4話 襲撃の悲劇

「来てくれたか、待っていたぞ。」


 港では既に、武装した大人たちが戦っていた。しかしいつもにも増して敵の数が多く、状況は好ましくない様子だ。


「百人はいるな、これはかなりマズい。今までにない人数だ…。」


「そうだとしても戦うしかねぇだろ。いくぜ、今度はお気に入りの斧もあるぜ!」


 カツヒロは手斧を握り締めて敵の中へと突っ込んでいった。ハルキはそれを止めようとする。


「まて、無闇に突っ込むな!もっと効率のいい戦い方があるはずだ。」


「大丈夫だ、ハルキ。カツヒロがああいう奴だってこと分かってるだろ?お前が作戦思いつくまで俺が食い止める。」


「うん、僕らに任せて!」


 タイキとタクヤも戦闘を始めた。タクヤは風を起こし、カツヒロは雷を纏って戦っている。そしてタイキの手からは、赤く燃え上がる炎が噴き出していた。


「熱いけど我慢しろよ。すぐ楽にしてやるよ。ハッハッハ!」


「悪役みたいな笑い方!いつもふざけてばっかり。」


「タクヤ、いつもふざけてるお前に言われたくはないよ!」


 タイキは剣と盾を構え、ダーク戦闘員を次々と斬っていく。段々イトコたちが攻勢になって来た。と、思われた。




「そこまでだ。イトコども。六色島の人間は皆殺しにする。」




 低い声が響いた。圧倒的な殺気。ダーク戦闘員が乗って来た船の上に、誰か人影が立っているのが見える。鋭く尖った、先端がいくつにも分かれた長い槍を持ち、身体中から棘が生えている。暗くてよく見えないが、身体は黒や紫の禍々しい色で、人を超えた姿をしている。頭からは一本の太い角が、まるでカブトムシの様に縦に延びている。


「ば、化け物だ!」


 逃げまどう、武装した大人達。次の瞬間、彼らの身体を、蛇のように曲がりくねった何かが突き刺していた。


「槍が、伸びている…?」


 怪人の槍は長く伸び、うねり、また元の長さに戻った。殺された人の亡骸が地面に転がった。四人は思わず顔を背ける。化け物は、ギロリと四人を睨みつけた。


「貴様たちがイトコか。」


 雰囲気だけでも格が違うのが分かる。全身から殺気を放っている。恐る恐る、タイキが言った。


「お、お前は誰だ?何をしに来た…?」


「この島を、貰う。」


「そんなことはさせない!この島の平和を守るのが、俺達の役目だ!」


「知るか。邪魔な奴らは皆殺しにする。」


 そう言って怪人は、次々と人々を殺し始めたのだ。


「やめろぉぉぉ!」


 カツヒロがまず飛びかかり、雷を落とす。タイキ、ハルキ、タクヤもそれに続いて怪人に攻撃をする。


「虫けらが。邪魔だ!」


 怪人は船に上がって来る四人を突き落とす。


「お前の方が虫だ!カブトムシみたいな頭して!」


 タクヤが言ったが、怪人は気にせずゆっくりと手を街の方へとかざした。


「さあ、しっかりその目に焼き付けろ。お前たちの島が、大切な町が失われていく様を。」


 怪人が手をかざすと、紫に光る光球が現れた。


「あれは、高エネルギーの塊…。あんなものがぶつかったら、町はひとたまりも無いぞ⁉」


「やめろ、壊すな!」


 イトコたちは叫び、立ち上がろうとしたが、全身が痛んで動けない。


「やめろといってやめる奴がどこにいる。」


 怪人の手からエネルギーの塊が放たれ、ものすごい勢いで町の中心部に向かって飛んでいく。あっという間に町の中心から円形の黒いドームが広がり、一気に拡大していった。ドームに飲み込まれた町は黒い灰となって崩れ落ちる。残った瓦礫の中に、人間の姿は見えなかった。六色島は、一瞬にして死の島となった。




「お前らの家族も、友達も、みんな死んじまったな。」


 残っていたダーク戦闘員達が船に乗り込んでいく。


「待て、待てよ!お前は一体、何者なんだ?」


 タイキは遠ざかっていく船に向かって叫んだ。


「俺には名前が無い。幹部A、とでも名乗っておこうか。」


 黒と黒の水平線の間に向かって、幹部Aは消えて行った。四人は廃墟となった無音の島に茫然と立ち尽くしていることしか出来なかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る