第2話 おかしい村

アルフレッドは森の中でドライブをしていた。


車内では陽気な歌がかかっている。


鼻歌をうたうアルフレッド。


森は至って静かで沈黙をつらぬいている。


突如車にそのまま坂を転げ落ちる。


「うわー!」


木々の枝やはっぱやらがフロントガラスに傷をつけてゆく。


アルフレッドは車の動きが止まったのを確認し、ドアをなんとか開けた。


みると車は逆さまになっている。


アルフレッドはよろよろと足を引きづりながら歩きだした。


足の痛みと森の独特の威圧感が彼の不安をいっそう掻き立てる。


「チ、携帯も使えないか…。」


木の間|(このま)から夕焼けの赤い光が射している。


アルフレッドは歩き続けた。


気がつくと当たりは闇に閉ざされている。


しばらく歩いていると、ようやく村らしきところをみつけた。


家らしきものも何件かあって、その家はわらで出来ている。


アルフレッドはその中の一つの一番大きい縦長の家を尋ねた。


家の中でてきたのは中年の男。


「すみません実は事故ってしまいまして…。」


中年はアレクとなのった。


ひとまずアルフレッドはアレクの家に泊めてもらうことになった。


アルフレッドはアレクに雑炊をごちそうになった。


「わしはいちおこの村の村長みたいな役割をやっています。」


「へーそうなんですか。」


アレクさんの他にもあと何人か人が住んでいるらしい。


そのあと手当として包帯を巻いてもらい、アルフレッドは寝ることになった。


布団は質素で、うすい皮のようなものだった。


アルフレッドはうとうととまどろみの中に入っていた。


寝てる途中、足下でなにかが動いてるのに気付く。


ふと下をのぞくと目があった。


女だった。


アルフレッドが驚いて声を出そうとすると口に手をやられて塞がれる。


女はアルフレッドのズボン、そしてパンツをズリズリと脱がす。


ぬるっとした感触と生暖かいものがアルフレッドのイチモツを包んだ。


アルフレッドは果てた。


女はさっさとどこかへ走る。


アルフレッドは訳もわからず再び眠っていった。


朝がやってくる。


アレクに起こされてアルフレッドは起きた。


朝食は焼き魚と白飯。


食卓にはアレクともう一人女もいた。


女は食べる途中ジロジロとアルフレッドをみてきた。


(なんだこの女は…。もしかして昨日の…!)


朝食をとるとアレクと一緒に村の人達の家を一つずつあたってなぜかあいさつをした。


(オレははやいとこ車でも借りて出て行きたいんだが…。)


一人は大柄の男。


「よぉ、オレはリチャードってんだ。よろしくな。」


次はちょっと精神的におかしそうな奴。


「ど、どうも…ロ、ロビンっていいます…。」


ロビンの手にはギュッとくまのぬいぐるみが握りしめられていた。


ロビンは小汚い人形をいつも大事そうに持っているらしい。


もう一人はおとなしそうな女だった。


「あの私ローラといいます、よろしく。」


一通り挨拶を終えて、次は村の近くの畑を紹介される。


「あの、あの朝食の時一緒にいた人は…?」

「あぁあれは私の嫁ですよ。名はアンナといいます。」


畑にはじゃがいもから大根、にんじん白菜までいっぱい植えられていた。


次にアレクは村のルールを説明した。


食料はさっきの畑で自給自足し、月に一回近くの街のスーパーに当番制で買い出しに行く。


魚は近くの川でつることもできる。


その晩アルフレッドとアレク、アンナとでごはんを食べる。


「あの、この村に電話はないんでしょうか。」


「電話なんてありません。」


アレクは冷たく、そして早口にそう答えた。


「あのじゃぁ車を借りるっていうのは…。」


「まぁアルフレッドさん、そんなに焦りなさんな。ちょっとゆっくりするつもりで。」


とアレクに軽く言いくるめられてしまう。


「そうよ、私もアルフレッドいてくれたら嬉しいわ。」


アルフレッドは流されるような形で。この村に住み着く事になってしまったのだった。


それからアルフレッドはよく働いた。


もう作業もしっかり身に付いて、毎日手が泥だらけになった。


ある日もいつものようにリチャードと畑を耕していると、


「お前頑張るなぁ。」


とリチャード。


「ど、どうも。」


アルフレッドは密かに脱出することを企んでいた。


スーパーへの買い出しはアルフレッドが脱出する事を恐れてかアルフレッドにはまわってこなかった。


車のカギはアレクしか知らないとこにある、とリチャードが言っていた。


アンナはその後もアルフレッドに夜這いしてきた。


しーっとアルフレッドの口にゆびをあてるアンナ。


アンナが上にまたがって腰を激しくうねうねと動かす!


アルフレッドは果てた。


そのな日々が続いたある日、アルフレッドは畑仕事の帰りにローラの家にリチャードが入ってゆくのがみえた。


アルフレッドは窓からこっそりと見てみる事にした。


リチャードは強引にも嫌がるアンナを押し倒し、服を剥ぎ取り始めた。


アルフレッドは急いで家の中に入ろうとするがドアは鍵がかかってあかなかった。


事をおえてリチャードが出て来た。


「おい、このことだれかにいったら殺すかな。」


といってリチャードは去ってゆく。


アルフレッドは中に急いで入る。


「大丈夫!?」

「なれてますから。」


ローラは恥ずかしそうに服で体を隠した。


「いつもこんな事されているのか?」


「はい。」


「オレがアレクさんにしらせようか?」


「いえだれにも言わないでください。というよりみんな見てみぬふりをしてるのです。」


アルフレッドがその場を離れようとするとローラががしっと服をつかんだ。


「そばに、いてほしいの。」


ローラの家から喘ぎ声が聞こえる。


「あっあっ。」


そう、アルフレッドはローラと寝たのだった。


正常位でアルフレッドがローラの上で果てる。


「大丈夫、大丈夫だから。オレが助ける。」


アルフレッドとローラはその後も密会を重ねた。


ある日リチャードとアルフレッドとロビンで川にきていた。


アルフレッドがリチャードを魚釣りに誘ったのだった。


「お、きたきた。」


と魚釣りにはしゃいでるリチャードの頭を後ろから大きな石で叩き割る。


「うわっ、なにをするっ!」


アルフレッドとリチャードは揉み合いになる。


となりでロビンがやめて下さい!と叫ぶ。


リチャードがアルフレッドの上に乗ってパンチの嵐。


「てめぇこの!オレはてめぇがローラと寝てることも知ってんだあー!?」


いきなりリチャードは失いアルフレッドの上に崩れ落ちる。


助けたのはロビンだった。


ロビンはべっとり血がついた石をもっている。


「サンキュー。」


アルフレッドとロビンはリチャードの死体を森の中の上に埋めた。


リチャードが死んでアルフレッドとローラは更に熱い関係となった。


それでもアンナの夜這いは続いた。


アンナはふとんの中にもぐってアルフレッドの首にナイフをつきつけてきた。


「ローラを殺しましょ。」


「なんだって。」


「あなたは私のものなの。私のもの手を出す奴は許せないの。」


「できない。」


「殺さないとアレクに私達の関係をバラすわよ。」


ある夜、アンナとアルフレッドはローラの家に忍び込む。


「アルフレッド、何の用?」


アルフレッドは何も言わずにローラの首を閉め出す。


「ちょっ…苦しい。なんの…マネ?」


馬乗りになるアルフレッド。


アンナは隣でスパスパとたばこを吸ってみていた。


ローラは静かに息絶えた。


その目は涙を垂らしながらアルフレッドの方をみていた。


リチャードが死んだ。


ローラが死んだ。


残るはアレクとアンナとアルフレッドとロビンのみ。


ある朝アルフレッドとアンナとアレクはいつものように朝食を食べる。


「おいそこの醤油をとれ。」


「自分でとってよ。」


沈黙の食卓。


3人の間にぎすぎすとした空気が雰囲気が流れる。


「この村に殺人鬼が潜んでいるとしたらだれかな?」


とアレン。


黙って食事をするアルフレッドとアンナ。


「お前いつも夜になるとオレととなりからいなくなってるけどどこいってるの?」


アンナは黙々と食べる。


「うわああああ!」


アレクは突然気が狂ったかのようにテーブルをひっくり返した。


散乱するご飯達。


アンナはそそくさとどこかへと立ち去る。


「大丈夫ですよ、オレがやります。」


アルフレッドがご飯を片付けて、アンナとアレクは家の外でなにやら話し合っていた。


ある夜、アンナとアルフレッドは裸になって抱き合っていた。


「出よう、この村から。」


「こんなむさい夫とおかしい人がいるところにいたらどうにかなりそうだわ。」


「うん、明日にでも出よう。」


「私が車の鍵をとってきてあげる。」


次の日、さっそく計画は実行された。


アルフレッドが車に隠れて待機する。


アルフレッドは待ちながら家の中を観察する。


ここで予想外の事態が!


なんと畑仕事から予定よりも早くアレクが帰って来たのだ。


口論になるとアンナとアレク。


アレクの後ろからアルフレッドが飛びかかる。


「はやくいけ!」


アンナは車の方に走る。


転がる2人。


「ぎゃあ。」


アレクは台所の包丁を転がりながら取ってアルフレッドの足を切りつけた。


飛び出る鮮血。


すると外からエンジンの音が!


(ちくしょう!やられた。アンナの奴一人で逃げやがった。)


アレクは倒れるアレフレッドの腹に何度も蹴りを入れ、刺されて血が溢れている傷口を思いっきり踏みつけた。


そして、虫の息のアルフレッドを引きずって小屋みたいなところに連れて行った。


「いやだ!待って助けてくれ!」


アレクはドアを閉めた。


中は真っ暗で何も見えない。


アルフレッドはなんども扉にタックルをするが開かない。


途中で足の痛みに耐えられなくなって座り込む。


「こわい…このままじゃ殺される。」


気付いたら寝ていた。


暗闇の中でどれほど時間がたったか、アルフレッドには分からない。


体はやせこけ、ひげも長くなって、目にくまも出来た。


「ガチャッ。」


唐突に扉が開かれる。


ロビンだった。


外は漆黒に染まっている。


アルフレッドとロビンはこっそり家の中に入った。


「アレクさん、今眠ってます。」


アレクは安楽椅子に腰掛けてギーギーと居眠りしていた。


物騒なことにその手にはライフル銃が握られている。


2人は車の鍵を探した。


そのときアルフレッド台所にあったサバイバルナイフをこっそりポケットにしまった。


「あったありましたアレフレッドさん。」


出ていこうとしたその時、アレクが怒り狂いながら襲ってきた!


「うわーーー!」


再び転がるアレフレッドとアレク。


「貴様家畜の分際でわしをおいてゆく気かー、えーこのっ!俺は知ってたんだ!お前とアンナがやっていたもなぁ!」


顔面をめっためったになぐられるアルフレッド。


だが突如アレクは気を失ってアルフレッドの上に崩れる。


またもや助けたのはロビンだった。


アレフレッドは横たわるアレクを見下ろし、つばをはいた。


ロビンが灯油を家中にまき、アルフレッドがマッチで火をつけた。


火をたちまち他の家々に燃え移り、村は炎の渦に包まれた。


アルフレッドは生きているかのように、くねくねとそしてたくましく燃え上がる炎をただじっとみつめていた。


アルフレッドは心の中でしめしめと思った。


ざまーみろと思った。


してやったりと思った。


ずっとこの光景を目に焼きつけていたいと思った。


「アルフレッドさん、はやく逃げましょう。」


車はもうないから、2人は美しい炎をバックに森の中へ逃げ出した。


すると後ろからものすごいうなり声が聞こえる。


振り返ると、黒こげのアレクがいた。


「逃がさんぞ家畜ども!」


バン!


ライフル銃の引き金が引かれて、アルフレッドは一瞬状況がのみこめなかった。


みるとロビンが頭を打ち抜かれて倒れていた。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


アルフレッドは何故か咄嗟にくまの人形を拾い、そして泣きながら走った!


放たれる銃声音を背にしてどこまでも走った!


途中で方を被弾した。


アレクの姿が見えなくなったあたりで、アルフレッドは木に背をつけて休んだ。


(ちくしょう、いいやつだったのに。こえぇ、こえぇ。)


くまのぬいぐるみにポツポツと涙がおちた。


上を見上げると空は薄白い色に変わってきている。


カラスみたいなやつがカーカーと通り過ぎた。


その時、


バン!


と銃の音がこだました。


きっとアレクが威嚇で空に向けて撃ったものだろう。


と、アルフレッドはおもった。


「おーい今でてくれば許してやる!頼むからオレを一人にしないでくれ!

おーい、出てこいっつてんだろクソ野郎!!」


お互いの精神はもう限界だった。


戦いの決着は近い、そうアルフレッドは悟った。


―アルフレッドは草木に隠れて待ち伏せをしていた。


じっとくまだらけの目をこらしているとアレクが歩いてくる。


アレクはゲホゲホと咳き込んでいた。


「ちくしょー、クソアルフレッドめ。煙を吸い込んだからな。」


アレクがアレフレッドのよこを通り越した時、


「ぅぅぅうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


カッと目を見開き!


勢い良く!


アレクに飛びかかった!


「ハハハハ!よしいいぞクソ家畜!ほらもっとやれよ!」


アルフレッドはサバイバルナイフを何回も振り落とした。


何回も、


何回も。


返り血を浴びた服で、アルフレッドは歩いた。


歩いた。


ただ歩いた。


その手には血まみれのくまの人形。


アルフレッドはただ光をもとめてさまよい歩いた。


アルフレッドは森を抜けた。


目の前には太陽が今にも明るく、そして優しく広がろうとする映像があった。


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