第12話 事情聴取
「はぁ?私が嫉妬したのかですって?あの金髪王子に?それは勘違い甚だしいわ」
紫銀の髪に橙色の瞳。白磁の肌に整った鼻梁。桜桃色の小さな唇。
見た目だけは妖精姫と呼ばれるに相応しいオフィーリアは、腕を組みぞんざいな態度と口調で話す。その態度の悪さは王族の血が流れる、高貴な身分である公爵家の姫君とは決して思えないほどだった。
オフィーリアに見せつけるように、レオンハルトがニナと仲睦まじい様子で部屋に訪れたのが原因か。そんな二人に対して嫉妬し、レオンハルトに怒りの矛先を向けたのかと質問したら、このような返答が返ってきたのだった。
「それに私はオフィーリアじゃないんだけど」
自分はオフィーリアではないという彼女に対して、オフィーリアである筈の姫君と向き合っている男は訝しんだ。
事情を把握するために、向き合って話を聞いているのは、レオンハルトの従者であり二十代前半に見える若い男性。
ケントと名乗った彼は、薄茶の伸ばした髪を束ねている。
そして部屋にはもう一人、黒衣の長衣を着込んだ、いかにも魔術師といった衣装の黒髪ロン毛。こちらも若い男性で、扉付近で腕を組んでケントとオフィーリアの遣り取りを聞いている。
オフィーリアが、レオンハルトに馬乗りになっているのを止めた魔術師だった。
ケントが柔和な雰囲気を持っている分、黒髪魔術師の方は冷たい印象が強く、若い女性から事情を聞き出すにはケントの方が適していると思われる。
「オフィーリア様ではない。では貴女は何方だというのでしょうか?」
「うっ…それは、分からないのだけれど…」
「分からないのですか?変ですねぇ」
痛いところを突かれたと言わんばかりに、言葉を詰まらせるオフィーリアを、ケントは一挙一動見逃さまいと観察する。
オフィーリアは三年前にこの国を訪れた際に、レオンハルトを庇って倒れ、そのままこの国に寝たきりのまま王宮に留まっていた。
ケントは目の前にいる紫銀の髪の姫君を改めて見る。意思の強そうな夕焼けの色の瞳は真っ直ぐに、こちらを見つめてくる。
このような珍しい配色の美姫など何人もいる筈もなく、王宮の厳重な守りの中気付かないまま、似た容姿の別の女と入れ替わっていたなど考えられない。
彼女は間違いなくオフィーリアなのだ。
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