第八話 仲直り

食事を終えた後、家族は各々の時間を過ごし、やがて夜が更け、就寝の時間になった。


 僕たちは、子供部屋にいつも通り立て2れつ横3れつに布団を敷く。そして最後に美穂さんがやってきて僕たちが、布団の中に入ったのを確認して部屋の電気を消してくれた。




「みんな、おやすみなさい。」




「「「おやすみなさーい」」」




 子供部屋は暗くなり、僕たちは布団の中で眠るために横になった。しかし、しばらくすると子供達はまだ眠くはなくて、小さな声でボソボソとおしゃべりを楽しむ。これが、普段当たり前のような風景で昨日までの僕は、布団にくるまり税所に寝ていた。だけど今日は、




「フミ、ハヤト少しいいかな?」




 おしゃべりをしている二人に声をかけた。




「ソラお兄ちゃん?どうしたの?」 「……何かようなの?」




 いつも静かに寝る僕に、声をかけられた二人は目を丸くしてびっくりしたようだった。




「あの………今日あったこと、謝りたくて………二人には酷い事言っちゃったから………」




「……………………」




 あの石橋の上での出来事を心から二人にあやまる。事情を知ってるユウキはあえて幼い姉弟の相手をしてあげている。そして、まず最初に口を開いてのはハヤトだった。




「大丈夫だよ。ちゃんとあやまってくれてありがとね。」




「ハヤト………」




 ソラはハヤトの優しい言葉に安心したような表情を浮かべた。




「それに、大体の原因はソラ兄よりユウキ兄にあるようなものだしね」




 ハヤトがユウキに目線を向けると、ユウキがバツの悪そうな顔で顔を背ける。




「………あたしは………」




 次に、フミが口をあける。




「あたしは、ソラお兄ちゃんがあの時、言ったこと…とっても傷ついたよ。」




「っ………………本当にごめん」




「うん、あたしは………ミホかーさんもユウキお兄ちゃんもハヤトもアヤもジュンタもいるこの家の家族のことが大好きなの。それをバカにされたり否定されたりするのが一番大嫌いだし許せないよ」




「…………………」




 静かに、心から自分の言ったしまった暴言に後悔をするソラ。


 ただフミは言葉を続ける。




「でも、ソラお兄ちゃんもあたしの新しい家族だから、嫌いにはなれないよ」




 フミが、ソラに微笑みかえす。




「フミ………」




「でも、許したわけじゃないからね。ソラお兄ちゃんはバツとしてあたしのお願いを聞くの!」




「………わかった。僕にできることがあったら言って」




 ソラは甘んじて、フミのバツを受けることにした。そして、フミはソラに命令する。




「ふふっ、ソラお兄ちゃんはバツとして今日はあたしにくっついて眠ること!」




「えっ、えぇぇ~~!!」




 予想外の命令に驚いてしまうソラ。




「声が大きいよ、ソラお兄ちゃん」




「でっ、でも………ほかのお願いじゃダメかな?」 ソラが交渉してみるが、




「ダメ!お願いは絶対だから!」 フミに即却下されてしまう。




 そんな様子を他人事のように、見ていたユウキが面白そうに笑いだした。




「あははっ!無駄だぞソラ、フミは結構わがままだからな。あきらめろ」




「ユウキ~………」 ソラがユウキを恨めしそうに睨みつけると、




「何言ってんの?ユウキお兄ちゃんもだからね」




「えっ、あっ、ちょ………」




 フミがユウキに近づいて手を引くとソラの布団に引きずりこむ。




「せまい~…なんで僕の布団に………」




「くるしぃ~~なんでおれまで~………」




「フフッ、あったか~い」




 三者三様の反応をしていると、アヤとジュンタがギューギューの布団にやってきて、




「おにいちゃんたち、たのしそ~~アヤもやる~~」 「ぼくも~~」




 ちびっ子二人組が、布団の中に突っ込んでくる。それに加えて…




「ならぼくも、しつれいしまーす………」




 止めと言わんばかりにハヤトまで乱入してくる始末に結果、一つの布団に6人の子供達がおしくらまんじゅう状態になっている。




「あっつぅ~~~お前らもっと離れろよ!」 騒がしいユウキ。




「ユウキお兄ちゃんうるさーい」文句を言うフミ。




「そんな声出すとミホかーさんが起こるよ~」のんびりなハヤト。




「えへへ~楽しいねぇ」この状況を楽しむジュンタ。




「うん!ソラにぃ~もギュー」ソラに抱き着くアヤ。




「………眠れない」そして、ポツリと呟くソラ。




 そんな騒がしい子供部屋は、美穂の私室まで届いていたが、




「………みんな仲直りできてよかった」と今日は大目にみることにした美穂だった。


 翌朝、子供達を起こしにいった美穂そこには、お互い絡み合って熟睡している兄妹たちがいたという。






 ーーーーーーーー




「………結構、綺麗になったかな?」




「おーい~!ソラ~~!!遅刻するぞ~~!!」




「!!、今行く~~!!」




 玄関から、ユウキの声が聞こえる。僕はその声に返事をしてさっきまで綺麗に拭いていたそれ(・・)を戸棚に置き子供部屋から出てドアを閉める直前、




「………行ってきます」 ガチャリとドアを閉める。




 誰もいない部屋の中、戸棚の上にはソラの大切していたグローブ、泥で汚れシミができたそれは新品だった頃の面影はない………ただ日の光に当たったそれは、新品だった時よりも輝いて見えた。

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