第33話 悪役令嬢は二回目の学園生活の為、カンニングとチートを使ってお受験戦争に勝ち残ります

私は編入試験を待っている他の受験者達と共に椅子に座って待っている。王国立ヴァルファーレ魔法学園は実力至上主義、基本的には推薦及び、一般入試で入るルートが普通なんだけど、なんらかの理由で一般入試に間に合わなかった者がこの編入試験を受験する。

 

 受験内容は筆記、実技、面接の三つでその合計で合否が決まるのだが、一つが飛び抜けていれば他二つが0点だろうと、マイナスだろうと合格できる可能性が極めて高いの、要するに俺TUEEEEEで初級魔法の威力が伝説系! みたいなアレをできれば一番なんだけど、私に魔法の素質はないし、リリムの力を借りて実技と筆記はドーピングとカンニング、そして面談は私の精神年齢で押し切るつもりよ。

 

「それでは212番。レミー・アンヘルさん入ってください」

 

 きたきた。筆記試験も五十人一組くらいで行われるらしい、というかこのメンツの中で平均以上、できれば満点を取る事が目標なのよね。

 制限時間は45分、魔法理論や属性や、使用用途、使用時の注意点などが出題されるハズ……

 

「はじめ!」

 

 一斉にみんながテスト用紙を捲る。問題は全部で十問。第一問、一般的にみんなが使用する魔法は精霊魔法と呼ばれた魔法。その中から黒魔法白魔法などと別れるが、最上級の魔法理論が使われた根源の第三魔法に入らない物はどれか?

 

 何この問題。リリム分かる?

 

『根源の魔法は超魔導士ドロテアの魔法の事ですわね。崩壊、混沌、神撃の三種ですので、間違っているのは神聖魔法ですわ』

 

 すげぇ! 私は神聖魔法にマルをつけると第二問目に入った。

 錬金術に関する説明の内間違っている記述はどれか?

 なんか問題を考えている人、私の前世の世界と同じ出身じゃないわよね? なんか既視感のある問題の作り方なのよね。いずれもリリムの知識の範囲内で答えられる内容らしく、周りを見てみると割とみんな混乱してそうなのでこれはかなり良さそうね。

 

『最終問題ですわね。ファイアーボールをもっとも効率よく使う方法を説明と共に書きなさい? ふふっ、人間とは実に愚かですわね。答えは簡単ですわ』

 

 精霊とやらと契約をして力を借り、ファイアーボールよりも強力な魔法の詠唱段階でファイアーボールに切り替えればいいとリリムは教えてくれたけど、私はまるで意味を理解していないんだけどね。

 

「できた物から退出し、実技試験に入ってください」

 

 という事なんで私はこの教室でいの一番に退出し、実技試験会場へ向かった。実技試験はオリハルコンで出来た的に対してファイアーボールを放ち、魔法耐性のあるオリハルコンの的にどの程度の威力を発揮できるかを見るらしい。ちなみに私オンリーのファイアーボールだと的にぶつかる前に消えてなくなる自信がある。

 みんな編入試験を受けにきただけあって、的にまでは当てる事ができている子が多い。私はリリムにどのくらいまで威力は上げられるか聞いてみると、

 

『あのオリハルコンがどの程度の純度かによりますわ。試験は一回しかないので、できる限り力を込めて放ちますのでよろしいですか?』

 

 うん、こればっかりは力を加減して的の前で消えちゃった! とかだと洒落にならないので、私は了承した。

 

「炎の精霊よ。我に力を貸しその炎の調べで敵を焼き尽くせ! ファイアーボール!」

 

 この瞬間、リリムによる強制魔法強化がなされる。悪魔リリムの魔法力は私とは比べ物にならない。リリムによって強化されたファイアーボールは四段以上は上の火炎系魔法の威力を帯びている。これならインパクトも大だし、評価も高くなるんじゃ?

 

 ちゅドーーーーン!

 

 あっ、やってしまった。本来魔法で破壊する事が困難なハズのオリハルコンの的を粉々に粉砕してしまった。これには審査員の人たちも立ち上がって驚いている。

 

 あはは、私やっちゃいましたか? とか思っていると、審査員の人が私のところまで来て、

 

「レミー・アンヘルさん。さすがは天使の末裔ですね。今回の編入試験でトップラスの魔法力です。在校生の中にはあの純度の低いオリハルコンの的を消し炭にしてしまう生徒もいるからもし入学できた際には先輩たちに質問してみるといいよ」

 

 リリムの渾身の魔法は一介のエリート魔法使いより強くはないらしい。先ほどから意気消沈しているのか小声で話しかけても全然反応がない。とりあえず実技はこれで終わり、結果待ちとしましょう。

 

 そして、最終面接まで辿り着けました。学園長、講師陣と私一人、何これ? 圧迫面接? まぁなんでも質問してきなさい! ポポーんと回答してあげるわ。

 

「レミーさんはこの魔法学園に入ってどんな魔法使いになりたいですか?」

「自分の魔法で一人でも多くの方に笑顔になってもらおうと思います」

「笑顔になってもらうだけなら、紙芝居や劇などでも良くはありませんか?」

 

 出た出た。話のすり替えからこちらの意見を否定してくる面接の上等口。これに関しては私は冷静に対処する。

 

「そんな表面的な方法ではなく、私の力だからこそ学園の方々、及び学外の方を笑顔にする方法もいくつか考えています」

 

 私は黒板に何をしていく必要があるのかを書き記していた。魔物と人間の共存、その為に必要な野良の魔物の年間決まった数を駆除。

 

「画期的な魔法の道具や杖などは大量生産型に変え、それができる魔法を研究していきたいと思います!」

 

 はい、全部嘘です。私はエルシファーちゃんに守ってもらうためにこんな田舎くんだりまで来るもんですか!

 でも私が目をキラキラさせながら宗教じみた説明をすると、ほとんどの面接官達に私は強い印象を残せただろう。最後は学園長、第一線を退いたとはいえ、いまだに信じられない程の力と威圧感を感じる彼から出た言葉……

 

「ふむ、セラフェリス様から伺っていた通りの魔法使いだねレミーさん、自分の為ではなく誰かの為、魔法という強い力を持ってしまった君はこれからそのの責任を負う事になる、それは辛い批判の対象になるかもしれない。それでも君はこの学園に入り、魔法使いを目指す覚悟はあるか?」

「あります!」

 ないです。

 

 言葉と心が不一致していますが、私が元気よく責任を受け入れる旨を伝えた所、学園長は笑顔で、

 

「レミーさん、合格です。まずは初等部から入っていただきます。しっかりべんようをしてくださいね!」

 

 よっしゃあああ合格、でも私は初等部からという言葉を聞きそびれていたのだ。エルシファーちゃんは中等部のに……

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