反響音

「だどここはこ!!?」

 暗闇の中で俺は叫んだ。飲み会の帰り道、あまりの眠たさに公園のベンチで横になりひと眠りした後、目を開けたら…こんな場所にいた…

 少し歩いていてみたが、この空間はとても狭く、体を横にできるぐらいの幅は無く、トイレの個室くらいの部屋に思えた。部屋を満遍なく手探りでサーチしたが、何も置かれていなかった。が、引き戸らしきものはあった。

「れや出かこ早郎鹿馬野!!くこらしが」

 この密室では、声がやけに反響する。自分でも何を言っているか聞き取れないレベルだ。

 叫びながら、引き戸と思われる部分を思いっきり叩くが、びくともしない。叩いていると手のひらから血が出始めた感覚があった。素材は固く、鉄製っぽかった。

 息は問題なくできるので、通気口はあるのか…

 何時間も叩いては叫ぶを繰り返していると、部屋の中に光が入ってきた。予想通り通気口があったらしくそこから入ってきた光だ。日光と思われた。

 通気口の小さな穴を見てもはっきりとは周りが見えなかったが、とりあえず外にいることだけはわかった。叫ぶと誰か助けに来てくれるかもしれない。

「ぇくけか!ーおい誰助てれ!」

 今自分の持っている力すべてを絞り出して大声を出しながら、ドアを叩いたが、それは無駄だった。声を出し続けてひどく喉が渇いてきた。そしてその疲労感から眠気も襲って来た。


 いつの間にか寝ていた俺は、何やら周りに人が集まるような足音がして目が覚めたやいなや、突如、浮力が襲って来た。何かアームのようなものに密室が持ち上げられている感じだ。俺は体のバランスを崩し、上手く身動きはとれなかったたが、なんとか叫び声だけはあげた。

「!さくし!まがに中人いす出てだい」

 その俺の声にならない声が通じたのか、すぐに浮力は無くなり、密室が地面についた感じがした。

 これは好機と俺は、すぐさま立ち上がり、何度もドアを叩いた…が…

 結局、無駄だった。

 そうこうしているうちに、今度は何かベルトローラーのようなもので密室が運ばれている感覚が足元からした。後方からは、ガシャコンガシャコンという大きな機械音がする。

 俺はそのとき、自分が居る場所がどこなのか察し、恐怖した。

「かただ工ックスラプ場っの!」

 どんどん大きくなる機械音の中、俺は涙を浮かべて何度も何度もドアを叩き続け叫んだ…

「!いくにだ!いくにだ嫌死たな!嫌死たな!―――だはぬ死の嫌!!!」

 俺の叫び声もむなしく、密室、おそらく鉄製の物置小屋は真っ逆まになり、奈落の底へ落ちていった。

「あああああああああゃぎああああああああ ああ…」

 ガシャコンと機械音が聞こえてすぐ、俺の頭は小屋ごと潰され、そこで意識が飛んだ。


【参考文献】

こちら葛飾区亀有公園前派出所:#76 恐怖の箱男!?.フジテレビ



 



 

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