男が希少な世界で僕は、女っぽい格好してるけど実は男でしたムーブを満喫する

羽消しゴム

名案は突然思いつくモノ

「はぁーー、出会いが欲しーー!!!」


大声で教室のど真ん中で叫んだ挙句、大きなため息を吐いたのは私━━いや、僕の親友。


「アハハ、ハルカっていっつもそればっかだね?」


それに笑いながら言葉を返し、どう考えてもモテる要素満点な遥を見つめる。

いやぁ、これが《元の世界》ならきっと、いや絶対に引く手数多だったろうに……そうとも言えないのが《今の世界》だ。


「だってさぁ……いくらなんでも男子との出会いが無さすぎるじゃん」


なんということもない、可も不可すらもなかった人生。そんな生涯に幕を下ろして、別の世界?でこうして生きてきて16年。

最初は何が何だか分かんなかったけど、小学生に上がった頃から段々とこの世界の情勢が分かってきたのが、元の世界と今の世界の違いに気づいた最初のステップだ。


まず小学校に入学した時だが、最初に感じた違和感は男女比の偏りだった。


だってあからさまに男子が少ないんだもの。


てか寧ろこの世界の女子がパワフルすぎて、野球とかサッカーとかドッジボールとか率先して楽しんでた気がする。勿論僕もそれに混じって楽しんでたけどね!


いやぁ、イエスロリータノータッチを掲げる僕だけど、実に楽しかったなぁ……。


ちなみに僕以外の男子はみんなおままごとしてた。


なんだよお父さんごっこって。なんで僕がお母さん役なんだよ、おかしいだろ。


小学校の時は、何故か頬を赤らめる男子が多かった気がする。まぁあの頃から僕は髪の毛長かったし、中性的な時期だから女子だと間違えるのは分かるけどさ?


おかげで女子からの殺意の眼差しが痛かった。おかしいだろ、僕男子だぞ?もっとこうチヤホヤしてくれても良いと思うんだけど?


「わ、わかるわー」


「ど、どしたのミナト?出会いなさすぎて泣いちゃった?」


「いや、僕の過去が虚しすぎて泣いてた」


「……なんかごめん」


だめだ、そこで謝られるともっと虚しいじゃんか。


おかしいなぁ、ここって男女比がおかしい世界のはずなのになぁ。まぁ具体的には1:22くらいらしいけど。


人数が少ない学校なら、1クラスに1人レベルの希少さだ。それなのに、それなのに━━何故か壊滅的にモテない。

まぁ理由はわかってるんだけどね?


この世界じゃ男ってバレた瞬間にそれはもうエグい目に合わされるらしい。いやまぁ、僕だって男だからどんなエグい目に合わされるか気になるところではあるけど、違う。


そうじゃ、そうじゃないんだよ。


僕は━━和姦が好みなんだ。


無理やりはなんか、違うだろ?わかる?わかれよ。


「まぁいいや、カラオケいこうよカラオケ」


気分を晴らすために、とりあえず近くのカラオケ店にでも言こうと提案してみる。


「ん、私はパフェ食べたい所存」


さっきまで生気を失っていたのに、どこかに行くって言う時だけ息を吹き返すのがこれまた美少女である黒瀬クロセ シズク


気だるげな瞳にショートカットの白髪は、どこか儚げな雰囲気を醸し出している━━あぁ、最初の印象だけはね?

それがまさか腹が減ってやる気が出てないだけとは思わなかったけど。


「なに、シズクはパフェ派だったか」


「いいねぇ、私もパフェにしよっかなー?」


こら、嬉しそうに僕に寄るな。デカい胸が強調されてネームプレートの《水瀬ミナセ ハルカ》の文字に気を取られちゃうだろ!?


「うわ、遥まで……しょうがない、じゃあ僕もパフェ食べる」


そんな興奮を押し殺して、僕は笑みを携えながらしょーがない、と肩を竦めた。


えらい、ぼくちょーえらい。


━━


煌雅コウガ18年、分かりやすく言えば2083年。日本含め各国は男性の減少に悩んでいた。


太陽から発せられるα波と名付けられた紫外線により、胎児の性別が決まる過程が妨害され、男性になるために必要な男性ホルモンと染色体が破壊され、増殖を妨害。

その結果男性の生まれにくい環境が80年ほど前から続いていた。


現在対策出来る内容としては、女性として産まれてきた子供に無理やり男性ホルモンを注射し、男性へと変化させるというものだが、あまりにも人権を無視した行為のため、自ら志願した者以外は行うことが出来ない。


「……僕がいる世界の情報はこんな感じかなぁ?」


と、遥と雫がパフェを取りに行ってくれているさなか、席の確保を命じられた僕は1人、ウィ〇ペディアで男女比の差について調べていた。

……はいいものの、やはり自分がいた世界とは異なる運命を辿っているみたいで、少し寂しく感じる。


まぁ、今更元の世界に戻ろうとは思わないからいいけどね?


中性的な顔も相まって髪が長くて女っぽいけど、贔屓目に見てもめちゃくちゃ顔は整ってるし、声もちょっと低いけどイケボ?カワボ?の中間くらいの絶妙に心地よい声(母が言うには)らしいから、元のブサメンフェイスに戻ろうとは思わない。


……ただ、元の世界の両親に親孝行が出来なかったのが、やっぱり気がかりではある。


まぁ兎も角、この世界でモテるには十分すぎるほどのポテンシャルを僕は秘めている……はずなんだけど。


モテない。


マジで僕が女なんじゃないかって思われてるくらいモテない━━ま、まさかね?


そういえば入学式の時、このクラスに男子が1人いるって担任の先生から言われた時の女子達の色めきだった声と、なんだ今日は登校してないのかっていう女子達が落胆のため息を吐いて━━あれ?僕もしかしてほんとに気付かれてない?


「いやいやいや、おかしいでしょ!?どう考えても男じゃん僕!!男子用の制服着てるし!!身長も170だぞ!?なんで気づかれてないんだよ!!」


1人カフェの席にて絶叫。


いやでも言わせて欲しい、いくらなんでも男子と気づかれてないって、せっかく男女比が逆転した世界に来たってのに悲しすぎるだろ。


「1人で叫んでどしたの湊?」


「緊急事態?トイレはあっち。それとストロベリーパフェ、はい」


「いや違うから、漏れそうだから絶叫してたわけじゃないから……って、パフェ持ってきてくれてありがとう」


「いや、そこで冷静になる湊の精神が私は分からないんだけど」


いつの間にか戻ってきてた冷静にツッこんでくる遥をよそ目に、目の前に鎮座するストロベリーパフェを食べる。

いやぁ、やっぱりストロベリーパフェは人類至高のスイーツだと僕は思う。なんだよこの美味しさ、あと5杯はいけるね。


「無視すんなー?……もう、まぁいいや。あんたの幸せそうな顔みてたらどーでも良くなっちゃった」


「確かに。悔しいけど私よりも可愛いのは肯定する」


「なに、聞き捨てならないぞ今のは」


どう考えてもカッコイイだろ僕は。どうだ!見ろこの割れた腹筋を!めちゃくちゃセクスィーだろうが!


「お、腹筋割れてるー!すげーじゃん!……はぁ、あんたが男だったら良かったのに……こんな整った可愛い顔してたらありえないよねぇ」


ため息を吐きながら残念そうに目を伏せる遥。


あれ、僕ほんとに女子やと思われてるじゃん………。

懸念点当たってるじゃん………。


「あの、忘れてるかもしれないけど、僕は男だよ?」


確かにカフェのビーチパラソルの下の白い丸テーブルでパフェを食べてる君達はJKに見えるかも知んないけど、どう考えてもイケメンシックスパックイケメンの僕までJK扱いされるのは嘆かわしいんだけど。


「否定する。腹筋割れてる男性は都市伝説。それに加えこの可愛い容姿、男のはずがない」


「……そ、そっか」


だけど、パフェを食べつつも無表情で無情にも否定する雫に思わず頷いてしまった。


情けない、情けないぞ僕。


「ん、だって湊は校内美少女ランキングの圧倒的1位。いくら遥が男に飢えてても、流石に湊は可愛すぎてそういう目で見れない」


「そ、そっか……」


悲しい。

僕ってそんな女っぽいか?


てか校内美少女ランキング1位って聞いてないんだけど?え、僕いつの間にそんなすごい賞取ってたの?


うちの学校共学だから、男と出会うためにかなり高い偏差値と教養、それと容姿が求められるって聞いてるのに、なんで僕が1位取ってんの?


━━


「そりゃモテないわ」


あの後無事パフェを8杯おかわりした後解散して、現在我が部屋にてベッドに寝転んでいる。


思い返してみれば、中学の時も男子から告白されたことがあった。


何かの冗談だと思って適当に振ってなぁなぁで済ませたけど、アレももしかして本当に女子だと思われてたってことなのかな?


そりゃモテないよ。


「でもまさかこの世界に来てもモテないなんて……悲しすぎるんだけど」


前世も今世も童貞。童貞も守れない男に何が守れるんだっていう話は記憶に新しいけど、そもそも童貞に守れるものなんて何もないから、実質童貞の価値なんて元の世界じゃほとんどなかったんだよねぇ。


今の世界じゃ童貞は神聖視されてる感があるけど、逆に神聖視されすぎて女性達が躊躇うらしい。


なんだそれ。


結局童貞卒業出来ないじゃんか!!


「あーもうどうしよ。可愛い彼女欲しいのに誰も男って気付いてくれないし……男だって言っても信じてくれない」


……い、いっそち〇こでも晒した方がいいのかな?


いやでも、そこに愛はあるんか?

和姦しか認めないはずなのに妥協していいのか?


いいや良くないね。


ってほら、ベッドの上のサメちゃん人形だってそう言ってるよ。


「かくなるうえは……いや待てよ?」


とここで、普段は発揮されない僕の冴え渡る頭脳が1つの名案をたたき出した。


「今までは男だー!って言い張ってたから逆に女子だと思われてたけど……逆にいかにも女ですって感じで隠し通して、いざって時に実は男でしたってバラした方が面白くないか?」


漫画風に言ってしまえば、「あいつ女だったのか!?」の逆バージョン。


女子達の驚く顔も見られるし、僕は僕でもしかしたら童貞を卒業出来るかもしれない。


「ふむ、完璧な策だな!」


思い立ったが即実行、明日の朝からやってみよう。


「ふふふ、アイツらの驚いた顔が目に浮かぶようだ」


ニヤニヤしたまま、多分気持ち悪い顔でどんな風にネタバレしようかな、なんて考えるのに忙しくて、寝ようとしてもなかなか寝付けなかった。









翌日、思い切り遅刻した。

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