第三話:部室にて現象は認識される
俺たちが通う摩訶不思議高校は学費の安さが特徴の私立の高等学校だ。たぶん、平気でそこらの公立高校より安い。しかも、偏差値も低いわけではない。それでも定員割れを起こすほどに不人気だ。その理由は、摩訶不思議高校の立地にある。摩訶不思議高校は街中から少し外れ、山を少し登ったところにある。それに加えて、学校の周りを墓地が囲んでいる。なんなら学校自体も、もともと墓地があったところに建設されたらしい。
そんな摩訶不思議高校だが、校舎の形も不吉だ。校舎は十字架の形をしており、それが二つ並んでいる。そしてその二つの校舎を渡り廊下が結んでおり、上空から見れば大文字のHに近い形となっている。
校舎は校門から見て左側の校舎には教室や特別教室があり、右側は部室棟となっている。 そんな部室党4階の端の教室こそが、俺と月華先輩が所属する不思議部の部室となっている。活動内容は、不思議なことに関する相談を受け、問題を解決することらしいのだが、俺が入部してから活動していた様子はない。まあ、当然のことだろう。部室党の三階はどの部活も使っていないし、四階は不思議部しか使っていない。わざわざ部室まで足を運ぶのなんて面倒だろう。さらには、部員は俺と月華先輩だけで、他の生徒に知られているかも怪しい。おそらく、卒業まで活動することなんてないだろう。
そんなことを考えながら、部室の真ん中に向かい合わせになるように置かれた二つのソファーのうち、俺がいつも座っている奥側のソファーに座ると先輩が、俺を指さしてきた。「ちょっと、日向君! 今ソファーの上にプリントがあったよね?」
「そうなんですか?」
腰を少し上げると月華先輩の言う通り、二回ほど折られた紙が置いてあった。俺はそれを開かずに、月華先輩に手渡す。
先輩は受け取るとソファーに腰を下ろした。
「こんな紙は春休みに入る前まではなかったはずだ。しかも、窓は鍵をかけて閉めてあった……これが密室殺人、湯けむり道場編か」
「いや、殺人じゃないですし、湯けむり要素皆無ですし、ドアに鍵ついてないから密室じゃないですし」
「ついてないならつけるだけじゃないか!」
「つける? 餅でもつくんですか?」
「いや、つけるのは漬物だよ」
「俺キュウリが好きです」
「あんなの棒状の水じゃないか」
「ちょっ! 許せねえ、こいつ! キュウリ農家さんに謝れ!」
「すまなかった」
先輩はそう言いながら、子どもが新しいおもちゃを開けるような手つきで、紙を開いた。
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