たなごころの百合
三ツ星みーこ
きらいきらいだいきらい
しねしねしねしねしねしねしねしねきらいきらいきらいきらいきらいきらいきらいきらいだいきらい。
あの子と喋るとき、私の精神状態はだいたいこんな感じで激しく波うねっている。ジェットコースターなら常に垂直落下、スポーツカーならアクセル全開。
キレ疲れて泣きたくなるから近付かないでほしいのに、気付けばあの子は隣にいて、私の逆鱗をつんつんしまくる迷惑行為を楽しんでいる。
「ねーなんで軽音部やめちゃったん? 去年の演奏ちょー良かったじゃーん」
その去年に出しゃばったマネして大人数の前で失敗したからだよしね。
「機材トラブル直してるあいだ一発芸やってるアンタ、マジおもろかったんだけどー」
あれはトークで繋ごうとしてスベり散らかしてただけだよしね。掘り返すなしね。
「つかアンタのソロ演奏聴いてたのうちだけだったじゃん。唯一の観客として退部はうちにも相談あるべきっしょー?」
そうだよお前しか聴いてなかったよホールがらんがらんで隙間風吹いてたしグラウンドのテニス部のかけ声のナイスショットまで聞こえてびっくりしたよ逆になんでお前だけずっと待ってんのケラケラはしゃいで何が楽しかったわけクソその記憶だけは脳神経焼き捨ててでも消し去りたいのにお前から言ってくんじゃねえよデリカシーすっからかんかよしねしねしね。
「ぶっちゃけ演奏してる曲マニアックすぎて全然分かんなかったけど(笑)」
しね。
「まいーや。つーかうち、アンタがいると思って軽音部入っちゃったんだけど」
は?
「ライブのタイムテーブル貰ったんだけど、そういやうちギターもドラムもなんも出来ないんだわ。わはは、ドミソも分からん。歌オンリー」
何コイツ。正気? 正気なんだろうなきらい。そういうヤツなんだよだからきらい。きらいきらいきらいきらいしねしねしねしねし
「だからアンタが伴奏してよ」
ね。
「マジうち歌うまいからさー、美声につられた客が集まりすぎてホールが朝の京浜東北線みたいな混み具合になると思うのよ。だからほどよくミーハーな客を追っ払うために、アンタが好きなマニア曲弾けばいいじゃん? 完璧な布陣っしょ? どう? 天才?」
………………………………コイツのこういうとこだいきらい。
「あでもやっぱJポップがいいわ。高校生がジミヘンはさすがにダサすぎ(笑)」
しね!!!!!
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