無銘空間

宮下協義

第1話 形而上的構造概念(上位概念)へのアクセスとその対処機関による簡易報告

 第一義的命題として、この世界は一種の言説空間であり、論理と物理とに分別される。

 人類の総体は、論理現実の内側で生を営んでいるが、むしろ実体―魂とも呼ばれる延長は、物理現実の内側―つまりは論理現実の外なる空間現実に実在し、その実体を「実存」している。われわれの使命は、全人類をあの忌まわしき停止した論理現実から解き放つことにある。死は、アリストテレス的空間―論理空間からの脱却を意味する、と説いた新宗教―カルト的団体である、「超人乃会」は、結局のところ、彼らのいう「魂の上昇―神への反逆」を成す事が出来なかった。それどころか、われわれ――、「SI(シークレット・インテリジェンス、或いは単に、「カバル」と呼ばれる)」は、魂、いわば実体を、物理現実に見出したのである。魂各々には整然たるアドレス空間が設けられ、「とあるOS」がその総体を管理・運営・統合している。OSへのアクセス権は、われわれにはあらず、かつてキリストの伝道師・聖パウロが遺した書簡(現代世界では聖なる書としてプログラム化されている)を鍵として、その形而上的ポインタが指し示す、零アドレス空間から順に、OSへの階段を歩まなければならない。いわば、人類の意識レヴェルのモードからではアクセスできず、聖パウロの超常的・超自然的な能力を以て、無意識レヴェルのモードからアクセス可能となる。実体と無意識は常に等しいか? それは判然としない。未だ誰も、あの西暦1908年の事象から、何も学んでいないのだ。

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