトに失望したような態度。


「まあ所詮帝王に手も足も出なかったゴミ…こんなものか」


誰かの足音が聞こえる。

情報屋の元へ誰かやってきたようだ。


「お前もそう思わんか?シャドよ」


情報屋が話しかけた男。

目を覆うほどの銀髪。

眉目秀麗…誰もが思う美形の魔族。


神邏が夢で見た父、火人を倒した魔族だ…


「…帝王相手なら大概の魔族がそうだろ」

「まあ確かにな…ところで帝王軍はまだ動かないのか?他国との戦争は落ち着いてるはずだろう?」

「…そうだな。近いうちに始まる軍の選抜トーナメント…アレで配下を増やした後に何かしら行動を起こすつもりらしい」

「ほう、それはいい。やはり天界軍を葬れるのは帝王軍しかいないだろうからな。期待してこちらも情報を提供しないとな」


声のトーンが上がる情報屋。

それだけ帝王軍を信頼しているのだろうか?


「…帝王はあんたを信用してないがな」

「それでも構わんさ。奴らを滅ぼしてくれるならな。まあ機嫌をそこねでもしたら殺されるかも知れんし穏便にしたいものだな」

「…で?何用だ。帝王軍の動向知りたかっただけか?」

「他にもいろいろ聞きたいこともあってな。もちろんこちらも情報を提供するから」

「…必要ないだろうがな」




不穏な気配。

ローベルトが倒したかった帝王カオス率いる帝王軍…

次なる相手となるのは確定的だった。


神邏達はさらなる強敵に勝つ事ができるだろうか?




つづく



「逆襲のローベルト編は完結ですね~次なる相手…帝王軍…となるのでしょうか?」



「次回は箸休め プロフィールその2 ですね。ちょっとキャラ増えたので」

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