第4話 4(フォー)
周りは山と木々に囲まれて、田んぼから水路のせせらぎがの音がする。
一件の家からお経の声が聞こえてきた。
「チーン。」
親友が死んだ。
子どもの頃はしょっちゅう一緒に山や川ではしゃいだもんだ。
噂ではなにやら変な死にかただと聞く。
でもなぜあいつが…。
そうこう考えてる内にオレの番がまわってきた。
「あのお顔を見せてもらってもよろしいでしょうか。」
ぼろぼろ涙を流している両親に尋ねる。
「とおるちゃんあなたに会いたがってたからねぇ。みてあげてちょうだい。」
オレは顔に耳と目ん玉がなかった。
―式は終わり、場面はおやつに。
忙しそうにお酒やオードブルを運ぶ親友の母。
息子の思い出話に花をさかせる父。
オレが縁側に座ってたばこを吸っていると、
「かずちゃん、ちょっといい?」
母親について階段をのぼると、あいつの部屋に入っていった。
「うわー、懐かしいな…。」
床にはベットリふかれた血のあとがあった。
鏡をみるとなぜか割れている。
「あの子ね、自分の耳と目を切り取って自殺したのよ。それまでは普通に一緒にご飯食べたりしてたんだけどね…。」
「自殺!?」
母親は見てもらいたいものがあるといって紙切れをオレに渡す。
一つは写真。
片腕が一枚ずつ移っていて、もう一枚は腹がうつっている。
不思議なことにそれぞれと「4」と刻まれていた。
のこりは一枚の白い紙で、そこには小さく震えた文字でこう書かれていた。
「-16」
と。
「遺書かなんかですか?」
「分からないのよ、でもカズちゃんなら分かるかと思って…。」
オレにもさっぱり分からなかった。
とりあえずオレはその晩は泊まり、仕事もあるので次の朝東京に帰った。
ある日家でゆっくりしていると電話がかかる。
「おぉ和也、就職祝いの件だけど…。」
オレは仲間達と彼女とで就職祝いのパーティーを計画していたのだ。
親友が死んだすぐで不謹慎かもしれんが、逆にへこんだ気持ちを取り戻すためにもいいかと思った。
さっそく次の土曜日にもしようとゆうことになった。
―当日。
オレは彼女とスーパーで食材やらビールやら買い込んでオレのアパートに向かった。
部屋にはもう遠藤と田中がいた。
2人は共に専門学校の同級生でいいやつらだ。
カンナがつくった鍋は最高。
アルコールの力も借りて盛り上がり、パーティーは深夜まで続いた。
ある時、それまでトランプやゲームをしていたのだのが遠藤が野球をみたいといってテレビをつけた。
遠藤以外は野球に興味がないため、オレたちはトランプなどを楽しんでいた。
「ぬおーーーっ!」
と遠藤が叫び声をあげ、バッと立ち上がったかと思うとベランダの方へと走り出したではないか!
急いでオレたちが駆け寄って下を見ると、駐車場に叩き付けられた遠藤の姿があった。
「きゃー!」
おれは訳も分からないまま救急車をよんだ。
遠藤が運ばれるときにはすでにアパートの周りには野次馬達でいっぱいだった。
運ばれる途中オレは警察から質問攻めをされた。
やっと尋問が終わり、後味悪くオレたちは解散した。
くたくたのオレはそのまま倒れるようにベットに転がり込んだ。
次の日、オレは仕事を休ませてもらった。
昼、電話がかかる。
田中からだった。
「4に気をつけろ…!」
そういって電話が切れた。
4に気をつけろ?どういう意味だ。
不審に思い急いで田中の家に行ってくれと頼んだ。
30分後電話がかかる。
死んでいた、田中も…。
高崎の写真、そう、両手と腹に刻まれた4の文字だ。
遠藤はどうだ。
オレ達と唯一違う事をしたことといえば野球中継だ。
オレはあたまの中で4に関係するものを思い浮かべた。
四球、4番、4回、あとは…
四十路谷雅!
九州デビルズスーパーアタックの名選手だ。
そうか、やっとわかってきたぞ。
高崎は耳と目をつぶしていた。
そして鏡も…。
四、それをみたりきいたりしたらダメなのではないか。
おそらく家族の口から誕生日を祝う席で聞くか耳にしたのか。
まぁ4を4回視覚か聴覚で認識したらダメなんだ!
するとオレはこのまま家にいるのが一番というわけか。
まてよ、あいつはなにかにあやつられて、自分の意志とは関係なしに体を刻んだのではないか。
だとしたら家にいても完全に音と視界をたたないといけない。
それにカンナの事も…。
オレは意を決し、薬局にアイマスクと耳栓を買いに行くため車をはしらせた。
だがその前に彼女の家による。
「カンナ、事情はあとで話すから急いで…。」
オレは言葉を失った。
カンナは横たわっていた。
目には包丁が突き刺さっている。
同じくベッドの上にはカンナがかわいがっていたトイプードルの首が置いてあった。
オレは泣きながら部屋を出て、再び車にエンジンをかけた。
「ちくしょう、ちくしょう!」
赤信号もお構いなしにオレは気が狂ったようにクラクションをならして疾走した。
プープーと鳴らされながらもオレは薬局にたどりつく。
つくなり廊下をかけて耳栓とアイマスクを鷲掴んでレジにバン!と置いた。
「えーと、全部で…。」
「いいから!それ以上いわないでくれ。釣りはいい!」
オレは車の中でも怯えていた。
さっきからウィンカーの音、前やバックミラーにみえるナンバープレートが気になってしょうがない。
プレートはともかく、ウィンカーはどうなんだろう。
ウィンカーの音をただ聞くだけじゃ別になにもないかもしれないが、四回鳴ったと認識したらどうなんだ。
ウィンカーに限らずオレは”四回なった”と認識しないように心にきめた。
そんな事を考えつつアパートにつく。
(エレベーターはさけなければ…。)
超スピードで階段を駆け上り、部屋に入って鍵をしめる。
ついでにチェーンも忘れない。
(よし、今のところ一度も4をきいても目にもしていない。)
さっそく耳栓とアイマスクを装着。
オレはガクガク体を震わせながら毛布にくるまった。
さっきからあのカンナのむごい映像が頭の中にこびりついて離れない。
(すまない、カンナ許してくれ!)
静寂と暗闇の中だけで時が過ぎていった。
ふと高崎の遺書みたいなものを思い出した。
あの-16の意味がやっと分かった気がした。
4を4回たすと16、恐らくやつはそれを打ち消すために対抗手段として16-16をしたのか。
まぁ結局何の意味もなかったんだろうけど。
オレはそんな事を考えてる内にいつのまにか眠ってしまった。
―気付くとホームに立っていた。
空から光り輝く日光が差し込んでいるから、どうやら朝のようだ。
ここまできた記憶がないがオレは安堵した。
(おわったんだ!きっとそうにちがいない。)
あたりをみわたすと彼女、遠藤と田中が背を向け立っているのが分かった。
オレは走ってかけよった。
「やっぱり夢だったんだな!」
カンナがゆっくりと振りかえりながら言った。
「いや、夢じゃないわ。」
カンナはのっぺらぼうだった。
「うわぁ。」
そのかわり、顔面には大きく4と書かれていた。
遠藤と田中も他の人達もよくみるとそうだ。
「夢はこっちの方よ、さざ皆よんでるわ。行きましょ。」
「四でる!?」
やがて他のやつらがぞろぞろ周囲を取り囲んできた。
「夢の中までおってきたっていうのか!!」
その時、ホームに声が響いた、
「まもなく4番線に電車がまいりまーす。」
「4番線!?」
オレは寄ってくる人だかりの海にぎゅうぎゅうとのまれてゆく。
「おねがいだ、やめてくれ。助けてくれ、うわぁぁぁ!」
―とある平凡な家庭の朝食タイム。
中学生らしき女はトーストをかじりながらニュースをみている。
「最近奇妙な事件が起きています。なんでも死んだ者に必ず4という数字がかかわっており、もはや東京だけではなく世界にも”4ブーム”が起こって…。」
女はパン4回ほどかじって、もう一枚のパンに4回ジャムをぬりたくった。
「こわいねー、母さ…。」
台所にいる母親は「4444…。」と叫びながら自分の腕をきって、そしてペロペロとなめていた。
父親は「4444…。」と叫びながら全裸で頭を冷蔵庫の壁にうちつけている。
女が画面を振り返ると時刻は4:44分になっている。
そして突如画面にうつされたのは、
『4』
女「よん?」
「四
四
四
四
四
四
四
四
4
4
4
4
4
4
4
!?」
「4!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます