3話 不穏な予感

「僕らもダーク戦闘員倒したんやで!」


 タクヤが言った。


「まあ余裕だったけどな。」


 カツヒロも自慢げに言った。


「俺達もダーク戦闘員倒したんだぜ。」


「タイキは倒して無いだろ。」


 笑いながらハルキがツッコんだ。四人は今、部屋でトランプをしている。今日は週末。タイキとカツヒロの家族とハルキとタクヤの家族が祖父母の家に集まって晩御飯を食べる日だ。大人たちは隣の部屋でまだ食事をしている。先に食べ終わった四人はいつもこうして遊んでいる。


「よし、ダイヤの6とハートの6。残り三枚だ。」


 タイキはカードを捨てた。


「うーん、揃わないな。ババ抜きは作戦が無いから苦手だ。」


 ハルキは顔をしかめる。


「それにしても、最近はダーク戦闘員がよく現れるよな。」


「ああ。ホントに懲りないよな。ただ、奴らは一体何者なんだ?倒したら煙になって消える。人間じゃないのか?」


 タイキは残った三枚のカードをシャッフルしながら言った。


「人間だろうとそうじゃなかろうと、平和を乱す奴はぶっ倒すだけだ。俺達の力があれば楽勝だぜ!」


 カツヒロもスペードのKとダイヤのKを揃え、バシッとカードを捨て場に叩きつけた。


「カードは大切に扱え。折れたらどうするんだよ。」


 タイキは細かいことを気にするタイプ。弟のカツヒロとは真逆の性格だ。その為昔から喧嘩が絶えない。


「僕ももっと強くなりたいな~。あ、揃った!」


 タクヤが4を揃えてカードを捨てた。


「あいつら、いつも集団では襲ってくるけど、中心的リーダーがいないよね。」


 タクヤが言った。


「確かにそうだ。略奪集団はまとめ役がいないとバラバラに仲間割れを起こすのが普通だが、奴らは仲間割れをしない。これが引っかかるんだよな。」


 タイキはタクヤからカードを引くと、AとAを揃えてゆっくりと捨てた。


「俺の勝ち!ジョーカーはお前の手に渡ったぜ。」


 タイキは大声で公開処刑を行う。ジョーカーを引いたハルキは顔をしかめた。


「確かにタイキが言う通りだ。もしかしたら奴らは洗脳されている、あるいはそもそも造られた存在なのかもしれない。」


「どういうことだよ、全然分かんねぇ。って、うわっ、ジョーカー!」


 ジョーカーはカツヒロの手に渡る。


「つまり、さらなる黒幕がいるかもしれないってことだよ。それと、お前はいつも真ん中ばっかり引いている。」


 サラッと流すハルキは、残り二枚になったカードをじっくりと眺めていた。カツヒロは必死に三枚のカードをシャッフルする。


「やったー、僕も上がり!」


 カツヒロからカードを引いたタクヤが手札を全て捨てて喜んだ。


「どれがジョーカーだ…?」


 頑張って考えるハルキ。ニヤニヤするカツヒロ。その時だ。


 ゴーンゴーンゴーン…


 大きな音で、鐘が鳴り響いた。四人は驚いて顔を見合わせた。大人たちもざわついている様子だ。遠くから大声が響いた。


「略奪者だ!しかも今回は規模が桁違いだ!みんな家を守れ!」


 四人は頷き合って、部屋を出た。


「戦うのか?」


 四人の祖父が言った。イトコたちは頷く。


「気を付けるんじゃぞ。」


「分かってる。みんな、ここは俺達に任せてくれ。今回は数が多いらしいから、家この家まで来るかもしれない。気をつけて。」


 祖父母、二人ずつの父と母たちは頷いた。四人は武器を片手に扉を開いた。夜空は曇り、星は見えなかった。これが悲劇、そして長い戦いの始まりだとは、この時は誰も知らなかった。

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