無花果

戦の地に吸い込まれた

幾多の脆い屍たち

かつて玲瓏な光に包まれたせいの過去は

暗澹たる十字路の闇に紛れ

もはやうに見る影もない

(深淵のように全てが割れた

 ……額も皮膚も……日常も!)


亡骸のてのひら

ほむら纏った無花果いちじく落ちて

人知れず 密やかに

悲哀の乱舞 高らかに

り 成り 鳴り響く……


ああ 粛然とした精神の雑踏の中を

私は独り あのうつつ襤褸ぼろ小屋に去る

……爆風がかまびすしくすさ

枯れた癖に余りにも重すぎる

この めぐり廻る 地獄の季節と共に!


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