4. 異世界ほのぼの日記2 ㊻~㊿


-㊻ 試行錯誤の注文システム-


 シューゴの声で昼が来た事を実感する好美、そろそろお楽しみの「あれ」をする時間帯が近づいて来た様だ。


好美「そう言えば・・・。」


 何かを思い出した好美は自宅である15階のキッチンへと向かい、料理用の小型エレベーター横にあるタッチパネルを開いた。

 1階の「暴徒の鱗」にある液晶パネルへと繋がる住人限定の注文システム、これを使ってみる事にした。

 好美がふと画面の右上に目をやると。


好美「もう、皆ったら・・・、何よ・・・。」


 本来は部屋番号が書かれているのだが、この15階は好美しか住人がいないので「いらっしゃいませ 我らが好美オーナー(※本来はここに部屋番号) 様」と表記されていた。

 それを見て思わず笑みがこぼれてしまった。


好美「さてと、そうだな・・・。餃子と叉焼でしょ、あれ?唐揚げなんてあったんだ、頼んでみよう。こうすればいいのかな、「注文確定」を押して・・・。」


 好美が注文を確定させると画面上に支払い方法の選択ボタンが現れた。「現金」か「魔法(クレジット)カード」が使えるらしい、オーナーでもまだ知らない事が多い様だ。好美は興味本位で「現金」を押してみた、誰かが取りに来るのだろうか。

 すると「料金をお支払い口にお入れください」と表示されたので好美はキョロキョロと探してみたが何処にも「お支払い口」など無い、すると「カチャッ」という音と共にタッチパネルが開いたので引いてみると探していた「お支払い口」が大きな口を開けていた。

 どうやら紙幣も硬貨も同じ場所から入れる様になっているらしく、好美は一先ず2000円を入れてみた。下にお金が落ちていく間に精算がなされ、数秒後に下にある取り出し口らしき穴から釣り銭が出て来た。きっと、オープンの直前まで試行錯誤を繰り返し、皆がアイデアを出しながら改良に改良を重ねてこうなったのだろう。

 釣り銭を受け取りタッチパネルを閉める、それから数秒後に小型エレベーターが上へと動き出した。

 「15階です」の電子音と共にエレベーターが開くと出来立ての料理に伝票と下半分が折られているメモ用紙が1枚添えられていた。

 メモ書きには「おつまみメニューの人気商品、生姜醤油の唐揚げと今度から出す予定の新作である塩麹唐揚げを半々ずつ入れていますのでご試食ください。」と書かれている、その下に目線をやると。


好美「ん?P.S.?何だろ。」


 メモ用紙下部の折られていた場所を開くと「P.S. おまけしといたからねー^^v!!」と慣れない顔文字付きで書かれている。

 気持ちは嬉しいがオーナーとして気持ちが複雑になった、これが繰り返されると経費の無駄が生じてしまう可能性が出てくるのだ。

 好美の思考を読んだのだろうか、ビルの全部屋を繋げる内線電話が鳴った。副店長のデルアからだ。


デルア(電話)「試食兼賄い用だった塩麹唐揚げが酒に合うか気になってね、良かったら試してみてよ。」


 デルアがおまけしたのはそれなりの理由があったらしい、今回は御咎めなしとした。

 出来立ての音を立て食欲を誘う料理が待っている、早く食べて呑みたいという一心で屋上のバルコニーに料理と缶ビールを運ぶと、つなぎを少し崩して缶ビールを開けた。

 衣サクサクの唐揚げで熱くなった口に冷えたビールを流し込む、昼間から堂々とこの高揚感を味わえるのは夜勤の人間が故の特権だと感じた。

 屋上から下を覗くと国の中心地で忙しそうに働く人々が沢山見える、「何か悪いな」と思いつつ、ついつい顔がにやけて酒が進んでしまう。


好美「さてと、次は餃子だね。熱っ・・・、そこにビールっと・・・。はぁー、たまんない!!」


 一応添付のタレで餃子を楽しんでいたが、好美には拘りの食べ方があった。キッチンへと『瞬間移動』して小皿にある調味料を入れ、そこにもう1種類振りかける。


好美「これこれ、酢胡椒!!それと・・・。」


 好美は普通のタレだけではなくこの「酢胡椒」にも辣油を入れて食べるのが好きだった。とにかく辛くしないと気が済まない時があり、必ずと言って良い程スパイシー系の調味料系統は常備していた。


-㊼ オーナーとしての葛藤と深夜の背徳-


 好美は餃子や唐揚げを肴に昼呑みしながら葛藤していた、このまま何もせずに甘えていて良いのだろうかと。

 別に働いていない訳ではない、仕事を含めて生活の時間帯が正反対なだけなのだ。しかし、第三者の目線からすると高層ビルの屋上で昼間から呑んでばかりのニートの様に見えなくもない。

 よく考えれば、一般的なコンビニのオーナーもいち従業員として店に出ている場面をよく見るので自分もそうするべきだとどうしても思ってしまう。

 今は2店舗が開店したばかりなので客足の多さを予測し、時間帯を限定して営業しているがいずれは深夜営業を始めようと考えている。というより深夜営業が目的でこのビルに「コノミーマート」も「暴徒の鱗」も開店したのだ、それは自分が夜勤の人間だからと言っても過言ではない。

本格的な営業を始める前に自分もある程度のスキルや経験を得ておこう、いや得ておくべきだ。

今夜と明日の夜は王宮での夜勤なので明後日にでもイャンダとイェットに相談してみよう、そう心に決めつつ缶ビールを呑み干した。

夜になり、王宮へと向かう。昨日の今日なので流石に守衛も好美を制止する事は無かった。ニコフと挨拶を交わしてロッカールームで制服に着替えて仕事開始、なのだがニコフは昨日と違って気楽そうな表情をしていた。


ニコフ「今日は昨日みたいにカ・・・、お供え物が必要という訳はないのでご安心ください。何も起こらない限りは1時間に1回の見回りだけですからゆっくりお過ごし頂いて結構です。」


 昨晩、ニコフに教えて貰った通りに各所のメーターの数値を書き込みながら見回りを行う。

 順調に終業時間へと近づき、現在深夜4:30。数時間前に持参した弁当を食べたのは良いのだが小腹が空いて来た。

 控室の隅にある小さな魔導コンロでお湯を沸かして、自らが持ち込んでいたカップ麺を食べる事にした。


好美「この世界にもやかんなんてあるんだ・・・。」


 よくある金色のあのやかん、ほら灼熱の夏日に野球部が直接水や麦茶を飲んでいる場面をイメージ出来るあの定番のやかん。


ニコフ「それ良いでしょう、光さんがくれたんですけどデザインが自分のお気に入りでしてね。」


 そうこうしている内にやかんから湯気が出て来る、その後「ピュー!!」と大きな音を立てて沸き上がりを知らせた。

 カップの蓋を半分だけ開けて慎重にお湯を注いでいくが、跳ねたお湯で火傷しそうになっていた。


好美「熱っ・・・。」

ニコフ「あらら、なりますよね。宜しければ、僕もご一緒させて頂いてもいいですか?」

好美「勿論、どうぞ。」


 ニコフは戸棚からストックしていたカップ麺を1つ取り、お湯を入れた。

 容器には3分と書かれていたが2人共2分程で蓋を開けた、どうやら共通して麺は硬めが好みらしい。


2人「いただきます。」


 この世界でも食への感謝の気持ちは存在していて、「いただきます」と「ご馳走様」の文化は転生者によってもたらされたらしい。

 深夜に食べる背徳感がより一層美味くさせたカップ麺は、2人にとってこれ以上にないご馳走だった。

 2人はずっと無言でご馳走に向かい、スープまで飲み干していた。


ニコフ「あ・・・、やっちゃった・・・。」

好美「え?どうしたんです?」

ニコフ「いや、残ったスープに白飯を入れるのが楽しみだったのですが忘れちゃいまして。」

好美「あはは・・・、分かります、美味しいからやりたくなるんですけど私もよく忘れちゃいます。」


 そんな中、王宮内では2人しか起きていないはずなのだが何者かがドアをノックする音がした。こんな時間に誰だろうか、ゆっくりとドアに近付きドアを開けてみるとそこには。


好美「あの・・・、どうされました?眠れないんですか?」


-㊽ 深夜の来客-


 暗く静まり返った王宮内、4:50。皆が寝ているはずの王宮の端にある夜間見回り係用の控室の前にはそこにいないはずの「一柱の神」と称される人化した古龍(エンシェントドラゴン)、クォーツ・ラルーだった。純白の民族衣装に身を包んだその姿はただただ綺麗な女性だ、おっとそんな事言ってる場合ではない。

 よく考えればエリューもいないのにどうやって降りてきたのだろうか、まぁそれは後で聞くとして。


好美「あの・・・、今日は光さんのカレーは無いんですけど・・・。」


 好美がそう言うと少し涙目の古龍は手で涙を拭い顔を赤らめて重い口を開いた。先日とはまるで別人とも思える口調だった。


クォーツ「すまねぇ・・・、悪い(わりい)・・・。あまりにも美味そうな匂いで休憩中の降りてきちまった。」

好美「え?休憩中?」


 本人が言うには、八百万の神々が3交代制でこの世界と天界の間にある門の番をしていたのだが、久々の夜勤でどっと疲れがきたらしく、そこから来た空腹に耐えていた丁度その時に好美達が食べていたカップ麺の匂いがして来たのだという。

 ただ神々の世界にも夜勤が存在していたとは、正直驚き。それとも好美の転生時に作り替えられた内の1つなのだろうか。一先ず、これは横に置いといて・・・。

 クォーツの担当する門番の仕事が丁度休憩時間になったのでこっそり抜け出して降りてきたのだそうだ、それにしても竜(ドラゴン)族は鼻が利くと聞いていたがまさかここまでとは。それとも神が故の特殊能力なのだろうか。一先ず、それも置いといて・・・。


クォーツ「やはり匂いはここからだったか・・・、すまねぇが1つ分けて貰えるか?死にそうなんだよ・・・。」


 「一柱の神」が「死にそう」などとは何という皮肉、しかし目の前の神の目から見るとどうやら嘘をついている訳ではないらしい。しかし、神にカップ麺を差し出してもいいのだろうか。

 そんな事を考えていたらさり気なく2個目のカップ麺を楽しんでいたニコフが奥から出て来た、少し剣幕とした表情だ。

 ニコフの表情を見た古龍は少し怖気づいている、何か事情でもあるのだろうか。


ニコフ「良いんですか、こっそり降りて来ても。王女様は良いとして、エリューに怒られますよ。」

クォーツ「何言ってんだよ、あいつだけが「週1の約束」って言ってきてただろ?元々は自由に行き来出来んだから怒られる理由なんかねぇの。サラマンダーやフレアブラスって神事についたら面倒になる位真面目だろ、鬼の居ぬ間の洗濯ってやつだよ。それに元々堅苦しいの苦手って知ってるじゃねぇか、頼むよ。」


 神が手を合わせてお願いしてくるのを見た将軍長(アーク・ジェネラル)はため息をついた。


ニコフ「仕方ないですね・・・、食べたらすぐに戻って下さいよ。貴女様は今仕事中なんですから。」

クォーツ「流石ニコフ将軍長、心が広いぜ。」

ニコフ「もう・・・、調子が良いんだから・・・。」


 そう言って神を控室の中に迎えると改めてやかんを火にかけお湯を沸かした、お湯が沸く間に好美の目の前で「一柱の神」がカップ麺を選んでいる。


クォーツ「おっ、これがあるじゃねぇか。これ好きなんだよ!!」


 手に取ったのは偶然から生まれたと言われており、スープのクリーミーさが売りのミルク風味のシーフードヌードルだ。

 目の前の神は本当に楽しそうな顔でお湯を注いでいる。

 2分後、好美達と同様硬めに仕上がった麺を思いっきり啜ったその表情は恍惚に満ち溢れていた。

 ぽかんとした様子の好美達をよそにクォーツは一気にカップ麺を流し込んだ。


クォーツ「おっと、これは外せねぇよな・・・。」


 そう言うと『アイテムボックス』から小さく切ったフランスパンを取り出し、残ったスープに浸して楽しんでいた。心からこのカップ麵を愛しているらしい。


ニコフ「クォーツ神、そろそろお戻りになられた方が宜しいかと。」

クォーツ「おっとそうだった、ありがとうな!!」


-㊾ いち従業員として-


 「一柱の神」が自らの業務に戻ってから2時間ほどが経ち、時計の針が7:00を指そうとしていた。そう、ニコフと好美の王宮での夜勤が明ける時間が来たのだ。


好美「お先、失礼します。」

ニコフ「お疲れ様でした。」


 将軍長と挨拶を交わした後、王宮の正門をくぐり少し歩いた所から『瞬間移動』でビル1階の「暴徒の鱗」の調理場へと移動した。


イャンダ「本当に良いのかい?」

好美「勿論、私自身が決めた事だから。」


 お客さんからの目線で見ると「オーナー」も一人の「従業員」なのだ。だから好美も立派に働けるように、そして少しでも役に立てる様に午前中の短い時間だけでもと店に出て手伝う事にした。

 これは「コノミーマート」でも同様に行うつもりで、イェットには話を通してある。


イャンダ「じゃあ・・・、夜勤明けだから無理の無い程度にね・・・。」


 しかし数時間後・・・。


好美「いらっしゃいませ、2名様ですね?こちらのお席へどうぞ!!」

イャンダ「経験あるのかい?完璧じゃないか、むしろ俺より仕事出来てるし!!」


 黒いTシャツに赤いバンダナ、そして前掛けと言った「これぞ拉麵屋」と言える制服を身に纏い接客から調理まで易々とこなしていた。

 名札に書かれている「オーナー 倉下」の文字に恥じない仕事っぷりと言える。

 好美は先程の質問に対して軽く。


好美「初めてだけど。」


 と答えていた、特に全く教えていない機械の操作を難無くこなしている事が一番の驚きであった。

 実は秘密があった、迷惑を掛けたくない一心で『完全取得』というスキルを『作成』していた。その場にいるだけでまるで長年の経験者の様に働けるものだ。

 好美は心の中で「セーフ」と呟いていて、お陰で店の評判を落とさずに済んだ。

 この事は「コノミーマート」でも同様だった、イャンダと同様にイェットも驚きの表情を見せていた。

 実はこれは本格的に2店舗が深夜営業を始める時の為の練習としてであった、可能な限り多くのバイトを雇うつもりではあるが、やはりどうしてもナイトマネージャーが出勤できない時に自分も代わりになれる様になりたかったのだ。

 流石に、深夜勤務を希望していない人に自分の様な昼夜逆転生活を勧めるのは酷すぎるのでだったら自分がと・・・。


好美「2人共ごめんなさい、自分勝手な行動に付き合わせちゃって。」

イャンダ「何言ってんだよ、手伝ってくれてありがとうね。」

イェット「本当だよ、あんた無しじゃ店が回らなくなっている位さ。本当、寂しくなるね。」


 そう言うとイェットは一粒の涙を流していた。


好美「大袈裟だなぁ、永遠の別れじゃないから泣かないでよ。」

イェット「そうだね、でも本当に無理はしないでおくれ。」

イャンダ「そうだよ、王宮での仕事に影響が出たらまずいからね。くれぐれも体を大切に。」


 すっかり仲良くなった2人の下を離れた好美は15階の自宅へと『瞬間移動』してお楽しみの「あれ」の準備を始めた。

 今日の肴は焼き鳥、味の好みが2つに別れる料理。好美は必ずと言っても良い位に塩味を選んでいた。

 特にカリカリに焼けた皮が大好物だった、歯応えが最高だ。

 捏ねも大好きだった、軟骨が入っていてコリコリで美味。


好美「よし、缶ビール缶ビール。」


 好美がニコニコしながら冷蔵庫を開けた瞬間、小型エレベーターが何かを運んで来た。好美は不審に思った、何も注文していなかったからだ。

 「送り先間違いかな」と思いながら添付されていた紙を見てみると、「あたし達2人からだよ、多少だけどお礼させとくれ。お金は2人で割り勘で払ったんだよ。」と書かれていた。

 皿には「暴徒の鱗」の唐揚げや豚キムチ、また「コノミーマート」のホットスナックが山盛りになっていて好美は涙を流した。


-㊿ 拘りの豚肉-


 翌朝、王宮での夜勤を終えた好美はいつも通りビル1階の店舗部分へと『瞬間移動』すると、何やら「暴徒の鱗」の前でデルアとピューア、そしてニーコルが話し込んでいた。3人の様子から見るにどうやら深刻な話らしい。


好美「おはよう、何かあったの?」

デルア「ああ、好美ちゃんか。おはよう、実は先程イャンダと大将に肉屋のケデールから連絡があったんだ。」


 ケデールの店いつも叉焼に使用する豚肉を外部から特別に仕入れて卸してもらっているのだが、必ずシューゴが自らの目や舌で選んだ品質に拘った良い物を少し安値でとお願いしていた。

 そんな中、肉屋が言うには数年前から店所有の豚舎で育てた豚の肉を使って貰えないだろうかと連絡があったのだ。店主・・・、と言うより豚舎を任された部下が餌から拘って育てた自信のある豚たちらしい。近所に住む農家のガイの畑や田んぼにて有機栽培で育ったトウモロコシや米などを原料とした餌を与え、化学飼料を一切使わずに放牧でストレスの無い様にのびのびと育てたそうだ。

 その肉の試食会に先程電話で呼ばれた大将と店長が向かったらしい、ただそれのどこに問題があるのだろうか。


デルア「いや、うちの場合ずっと前から醤油ダレも叉焼の肉をベースにしているだろ?肉が変われば拉麺全体の味が変わるんじゃないかって思ってね。」

ニーコル「良かったら好美ちゃん、2人と一緒に味を見て来てくれないかい?どうやら、育てたのは君と同じ転生者の人みたいだから俺らより好美ちゃんの方が話が出来るかもだからね。」

好美「ふーん・・・、それにしてもこんな早くから言ってんの?」


 現在7:15、軽トラで行けば肉屋まで10分程で着く。それに『瞬間移動』を使えばすぐ行けるはず。


デルア「8:00かららしいけど、歩いて行っちゃった。2人共運動したいんだってさ。」

好美「なるほどね・・・、それにしても今は何処にいるんだろ。店に着いてるのかな。」


 好美は『探知』で2人の位置を確認して『瞬間移動』で向かうと、陽気に話していた2人は突然のオーナーの登場に驚きを隠せない様子でいた。どうやら、豚肉料理が楽しみでお腹を空かせている様だ。


好美「おーはよ!!」

シューゴ「好美ちゃん・・・、お・・・、おはよう・・・。びっくりしたじゃないか、何故ここに?」

好美「何でって、私も豚肉料理が食べたくなったからだよ。それに育てた転生者の人が誰なのか気になってね。」

イャンダ「おはよう、好美ちゃんって豚肉好きなんだね。」

好美「昔付き合ってた元カレに似たのかな、特に豚の生姜焼きがね。」


 イャンダは好美の顔をじっと見た、よく見ると意外と整った顔つきで強いて言うなら好みのタイプらしい。店長は無言で目線を逸らすと、青空を見上げていた。


好美「な・・・、何?」

イャンダ「い、いや・・・。何でもねぇ・・・。」

シューゴ「それにしても好美ちゃんに元カレねぇ・・・、意外っちゃ意外だね。」

好美「もう、それどういう意味?!私だって1人の女なんだからね!!」


 そう言うとやたらと胸を強調し始めた、さり気なくつなぎのファスナーを気持ち程度に下ろしている。


シューゴ「悪い悪い、ほら着いたよ。」


 いつの間にか肉屋に到着した3人、するとそこにはナルリスと真希子がいた。どうやら2人もレストランの代表としてケデールに呼ばれたらしい。


好美「おはようございます、お2人も豚肉を?」

ナルリス「おはよう、どんな豚肉か楽しみだよ。」

真希子「おはよう好美ちゃん、実は今新メニューを考えていてね。」


 すると、隣のヴァンパイアが焦りだした。どうやら新メニューは真希子とミーレンの2人で開発していたそうでナルリスは初耳らしい。

 そうこうしている内に肉屋の入り口が開き、奥からケデールが手招きしたので5人は店に入って行った。

 店内ではとても美味そうで何処か懐かしい匂いがしていた。

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