実話ホラー

ある実在する人形寺の話

 私は学生時代、大学のある市に住んでいた。

 1回生の頃は兄と共同生活をしていたが、二回生の後半からは一人暮らしをし始めていた。そして、時は経ち、私が三回生の頃にそれは起きた。


 当時、左足の腓骨神経麻痺に苦しんでいた私はリハビリと筋トレを兼ねて、下宿の近所を朝にたまにウォーキングしていた。

 朝5時~7時くらいの間で30分程で行う簡単なウォーキングだった。


 確かその日は朝の6時くらいにウォーキングしていたのだが、とあるお寺の塀の前を通っている時に、違和感…そう、何か視線のようなものを感じたのだった。

 私が視線恐怖症なのもあって、視線に対して少し感覚過敏な所があるので、それで感じたのかもしれない。

 視線の出所は、お寺の門の近くの電柱の下に置いてある、市指定の焼却ゴミの袋からだった。複数個ある。

 そして、その〇色・半透明の袋の中には、どれも、何か…たくさんのものが詰まっている。

 私は近づいてみた。


 すると、そこには、のだった。


 日本人形が多かったように記憶している。

 一体の日本人形がゴミ袋の表面、半透明のフィルム越しに黒目がちな眼を向けていた。

 私は、その人形と目が合ってしまった。

 私はゾッとして、すぐさま、その場から立ち去った。

 そして、それ以降はその寺の前をウォーキングコースにしないことを決意したのだった。


 後に調べてわかったのだが、そのお寺は人形供養で有名な場所だった。

 私は人形供養に詳しくないのだが、供養した人形はゴミ袋に入れて焼却ゴミの日に捨てるのだろうか?

 私のイメージでは、お焚き上げをして供養しているイメージがあるが…

 果たしてあの袋に居た人形たちは、きちんと供養できている人形だったのだろうか?

 とにかく、あの複数の袋に、目一杯詰め込まれて入っていた人形のイメージと、私と目が合った日本人形の黒目がちな大きな眼のイメージは、7年以上経った今でも、まだ私の脳裏に焼き付いている。

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