魔王を倒した勇者です。そろそろ許してください。

@real_de_yaruo

第1話 誰か売春してくれ

「このパーティの中から一人、売春をしてもらう」


 荘厳な輝きの鎧を身にまとう、勇者の俺はパーティの3人に向けてそういった。

 もちろん、俺以外の三人は女性である。


「ふっ、ふぇぇ……。ば、売春ってどういうことぇすか……」


 開幕から怯えた声を上げたのは、赤髪の獣人盗賊だった。

 ケモミミの小動物的な印象な彼女だが、すらっと背の高い丈夫な体つきで健康的な肉体美を持っている。背中には、成人男性すら丸呑みしそうなほどに威圧的な大剣を背負っていた。


「言葉の通り、このパーティの中の誰かが売春で収益を得てもらう」


「何言ってんの? わたしたちは魔王を倒した勇者パーティよ。そんな名誉あるわたしたちが何で売女の真似事しなきゃいけないわけ?」


「売女の真似事じゃなくて、マジの売女になる奴を決めます」


 強気な声で反論してくるのは、ツインテールの少女魔道士だ。

 こうやって俺が話しているにも関わらず、彼女は俺に目を配るどころか、読書のついでに会話してあげていると言わんばかりの態度だ。

 まぁ、なんというか反抗期なやつである。


「まぁまぁ、とにかく、勇者さんがどうしてそんな提案をしたのか、理由を説明してもらいましょう」


 柔和な笑顔で場をしきるのは、女僧侶である。

 白をベースにした教会の礼装を身に纏うものの、その肢体から醸し出す豊満な肉体が、教会の正式な装飾を不健全なものにしている。

 そんな彼女の手には、無骨なロッドが握られている。少しばかり、女性かつ僧侶という非戦闘員が持ち運ぶには、不釣り合いな代物だ。


「さっきも少女魔道士が言ったけど、俺たち勇者パーティーが、見事、魔王を討滅して一年が経ちました」


「壮絶な戦いでしたぁ……」


「天才のわたしがいるのだから当然のことね」


「懐かしいわ。もう一年経つなんて」


 女三人はそれぞれの感想を口にする。


「でも、おかしいわね。魔王討伐によって、私たち勇者パーティーは莫大な報酬を得たはずよ。なのに、まるで資金繰りに困って売春するような言い方ね」

 

「はい、女僧侶さんの言う通りです。そして、この一年で、その魔王討伐の莫大な報酬は全て使い切ったんです。お前ら、明日からその辺の草を食うことになるからな」


「ふっ、ふぇえ!? あれだけの報酬が、も、もうなくなったんですか!?」


「どういうこと? 勇者、帳簿はちゃんとつけてるのよね?」


「あらあら、大変ね」


「帳簿はちゃんと付けていました。この一年間の、出費、全部この一冊に記録しております」


 俺は一冊の帳簿を彼女たちへ見せびらかす。

 

「はい、それでは皆さまお集まりのようですし! 今回は『この一年で馬鹿みたいにバカ散財したバカ』をランキング形式でご紹介します!」


 俺は「ハイ拍手!」と、パーティメンバーに命じると、獣人盗賊はオロオロとしつつ、女僧侶は作られた笑顔で拍手を送る。少女魔道士は完全に無視していた。


「第4位、俺! 勇者! 月の平均出費額は『15万2463ルピー』!」

 

 1ルピーは日本円で1円くらいです。


「やっす。学校出たばかりのやつ初任給でもまだマシよ」


「俺だって最初はな……良いモン食べて、良い酒呑んで、女の子に囲われた日もあったさ。

 でもな、でもな! 日に日に際限を知らずに出費をかさませてくるお前らの帳簿を取っているうちに、俺が節制しないと、いつかこのパーティは崩壊するって気が気でなかったんだよ!

 先月なんて街についても、俺は外食を控えて、路地裏に生えているたんぽぽをバターにして食べて餓えを凌いでいたんだぞ? バターは近くにいたホームレスから恵んでもらったんだ……! わかるかお前ら……魔王を倒した、チートスキルを神にもらった勇者が、ホームレスや物乞いとバーベキューする惨めさがッ!」


「哀れですぅ(^o^;」


「……(読書に夢中の少女魔道士)」


「今度美味しいもの食べに行きましょうね^ ^」


 イライラしてきた。

 これ以上この女たちを相手にしてると、俺自身どうにかなってしまいそうだ。


「続いて第三位! 獣人盗賊!

月の平均出費額は『784万6821ルピー』!」


「ふぇっ!? あ、アタシですかぁ!?」


 舌足らずの言葉遣いで、獣人盗賊は答えた。

 まるで自分は無害な小動物だと言わんばかりではないか。


「これはなにかの間違いですぅ……。あ、あたし、悪いことなんて何もしていませぇぇん」


「キャバクラ」


「あたしより可愛い女の子がチヤホヤしてくれる素敵な場所れす(*´ω`*)」


「男の子」


「お金を渡せば何でもしてくれる純粋な子が好きぃ……」


「女装風俗」


「女に堕ちた弱者男性が、惨めにあたしの恥部を舐めているのを見ると、すごい元気になりますゥ……」


「月の平均出費額は『784万6821ルピー』」


「な、何かの間違いれすよ!」


「この一年で一番楽しかったことは?」


「国中から集めた選り好み美男子を女装させて、夜な夜な高級クラブでパーティしたことですねぇ。美少年にお酒を注がせてベッドに誘う時よりも、多額のお金を目にして、嫌々ながらも女装させられる瞬間、あの悔しさと決意ある目をした貧困少年の顔を見たときが、一番気持ちよかったですぅ……」

 

「間違いもクソもねぇだろ!」


 獣人盗賊は「ひぅ……(>_<)」と悲鳴を上げた。

 何被害者ぶってるんだお前。

 そろそろ殴りたい。


「ご、ごめんなさい勇者さん。

 あ、あたし、自信が持てない性格なので、どうしても、本来優位に立つべき男性や自分より綺麗な女の人が私を褒めてくれると、凄い気持ちよくなれるんれす。

 その中でも、将来有望な男の子が、私の為に嫌々でもお酒をついて、女の子の格好をしている姿を見ることが一番いいんです。

 夢と希望に満ちているはずの男の子が、お金の為に媚びへつらったり、お金の欲望に負けて、消えない傷を矮小なあたし如きに刻まれてしまう快感は、どうしても、どうしても抑えきれないんれす!(´;ω;`)」


「最低だよお前……」


 性根がクズ過ぎる。


「でも、勇者さん。あたし、風俗だけは……風俗だけは行きたくないんです!」


「理由は?」


「魔王を倒した勇者パーティのあたしが……汚いおっさんに媚びを売るなんて……考えたくもないんです!(>_<)」


「いっぺん反省してこい」


「そ、それに! 勇者さんだって女装すれば風俗で働けるじゃないれすか!

 なんであたしにばっかりそういうことするんれすか!?」


「お前ッ! どう考えてもお前らが行くべきだろ! 俺がどれだけ節制して生きてると思ってるんだよ! 

 お前が札束何十枚を見せびらかしながら少年に酒を注がせている間なァ! 俺はホームレスに頭を下げて、タンポポの炒め物にかける醤油を恵んでもらっていたんだぞ!? 

 魔王を倒した勇者の俺の方がよっぽど尊厳が破壊されとるわッ!」


 俺の熱弁が届いているのかいないのか、獣人盗賊はただただ被害者みたいに怯えているだけだった。


「とにかく、今後はお前の歯止めの利かない性癖を抑えるか、風俗に身売りするが、どっちか選ぶことだな」


「ざ、残酷れす……(>_<)」


 俺はイライラを抑えながらも、現実的な一言を盗賊獣人に叩きつける。


「そして第二位! 少女魔導士!

月の平均出費額は『1587万1147ルピー』!」


「わたし? 何言ってんのよ。わたしは風俗もキャバクラにも行ってないわよ」


 少女魔導士はぶっきらぼうに答えた。


「今お前が読んでる本のタイトルは?」


「魔導使いリリキリス著書 『ンガシノ集落の前域にて確認された精霊とその生態』」


「その本一冊にかかる金額を知っているか?」


「それは記録するに値しない知識ね」


「245万ルピーだ」


「まぁ当然の金額ね。カーイ地方の一部集落にて保管されていた貴重な図書だもの。本来は国宝に近い代物だし」


「今どれくらい読んだ?」


「もう八割がた。勇者が横やり入れてるせいで、集中して読めないわ」


「読み返したりしないだろ?」


「……長い付き合いなのに、もう忘れたの? 

 私は完全記憶能力を持っているの。一度読んだ本は、一生、忘れることは無いわ。一度脳に入力したデータは、二度と、私の元から離れることはないの」


「じゃあ、読んだ本はどうする」


「まぁ、捨てるわ。重いもの」


「最後の質問。それを読み終えるのに、どれくらいの時間がかかった?」


「今日の昼から読んでいたから、まぁ、2時間もないわね」


「国宝級の図書をポテチ感覚で消費するんじゃあねぇ!」


 バンッ! と俺は手に持っていた帳簿を地面に叩きつけた。


「でも、言わせてもらうけど、わたしの本代は冒険の役に立っているはずよ。そこの盗賊獣人と違ってね」


「うぅ……手厳しいですぅ……(>_<)」


「じゃあ少女魔導士。お前、上級魔法の『巨大火球メガファイア』を撃ってみろよ」


「……」


「お? どうした? 『巨大火球メガファイア』くらいなら、勇者の俺でも撃てるぞ? もしかして、勇者パーティの天才魔導士様って、『巨大火球メガファイア』すら撃てないとか?」


「……」


「まーさーかーなー! あの強大な神秘を持っていた魔王を倒した、勇者パーティーの魔導士がァー! 魔法の知識があるだけのー! ほとんど魔法が撃てないポンコツ魔導士なんてことはー! ないよなー!」


「殺してやるッ」


 少女魔導士は分厚い魔導書を勇者に投げつけた。

 それは勇者の顔面に命中し、勇者の俺は倒れる。

 そして、それを良しとして少女魔導士は近くにあった鉄パイプで横たわる勇者を叩きつけた。


「いたっ! 痛いッ! てめっ! 魔法も撃てないポンコツ魔導使いのくせして鉄パイプなんて常備しやがゥ、イテっ! おい。頭蓋骨割れるから止めっ! イテッ!」


「だいたい! 私は本を読んでるだけで、それがどれほどの出費になるかなんて、考えたくもないの! そういうのは勇者のあんたが管理すれば良いじゃない!」


「うるせぇ! イデッ! だいたい止めろって言ってんのに勝手に俺の財布から金を抜き取ったり、支払いは勇者にって言ったりして、停泊していた村や国の上級図書をお前が勝手に買ってくる、イデデッデ! おい。脳を的確に攻撃するな!」


「アンタが魔法を使えないとか、下らない言葉の魔法マジカルハラスメントをしてくるからでしょ!?」


「知らねーよ! お前みたいな常識知らずの思春期真っ盛りのイカレ女は、風俗にでも落ちて身の程でも知りあがれ! てか金稼いで来いよバカ!」


「ふっざけンじゃないわよ弱者男性ファッキンガイッ! だいたいそういう風俗とか花売りとか低俗なものは勇者がやりなさいよ! 天才魔導士のわたしに、そう言うの巻き込まないでほしいわ!」


「コイツ……ッ! 一昨日は物乞いに物乞いして賞味期限が3日過ぎた弁当のパセリを食べていた勇者に向かって……イダダッ! イダイガラヤメデッ!」


 勇者の俺が悲鳴を上げて懇願しているのに、この天才魔導士は暴力を止めることはない。

 ひどすぎる。


「ふンッ! これに懲りたら調子に乗らないことね」


 ぼろ雑巾みたいに痛めつけられた勇者の俺を見て、満足したように少女魔導士は鉄パイプをおいて、読書を続けた。


「く、くそ……。このメスガキがよぉ……風俗に堕ちればいいのに……」


「は?」


「何でもないです。読書を続けてください……」


 俺、魔王を倒した勇者だよな。

 人生が辛いよ……。


「そ、それでは栄えある第一位のご紹介です。

 女僧侶……。

 月の平均出費額は『4億4587万3892ルピー』……」


「あらあらまぁまぁ……。

 聞き間違えかしら? 私、そんなお金を使っていたかしら?」


「うん、まぁ、これブッ飛び過ぎてさ、もうなんか色々、説教する気も起きないんだけど」


「私、困らせることしていたなら、謝罪させてください。マリィトワ神の名に誓って、勇者さんを困らせることはしたくないですもの」


「じゃあ、今月起こした貴女の暴力事件、1つ1つ列挙してください」


「ぼ、暴力事件……! そんな! 私が非人道的なことをするはずがありません!」


「では、貴女がしてきた宗教活動を教えてください」


「あらあら……言い間違いはほどほどにしてくださいね。困っちゃいますから。

 先日宿泊したカーイ地方のサッケーダ村では、多くの人にマリィトワ神への信仰の素晴らしさを、皆様に伝えることができたと思いますわ。

 そうね、その場にいた24名のうち、成人男性14人、成人女性7人、老人2名だったかしら」


「うん。その宗教方法ってどんな感じ?」


「宗教方法? 変な言葉を使いますね。

 強いて言うのでしたら、マリィトワ神は『愛と慈愛の女神』。つまり、回復魔法に特化しています。

 その敬愛なるマリィトワ神の感謝を伝えるためには、殺虫剤を噴射されて死にかけたゴキブリの気分を知った後、回復魔法によって蘇る悦びを知らなければいけませんわ。

 最近の、魔王亡き後の人々は、死への恐怖が薄れている気がします。

 なればこそ、私はその『死への恐怖』をマリィトワ神の信仰がいかに正しいものであるのかを伝えなければいけません。

 

 だから、私は村の住人を徹底的に殴り、痛めつけ、蹂躙し、死にかけた者に救済回復魔法を施すことで、マリィトワ神の慈愛の悦びを知らしめていますわ」


「うん。それを暴力事件って言うんですよね。一般的に」


 宗教ってそうなのー!?

 自分が自分らしく輝いていく暴力事件を起こしていくのかなーッ?

 素晴らしきお前の人生だなァー!


「しかし、私の何が悪いのかわかりませんね。だって私、ちゃんと殴って痛めつけた子羊はちゃんと回復魔法で治療していますもの。たとえ四肢が抉られようと、脳が打ち砕かれようと、臓器が破裂しようと、マリィトワ神の加護によって彼らは復活します。

 それの何の問題があるのでしょう?」


 こいつ、一応は計算して宗教活動してんのかよ。

 最低だな。


「現実的な話だな。

 お前の起こした宗教活動に伴って、莫大な謝礼金、損害賠償、傷害罪に伴う保釈金。この一年でどれだけそれが積み重なったと思っているんだ?

 お前が例に挙げた、サッケーダ村での謝礼金だけでも、数千万は支払ったんだよ。村の稼ぎ頭の大の大人、数人がトラウマで今も怯えているような状況だぞ? マリィトワ神がどう思うんだよ。血塗られて人の頭蓋を破壊し尽くしたそのロッドを見て、マリィトワ神はどう思うんだよ」


「金銭の問題……それは神のみぞ知る話ですわ。それよりも重要なことは、痛みを知り、信仰を知ること。

 私はマリィトワ神への信仰を皆様に知らしめるために、四肢粉塵と努める所存ですわ。 

 それに、私が、仮に暴力事件に類する事を起こしたとしましょう。ですが、暴力を受けたと思われる被害者は、回復されていて、傷害事件として訴訟することなんてできるはずがございませんわ」」


 漢字がおかしいぞ狂信者。


「でもな、傷害にならないにしても、ちゃんと精神的な苦痛は実存しているんだよ。

 分かるか? お前の宗教活動の後始末で、一軒一軒、被害者の家に回って俺は頭を下げているんだよ。チンピラまがいの兄ちゃんにウィスキーの瓶を投げつけられても、俺は頭を上げることなく、ひたすらに地べたに頭を擦りつけ、謝罪してきたんだよ。魔王を倒した勇者の俺が。

 何とかお金で解決できるなら、ってことで、どれもこれも、全部お金で解決してきたんだよ。示談金ですべて解決してきたんだよ。魔王を倒して世界を救った勇者の俺が!

 そうして膨れ上がったお金が、この月の平均出費額『4億4587万3892ルピー』ってお金なんだよ! これが世界を救った勇者の俺が背負ってる借金なんだよ! てかこれ月の出費額だからな! 年間の出費額はもっとヤバいからな!」


「勇者様……信仰と言う清廉潔白が求められる儀式の場で、金銭で解決しようなんて考えは、下劣極まりない行為ですわよ」


「殺すぞマジでお前ッ!」


 俺が勇者の剣を抜いて、女僧侶に襲い掛かろうとすると、獣人盗賊が「や、止めてください勇者さん! どうせボコボコにされるだけれすぅ!」と言いながら押さえつけてきた。


 うるせぇ、例え呪いがあるにしても、コイツだけは俺が息の根を止めないと気が済まねぇ!


「コイツだけは殺す! 勇者の名のもとにこいつだけは始末する! 止めるな獣人盗賊! こいつは吐き気を催す邪悪なんだよォ! グヘッ!」


 勇者の剣を取り出した俺の背後から、獣人盗賊は瓦礫の石を俺の頭部に叩きつけた。

 イッタァ……。破傷風になるよぉ。


「あ、ありがとう、獣人盗賊……」


「いえ……まぁ、勇者様が死んだら事ですし……」


 血を流しすぎたことで、俺は少し冷静になった。

 

「それにですわ、勇者様。

 私はマリィトワ神に信仰を捧げる身です。それゆえ、清らかでなければならないのです。

 なので、風俗に身を落とすのであれば、それは勇者様の方が適任ですわ。

 幸運にも、今は魔王討伐の件で戦場を経験した軍人も多いです。男社会を経験した軍人と言うものは、男色の悦びを知る事が多い。故に。勇者様のような方が女装したほうが需要も高まっております」


「コイツマジふざけんなゴラァ!」


 再び怒りに燃えて勇者の剣を抜いたが、再び獣人盗賊に後ろから瓦礫の石を頭部に叩きつけられ、血を流して俺は黙った。


「あ、ありがとう盗賊獣人……」


「こんなことで感謝されるのであれば……」


 不服そうに、獣人盗賊は答えた。


「と、とりあえず。

 こんな感じで我が勇者パーティは現状、経営難に陥っております。

 そして、その原因となるのは貴女方お3方のせいです。

 そして、俺が異世界転生する前に住んでいた、日本では『エロ同人的メス堕ちしたやつは大人しくなる』って決まりがあります。メス堕ちしてください。ホントマジで。

 俺は弱者男性でもいい! 頼む、お前ら! エロの事しか考えらえなくなるくらいおっさんに調教されて、人格矯正されてくれ! 出費が抑えられるなら、俺はそれでもいい! 

 お願いだから俺をお前らの罪滅ぼしを請け負う勇者の役目から解放してくれッッッ!」


 俺が再び暴れだそうとすると、再び獣人盗賊が俺を抑えてつけてきた。


「勇者さん! 意味も分からない前世の話をするのは止めてくらさい!」


「そうよ勇者。現実逃避の為に前世を持ち出すのは気色悪いわよ」


「マリィトワ神……このか弱きメンタルヘルスの勇者様をお救いくださいませ……」


 この糞パーティどもが。

 言いたい放題に言いがって。


「とにかくだ! 

 この勇者パーティの誰かかか、誰か風俗堕ちする奴を今から決める!」


「ほ、本気ですかぁ……」


「正気じゃないわ」


「マリィトワ神……ご加護を……」


「うるさいうるさいうりさい! じゃんけんをするぞ! じゃんけんで負けた奴が、今から最寄り街の風俗街に身売りすることを決定した! 勇者決定だ! 魔王を倒した勇者が決めた! いくぞッッッ!」


「「「「じゃーんけーん!」」」」


 こうして、我らが勇者パーティの雌雄を決したジャンケンが始まった。


☆☆☆


 勇者パーティが宿泊する街にて。


「お前が新人か」


「はい……」


「ん、まぁ外観は悪くねぇ。あとは愛嬌次第で客は呼べそうだな」


「はい……」


「緊張しているのか? 肩の力を抜けよ」


「ひうッ……止めてください……」


「初心な反応するじゃねぇか……こっちまで昂ってきちまった」


「その……」


「わーってるよ。金払いのいい客しかお触り厳禁だろ? ちょっと肩組んだだけじゃねぇか」


「はい……」


「最初のお前の客は、ツルーキャ街の豪氏だ。本来は新人に任せる相手じゃないんだが、お前を見込んで任せてんだ。決して、粗相だけはするんじゃねぇぞ」


「はい……う、うぅ……初めてなのに……ぼく、初めてなのに……」


「……本当に期待できる新人だな。ま、その見た目ならそうそう大丈夫だろう。

 相手も男色家だしな。

 少しサービスしてやら、きっと良い金額稼げるだろうよ。


 じゃあな、自称勇者さん」


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