旅隊商

夢に飢えた沙漠のうた

心の旅隊商カールヴァーンが紡いでゆく

蝋の翼のイカロスの

亡骸をつぶさに見た太陽を

大海の如きそらしるしと見定めて


蝙蝠こうもりが喰い散らかした暁を

通りすがりの詩人が掻き集め

楽園そらへの御階みはしこしらえているのを

真善美 三面相のピエロ

今日も眺め そして揶揄からか


流れぬ雲は塊色つちくれいろ駱駝らくだに乗るも

憩湖オアシスから顔を出す未来に戸惑う

一つ頭でたしか其処そこにあったのだ

AIに振り回された憐れな言葉ロゴス

氾濫と そして 焼失と!


生の途上にたおれた旅路の友に

永久とこしえの三日月 そうっと手向たむ

アダムとイヴを爪弾つまはじ科学サイエンス

に鮮やかなくれないの美に

思想の翼が鋭く舞い降りた夜

絶望という名の一柱ひとはしらの龍

疲弊せし大地の宮中にあらわれては

旅隊商カールヴァーンひとみすなで潰し

飛瀑ひばくの如くさかる欲望の炎で

精神の歓びを悉く焼き尽くす!


ああ むくろ重なるかなしみの丘陵を

鈍色にびいろ沙霧さぎりく呑み込んだ

戦乙女ヴァルキューレを待ち望むなど

 骨をえぐられた蜃気楼の戯言だ)


姿なき暗晦あんかいの風

星々の光輝に大きく絡み

隠れた太陽を力の限り叩きつける

……の 彼の苦悩の髑髏道ゴルゴタに!


夢に飢えた沙漠のうた

心の旅隊商カールヴァーンが紡いでゆく

夢に飢えた沙漠の詩を

心の旅隊商のしかばね

無限に 無限に紡いでゆく……


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