クールだったはずの幼なじみが僕にモテ期が来てから寝込みを襲ってくるのだが...
月村 あかり
ツンデレとの日常
第1話 寝込みを襲われました
はて、これはどういう状況だろうか。えっと、襲っていいんだろうか?いや、僕が襲われてるのか?
「
寝起きの僕の横でぱっちりと目を開けながら横たわる幼なじみを見やる。何がしたいんだ?ダボッと着ているセーターの襟から覗くその...その豊満な...これ以上言わせるな。
「
何故だ?何故、幼なじみが僕の寝込みを襲うんだ?正直、理性と欲望の狭間で正常に頭が働いてない。
僕の枕を奪いながらつやつやの水髪を押し付けてる姿とか、訴えかけてくるようなその碧眼とか、奪いたくなるようなぷるぷるな唇とか。全てが僕を誘っているようにしか見えない。これでも11年間温めてきた想いというものがあるんだが。
からかわれてるのか?なんで朝から僕を試すようなことを...。早くしないと言葉より先に手が動いてしまいそうだ。
「な、なんで...」
パサパサになっている口の中を潤すように唾液を飲み込む。上手く出てこない言葉を振り絞って投げた問いはかわいい首傾げで全てを解決されてしまう。いや、解決はしていないのだけど僕の思考が停止する。
「だって構ってくれないんだもん」
か、構う...?構うとは...。構いたいし、構って欲しいし、あんなことやこんなこと、沢山したいのだが...?
え、構うって2つ意味あったっけ?それとも、萌も僕と同じで―。そう思ったところで萌がむくっと起き上がる。
そして枕を僕の顔に押し付ける。萌のシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。やばい、朝から天国。
「とでも、言うと思った?最近、色んな女子に鼻の下伸ばしてるみたいだからちょっと制裁。だらしない」
萌がベッドから立ち上がる。少し乱れたスカートの裾から見えるかもしれない聖域を一生懸命覗いたけれど、さっと直されてしまう。見上げると吹雪のような冷たさの瞳と目が合った。
「クソ変態」
さっきまでの甘さどこ行った?そんな萌ももちろんいいけど。大好きだけど。
色んな女子に鼻の下を伸ばしてると言ってたが、基本僕が鼻の下を伸ばすのは萌にだけだ。そりゃ男子の嗜みとして、胸元に目をやったりスカートの裾から覗く足やらその上の隠された部分やら見てしまうのは仕方ないことだと妥協して欲しい。でも、僕が愛しているのは大好きなのは、付き合いたいのはキスしたいのは、抱きしめたいのはその先までシたいのは、一生涯萌だけだと誓える。
最近は、逆に女子たちの方が僕にウハウハというか。なんでか知らんが、最近モテ期らしい。まあ、萌は例外で全くと言っていいほどその気を見せてくれないけれど。
「はいよ、朝飯お待ちー!」
大人しく座っている萌の前に朝食を出してやる。僕は両親が幼い頃から2人で海外出張に行ってしまうような家庭だったから料理がまあまあ得意だ。その逆で萌は料理がこの上なく苦手だ。
オマケに、料理を作ってくれる両親も今は家に不在なためこうして僕の家にやってくる。この時ばかりはナイス、両親と叫びたくなる。料理、得意で良かったー!!
「いただきます」
向かいで食べている姿をニコニコと見つめていると、萌はギロリと鋭い視線を向けてくる。ん?なんだい、その攻撃的な目は。
「あんまり見ないで」
そう言ってそっぽを向かれてしまった。ああ、かわいい。なんで僕の幼なじみってこんなに可愛いんだろう。
肩にかかるくらいの長さに揃えられた細めの髪の毛に今すぐ触れたい。でもそんなことしたら吹っ飛ばされるんだろうな...。いっその事、さっき襲っちゃえばよかった...。
そんなことを考えていると手にさくっと何かが刺さったような感覚が走る。な、何事!?手に視線を移すと、フォークがさっくり刺さっていた。
「っ...!?」
僕が急いで立ち上がると、何食わぬ顔をしている萌と目が合う。な、なんですか!?血、滲んでますけど!?
「キモイ事考えてる顔してたから」
それにしたって仕打ちが酷すぎやしないでしょうか?そんな冷たい表情も可愛いけどさ。と、思っているとまたフォークが飛んできそうだったので大人しくしておくことにした。
「はい、弁当!」
ニコッと笑みを投げながら弁当を渡すと、萌は素直に受け取る。表情は僕を軽蔑しているけれど。軽蔑されてもめっちゃ好き!
「きもい。...けど...ァリガト...」
やばい、全然聞こえてないようでめっちゃ聞こえてる!デレだ...!!たまにしか見せないデレだぁ!!
本当は踊り狂って叫びまくって、興奮を体全体で表したいけれどそんなことをしたらもう一生デレたりして貰えない気がするからグッと我慢する。これは、聞こえてないフリをするのが1番いいんだ。そうだ、冷静にだ、僕...!
「ん?なんか言った?」
僕の問いに、萌は背を向けた。背中まで可愛いとかもはや末期?萌症候群、末期??
「何も言ってない、バカ...」
僕は今日も幼なじみが可愛すぎて困る。でも、絶対にカップルにはならないんだ。たとえ、萌が僕を好きと言ってくれたとしても―。
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