情と無情 一つの自己矛盾

いっそ 錆びた月になれば

 (……ああ また何やら呟き始める

  胸に生えた理性の若芽

  謀殺の悪魔にそそのかされて)


いっそ 僕が 錆びた月になれば

太陽には暮れなずむことを許さず

神のように広大な

善 或いは 徳という 大空の

あの 歪みに歪み裂けた裂け目に

この身をガリガリリガリリ……

幼子の顔で一心不乱に擦りつけ

血にただれた夜の 紅い闇の肌を背に

常識というさかずきに酔う道徳たちを皆

メシア救い主の代わりに十字架上の屍と成し……

 (微々たる覚醒は 此所ここ悉皆すっかり

  意味の陽炎かげろうに溺れてしまった!)

……ああ そうすれば それだけで

諸人もろびとを 世界中の諸人を

囚人におとしめる砂穴から救い出すことが

僕にだって できるかも知れないのに!


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