純粋な無知と愛ゆえの狂気

 私は山本華凛やまもとかりん。二十一歳。女子大生。

 今日は私と同じ大学に通う彼の家に初めて来ていて。家事を手伝っているの。

 彼ったら、洗濯物も食器もためにためっぱなしで…

 私は綺麗好きなので、洗濯機を回しつつ、食器を洗ったの。とても効率的。私ってば天才!

 食器を洗い終わっても洗濯機の終了時間までは 十五分ほどあったから、私は洗濯が終わるのを待つ間、彼の漫画を読むことにしたの。

 そうしたら、ベッド上で漫画を読んだからか男性特有の体臭が鼻をかすめたの。私はこの匂いが好き…

 漫画を読み始めて数分後、それが彼が先週、古本屋で買ったものだったからか急に便意を催したの。

 くそお。家の中でも起こるのか!青木まり子現象!

 私はそう心の中で叫んでトイレに駆け込んだの。

 けど、トイレのドアを開けてびっくり。

「トイレ掃除してないんかい!」

 私がそう大声で叫ぶほどトイレはひどく汚れてて…

 便臭に合わさって栗の花のような異臭を放っていたの。まあ男子だから仕方ないか…

 私はさっきも言った通り綺麗好きだから、トイレをすました後に目いっぱいトイレ掃除をしたの。

 そうしたら、めちゃんこピッカピカになったの。

 ついでにトイレスタンプを近所のドラッグストアで買ってきて、便器に付けてあげたの。

 やがて夕方になり…彼がいつも帰ってくる一時間ほど前になったので料理をすることにしたの。

 冷蔵庫には全く食材が入っていなかったので、スーパーで買い出しして野菜いっぱいの肉野菜炒めを作ることにしたのよ。私ってば太っ腹!

 包丁で野菜を切り刻んでいると…

 ガチャリ、とドアを開ける音がしたの。

 彼がいつもより早く帰ってきたみたい。私は満面の笑みを浮かべながら…

 うれしすぎるあまり包丁を置くのさえ忘れて、意気揚々と彼の元に駆けていって抱き着いてやったの。私って大胆!

 でね…

「おかえり~」って

 元気な声で言ったの。

 彼は緊張しているみたいで…

 私の熱い抱擁に対して無反応だったの。可愛い。

「お前…」

「誰だ…」

「あなたの彼女よ。とぼけちゃって~」

 彼、冗談なんか言って…

 そんなにユーモアセンスもないもないのに…

 無理してギャグを言わなくても…

 おかしな人ね…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る