ゼロカロリー・グレープゼリー

ゼロカロリー・グレープゼリー

　鳥葬のない星ばかり敷きつめてマルチヴァースは晴れのち曇り

　水晶の音叉を四つ精確に同時にくだけば冬は薄暮れ

　ゼロカロリー・グレープゼリーの角膜を剥がす速度の眠れない朝

　臨海の画数かぞえひかり降る窓には描かれる前の点描

　花冷えてトリックとレトリックの定義さだかな君のかわいい無心

　致死量の恋をしたから食べられる天使の肉でつくる炒飯

　あかさたなサイン・ウェーブの放電で君だとわかるまでの放課後

　よくばりの詩学をみせて大戸屋の消失点をめざして疾走れ

　オレンジの文字でなければ消えないよあなたが眠るための学び舎

　ゆくるくるふるるうふるるう微睡みは距離なき階段のようにととのう

　青い蔭のどに落とした校舎裏祈れば離れてゆくオクターブ

　なだらかな大人のからだ散らばって渡り廊下は未来の隙間

　あちあちの汗だくねぎだくオドラデクサンプルミュージックグロッケンシュピール

　忘れてよ海の無謬を疑問符のない夢をみるゼブラフィッシュ

　静けさやプールサイドの重心と音像の名をもつガリガリ君

　らきらきのあかねさす寿司愛してるみどりに光る夕暮れの駅

　埼玉の摂理を神も知りたまえ千年かけて普通に生きる

　霊長類最強の脳で自慰をする恋があなたの何を知るのだ

　われわれが亡霊だった故郷に茄子の色素の甘きたそがれ

　贋作を集めてはやし天の川あまねく結語に耳をふさいで