廻りだすクリミナル137

俺が世界

第1廻前編 いってきます。

8月22日金曜日。


ほとんどの人間がきっと何でもない日で「今日は何食べよう」だとか学生なら「夏休みの宿題終わらね〜」なんてことを考えているに違いない。


この前まで俺もその一員だった。

まさか自分が『あんな事』に巻き込まれるなんて思いもしなかったからだ。


『あれ』が運命なら俺は運命を呪う。

呪いなんて非科学的なもの1ミリも信じはしないがないよりはマシだ。呪いなんて昔の人間が考えた気休めの行為にすぎない。


「運命とはなんだろう?」なんて考えたことある者がこの世に何人いるだろうか。


運ぶ命と書いて『運命』

自分の命は他人に運ばれると解釈するもよし

自分の命は自分で運ぶものだと解釈してもいい。


俺はどちらが合っているか聞かれたなら迷わず前者を選ぶだろう。


だって『俺たち』の命は

『俺たち』以外の者たちに

簡単に潰されてしまうから。


俺が誰かの命を運んでいることだってある。

俺の一挙一動が誰かを動かし『その人が死んでしまう』ことだってある。


俺たちはこの世に生まれた時から罪人だ。


その事に気づいたのは『ある事件』がきっかけだ。



さっきからずっと

『あの事』、『あれ』、『ある事件』


一体何があったかって?


学校にテロリストが攻めてきた?

違う。

それでは中学生の脳内じゃないか……。

そもそも今は夏休み。部活に入ってない俺は1ヶ月学校へ行っていない。


彼女に振られた?

それも違う。

俺が根暗なのはずっと前からだ。

そうあれは小学生の頃〜

なんて回想は後だ。


何があったか

いいだろう答えよう。



他の人からすればどうでもいいかもしれない。


感化されて泣く人はいてもそれは『妹が死んだ』ことに泣いているのではなく1人残された俺を見て泣いているのだ。


すまん答えが出てしまった。


そうだ、

俺のこの世でたった1人の妹が死んだ。




じゃあこれから俺は懺悔する。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


夏の唸るような暑さとまるでお祭り気分なセミ達に囲まれながら俺たちはショッピングモールを歩いていた。


俺は夏休みだからといって遊びに出かけることも無く家でグータラのんびりと生活を続けていた。

そんな俺を見かねてかついに妹に外へと連れられてしまったのだ。


久しぶりの外は日射が強く目が狭まる。

妹も外にあまり出ないインドア派なので同じく険しい顔をしている。


ふと掲示板に目をやると

そこには10年前に起きた無差別殺人事件の事が詳細に書かれていた。


その紙に手を伸ばし画鋲を無視して引きちぎる。

画鋲の付いていた4つ角だけキレイに残り手に残った大部分を丸めて捨てた。


「こんな昔のことまだやってるんだな。」


「お兄ちゃん!」


「な、何?」

妹が頬っぺたを膨らませ分かりやすく怒っている。

「今ポイ捨てしたでしょ?ほらあそこにゴミ箱あるから捨てておいで!」


嫌々丸まった紙を拾いバスケのシュートフォームでゴミ箱へ投げ、ダイレクトシュートが決まる。


「げっ!やなとこで運つかっちまった〜。」


「何も起こらないといいね〜。」

からかうような笑顔を俺に向ける天真爛漫な少女。


お気づきの方も多いだろうが俺の妹だ。

名前はシオン。

15歳の中学3年生だ。

中学生と言う単語を聞いて興奮している変態共はお引き取り願いたい。


今日8月22日はシオンの誕生日だ。


誕生日プレゼントは1万円分ショッピングモールで買い放題という某動画配信サイトの面々が好みそうだ。


「今何円使った〜?」

財布を取り出し中身を覗いてみる。

そこには札が1枚。

福澤ではない

野口でもない

よく結ばれた髪がチャームポイントで有名な

そう樋口さんだ。


「さっきのたこ焼き買ってきっちり5000円。」


シオンはニマニマイタズラな笑顔を顔に貼り付け嫌味そうにうなづいている。


「そうかそうか〜。まだ豪遊できますな〜。ね!お!に!い!ちゃん!」


「ハイハイ……。次はどこに行きたいですか?お姫様〜。」


お姫様はショッピングモールの別館を指さし答える。

「吾輩は別館にあるゲームセンターに行きたいでごわす。」


「なんか色々混ざって設定過剰だぞー。」


「行こ!」


シオンに手を連れられ別館へと向かう。

2階に別館へと繋がる通路があるのだが

今は1階にいるので一度外を出て道路を通る必要がある。


運悪く赤信号に切り替わったようだ。


「きっとお兄ちゃんが運使い果たしちゃったからだよ〜。」


「あれ1回で使い果たすとは……なんて運の無さ……。なあゲーセンで何するの?」


「……。」


「シオンどうかしたか?」


シオンは一瞬無表情になり、表情が戻ったかと思うと何かに怯えるみたいな表情になる。


プップー

プー


車のクラクションの音がする。

どんどん近づいているみたいだ。

誰か信号無視でもしているのか?



プープップップッー

プープー




音の方を振り返る。

そこには4mくらいありそうな大型トラックと対面した。対面したといってもまだ余裕はある。

余裕で逃げれる距離だ。


俺はここで最悪なことに気づいた。

体が動かなかった。

恐怖で竦んでいると思ったが。

緊張はしてない。


轢かれてぺっちゃんこになった自分を想像する。


「お兄ちゃん!」

体に衝撃が走る。

しかしトラックに轢かれたらこんなもんじゃないと脳が体に訴えかけてくる。


じゃあトラックはどこへ?


体はもう動く。

ゆっくり辺りを見渡す。

ショッピングモール内はある1点に注目していることに気がついた。


そこに目をやると

シオンと同じような服をきて

シオンと同じくらいの体型で

シオンと変わらなく見える年齢で

今日俺がシオンに買ってあげた全てと同じものがその場に散らばっていて……、


それがシオンだと理解するのに少し時間がかかった。嫌違う、ありガチで面白くないかもしれないが俺は信じたくなかったんだ。


あそこに無惨に転がっている少女がいつも一緒の空間で暮らしている少女と同一視したくなかった。


『あれ』がシオンだということに耐え難い苦痛を感じた。俺たち2人に『天罰』でも食らったのか。


この日から

『俺』が

『私』が

『俺たち』が

『私たち』が

『あんな事』に巻き込まれるのだ。



※クリミナルはスペイン語で罪人とかそんな意味です。By作者(俺が世界)


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