諦められずに

鈴乱

第1話


ね、まさか、僕より先に彼が”そう”なるなんて、思いもしないじゃない。


僕の方が寿命が短いはずで、彼の方が長いはず。

それがセオリーだったんだから。


あぁ、でも。


僕らは違ったのかな。


セオリーというセオリーをなぞることなく生きてきた。


セオリーがあるなら、逆の方向へ僕らは歩みを進めてきた。


そっちの方が、面白いと思ったから。


僕らは、諦められなかったんだ。


面白そうな道を行かないなんて。

そんなこと、できなかった。


平和に自惚れて、今まで通りに甘んじて、

自分を失い、大切なものまでも手放すような、そんな生き方、嫌だったんだ。


僕も君も、ただ大切なものを追っていたかった。

好きなものを思いっきりやっていたかった。


……それは、もしかしたら、僕らが不器用だからかもしれない。


でもさ。不器用なりに、思いっきり生きてみたいな、って思ったんだ。


人が初めて歩く道は、まっさらで何の導もないけれど、だからこそ、自分たちで好きなように開拓していける。


僕も君も、探していただけなんだ。


自分の歩きたい、道を。


大変かもしれなくても、進んでいきたい道を。


自分の足を使って。自分に備わったものを使って。


何もない、無限大の可能性がある場所を、一歩ずつ踏み締めていけば、それは勝手に道となる。


別に大したことじゃないんだ。


僕がただ、そこを歩きたいと思っただけ。


歩いてみたいと、心が騒いだ。


目指してみたいと、魂が呟いた。


だから。


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諦められずに 鈴乱 @sorazome

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