第7話 幼馴染
「――朝の6時か……。テンションが上がってたとはいえ、ちょっと粘りすぎたか。ふぁ、ねっむ。でも今日は定休日だからもちょっとだけ頑張って、ついでに朝御飯にするか」
システムの運用とマッスルチキンからとれるささみの数をチェック。
結果少量の野菜だけでバンバンマッスルチキンを生み出せたからドロップさせれたささみは計100で、その大きさも相まって店で提供するには十分すぎる数だとわかった。
腐ることがないからドロップさせ過ぎても困ることはないし、ドロップアイテムとしてステータス画面のアイテムポケットにしまっておけるから冷蔵庫を圧迫することもない。
しかも経験値稼ぎとイキリ爺のストレス発散にもなる。
……ノーリスクハイリターン。
っやっぱこれよこれ。
旨い汁を絞れるだけ搾って啜るの最高。
まぁ肝心のこのささみが不味かったら元も子もないけど。
「味をみるならシンプルに炒め物とかにしようかな? ……でも折角のささみだから女性ウケ気にしてさっぱりといきますか」
まぁ女性客なんてうちの店にほとんど来ないけど。
来るのはいつも静かに隅のカウンター席で食べてる女性とあいつくらい。
いや、あいつはそもそも客じゃないか。
「なんにせよ、朝からこってりはしんどいし……メニューはあれで決定っと」
俺はざっと作る手順を思い出し、まず鍋に水と酒と塩を入れ火にかけた。
そしてそれが沸騰する間にアイテム欄からささみを3本取り出して下準備。
丁寧に筋を取り除き、大きすぎるため2つに切る。
変なぬめりはないものの、いびつな形で所々血が混じっているのか赤く目立つ部分があり、一応これをトリミング。
あとは沸騰したお湯にささみを入れて、再度沸騰したら火を止めて余熱でじっくりと火を通――
「あれ? 今日定休日だよね? なんでこんな時間に出勤してるの?」
「いや、そっちだってなんで定休日って分かってて扉開けるの?」
というかなんで扉を……あ、そういえば定休日の看板を立て掛ける時鍵をかけ忘れてた。
テンションで誤魔化してるけど完徹で頭が全然回ってないな俺……でも勝手に入って来るのは流石におかしいよね! いくら幼馴染みだからって遠慮無さすぎない!? しかもこの人、店に来るのいつも開店前で、しかも平気で卵貰ってくんすよ!
「いやぁ、今週分貰うの忘れててさぁ。今月ピンチだからお願いっ! また分けてくださいっ!」
「……。土下座はっや……。まぁ、いいけど」
「流石幼馴染み! 仲良くしてて良かったあ!」
「全然仲良くしてくれた覚えないけど。そもそもここに来たのだって卵スープの画像がバズってから――」
「まあまあまあまあ、堅いこと言うのはやめましょうよ! それに私がアイドルとして一山当てたら倍以上に返すからさ! 女、相坂真波(あいさかまなみ)この言葉に二言はないよ!」
「30過ぎのいい歳してアイドルって……。女優じゃ駄目なの?」
「……。女優ならいけると思うの?」
「顔はいいし……なんだかんだ頑張ってんだろ?」
「それはそうだけど……」
「ま、30過ぎの需要も今は高いみたいだから程々に頑張れよ。卵、今日はいくつ持ってく?」
「……20個」
「容赦な!」
「……次貰いに来るの、遅くなりそうだから」
「そうか。あ、それなら餞別代わりにちょっと新メニュー食べてってくれよ。女性客向けに出そうと思っててさ、感想貰えると助かる」
「女性向け? この店で?」
「そう! ささみ肉の料理で、さっき茹で初めたんだけど、これが結構色艶が良くてさ、旨そうなんだよ! もうちょっとでできるけど、どうする?」
「ヘルシーな料理……じゃあご飯は大盛りで!」
「……。本当に遠慮ないのな。真波のその図々しさだけは見習いたいかも」
「だけって?」
「いいえ。なんでもありません。って俺が下手に出るのおかしくない?」
「確かに」
顔を見合せお互いに笑うと俺は調理へ、真波は何故かスマホを取り出して厨房を覗き込むのだった。
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