着替え
男女比1:22。
それは僕が元いた世界と明らかに違う、確かな証拠となるモノ。
街を歩けば男性を見掛けることは殆どないし、かと言えそれは学校でも同じ事だと思う。
学校に登校する男性は少ない。
なぜなら、学校に行かなくても勝手にお金が入るから。
そうなると、わざわざ学校なんていう女子の犇めく場所に行く必要がない。
だからこそ出会いが減り、ますます男女比の格差が進んでいる───か。
スルスルと、歴史の教科担当の教師の話を聞きながら、大切な箇所をノートにまとめていく。
今は一時間目の歴史の授業だ。
全校生徒が教師合わせて3000人を超えるこの高校ですら、全男子生徒は300人もいない。
登校してくる男子なんてきっと、この中の10分の1にも満たないと思う。
───そりゃ痴女増えるよ。
会社になんていかない男性がほとんどだろうしね。
仲良くなろうにも数の絶対数が少ないわけだし、そもそもこの世界の男性はプライドがかなり高いらしい……まぁ、そこは“この前身をもって知った”からいいんだけど、逆によくこんな世界で女性達のフラストレーションが溜まらないんだろう。
……いや、溜まってるけど解放しないように我慢してるだけなのか。
そう考えたら凄すぎるねほんと。
『───で、あるからして』
「……ふぁ、ねみぃ。退屈過ぎんだろ歴史のじゅぎょー」
「肯定。過去を振り返るよりも未来を考える方が賢明」
おっと、どうやら2人とも歴史の授業は好みじゃないみたいだ。まぁ残り15分だからそれまで頑張って!としか言えない。
でも僕はなかなか新しい発見があって、面白くて好きなんだけどなぁ───歴史の先生のおっぱい大きいし。
若干胸のサイズが分かりにくい服着てるけど、あれは間違いなく隠れ巨乳だ。僕の観察眼がそう言ってるから間違いないね。
───なんてアホなことを考えていると。
『じゃあ、今日の授業はこれでおしまいにします。次の授業は体育だよね?全員着替えていいよ』
いつの間にか授業が終わっていた。
……え?あれ?いつの間に授業終わってたの!?あれぇ!?
おかしいと思って時計を見るけど、ちゃんと15分針は進んでいた。
それはつまり、時間の感覚を忘れるくらい僕が先生のおっぱいに釘付けになっていたということ。
「くっ、なんて恐ろしいおっぱいなんだ!」
「……絶句。湊が一体授業中に何を考えてるのか、私には到底理解が及ばない」
「湊は胸ねぇもんなぁ……ぶっちゃけ羨ましいだろ?この洗練された私の豊満なボディーが!」
「あぁ、そうだね。うん」
「つめてぇよォ!?」
僕が欲しいのは胸でも豊満なボディーでもなく、可愛い彼女なんだけどね……まぁ、今の僕には出来そうにな───ってぇ!?
みんなもう下着になってるじゃん!?着替えるの早いって……僕も早く退散して着替えないと。
と、必死にクラスメート達の下着姿を目に入れないように、目を抑えながら何とか荷物を取りだした。
「そこはもっと欲しがるところだろー!なぁ、湊ぉー!……え、どした?どっかに鼻でも打ったか?」
よし!これで!と思ったのも束の間。
……あぁ近い近い近いってぇ!?
「ッ!?あー今の僕に近付いたら封印されし邪龍が解き放たれるからちょっと待ってぇ!!!」
目の前にいる、下着姿で心配そうに僕を覗き込む遥から精一杯目を逸らしながら、なんとか適当に誤魔化す。
「封印されし……邪龍だと?……おいおい、なんだそれカッコよすぎだろ」
「疑問。封印されし邪龍とは?」
「こ、今度見せるからうん!そ、それじゃ!」
そう言い残し、なんとか教室から抜け出した。
てかなんだよ僕、封印されし邪龍って。
いつの間にか見せる約束までしちゃったし……まぁ今考えても仕方ないか。
「よしよし、じゃあ後は服を着替えるだけ……」
いつも通り男女兼用トイレに入って、体操服へと着替える。
自分でも惜しいことをしたとは思うけど……女子の下着を見る興奮度よりも、見ちゃったっていう罪悪感が買っちゃう限り、多分僕教室で着替えられないと思うな。
「にしても───遥は黒、雫は水色か」
偶然見てしまったものとは言え、やっぱり罪悪感がすごい。
それと雫の呆れ返ったような眼差しは本当にゾクゾク……じゃなくて、ちょっと怖かった。
でも言わせてもらいたい。
揺れる胸に目がいかない男の子はいないんだぞって。
───何馬鹿なこと考えてるんだろ。
けど次は体育なんだよねぇ……強制ではないけど男女合同だし。
しっとりと濡れた髪、火照った顔、汗だくの首筋、揺れる胸。
果たしてこれに興奮しない男子はいるのだろうか?
否、断じて否!
「でも多分結局見れないんだよなぁ……僕チキンだし」
自慢じゃないけど、僕の性的なモノへの耐性は並以下だからね。自慢じゃないけど!
けど童貞を卒業するならある程度性的なモノへの耐性は上げないといけないし……あぁ、僕は本当にこの世界で童貞を卒業できるのかな?
と、ちょっと未来の自分が不安になる僕だった。
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