第144話 Side - 15 - 80 - じゃすらっくこわい -
Side - 15 - 80 - じゃすらっくこわい -
「ぐすっ・・・リゼちゃん酷い、一緒に帰って欲しかったのに、お友達なのに・・・」
「姫様仕方ないですよ、リゼ様だってお仕事あるし、この前も忙しいって言ってたじゃないですか」
「だってぇ・・・お友達と一緒に外国を旅する機会なんてもう無いかもしれないのに」
「私で我慢してください」
「トリエラさんにはいつも感謝してるよ、私にとても良くしてくれるし・・・お友達だし」
「お友達・・・ですかぁ」
「え・・・違うの?・・・私お友達だと思ってたんだけど・・・ぐすっ・・・」
フルフル・・・
「いえ!、姫様のお友達なんて言われて・・・私嬉しくて、それに私なんかがお友達でいいのかな・・・って」
「もちろんだよ、今は誰よりトリエラさんが私の側に居るんだよ」
「そう・・・ですか、嬉しいな・・・えへへ・・・」
こんにちは、私の名前はリィンフェルド・フェリス・ローゼリア、16歳、ローゼリア王国の第一王女をやってます!。
今私はラングレー王国で第二王子殿下の結婚式に参加して、あとは各国を経由してお家に帰るだけ、明日にはここを出発して2日かけて国境を越え次の国に向かいます。
お家に帰るだけと言っても私は超大国の王女様なので・・・通過する国の王様との謁見、王城や領主邸での歓迎会、各国自慢の名所や史跡、観光地で見学・・・やる事がとても多いのです・・・あぅ・・・憂鬱です・・・。
それに・・・私はお年頃の女の子、トリエラさんが言うには近隣諸国の中でも超優良物件らしくて、色々な国の王族や上級貴族のご子息達が獲物を狩るような目をして待ち構えているのだとか・・・。
でも私は外国にお嫁に行く予定はありません、対外的には聡明な王女様という事になっていて、他国に嫁ぐと馬鹿でポンコツなのがバレるのです・・・。
「はぁ・・・」
「ため息なんてついてたら幸せが逃げますよ」
「ここに来る時にはフローリアン王国、メールセデェェス共和国、スタンザ帝国・・・あとは・・・セルボ聖公国を通ってラングレー王国・・・」
パチパチ
「姫様よくできましたぁ」
「いくら私でもそれくらい覚えてるよ」
「帰りは・・・カリーナ王国、オースター帝国、・・・・あれ?」
「姫様、大陸の地図をどうぞ、機密書類なので取り扱いには注意してくださいね」
「あ、ありがとう、えーと・・・アルト共和国、レオーネ王国、ジェミニ連邦共和国・・・海を渡ってシャレード王国、そこからまた船に乗ってローゼリアのサウスウッド領・・・わぁぁん!、遠いよぉ!」
「これも大事なお仕事ですので我慢して下さい、訪問国の皆様も姫様に会うのを楽しみにしてますよ」
「そっかぁ・・・でもこれでエテルナ大陸のほとんどの国に訪問した事になるね、残りはミラ共和国とベレット王国、それからアルシオーネ帝国かぁ、ミラは確か内乱で危険だから遠慮してくれって言われたんだっけ」
「はい、それからベレットについては陛下が「行かなくていい」と仰ってました、ほら、リゼ様の件で・・・」
「あぁ・・・あれね、まだお父様怒ってたんだ・・・ちょっと可哀想だよね、・・・アルシオーネは今回寄ったら遠回りになり過ぎるから今度改めて訪問する・・・って話だったかな?」
「来年、皇帝陛下のお誕生日を祝う晩餐会に出席する事になっていますね」
「その時はリゼちゃんに頼んで転移で行きたいなぁ」
「ダメです姫様」
「わぁぁん!」
「はい・・・これで布帯も取れたし、少しずつ腕や肩を動かそうね」
「ありがとう、凄いねリゼルくん、俺は今までこんなに丁寧に治療してもらった事が無いよ」
「最初は何も持たずに腕を前後左右、肩も同じように動かして固まった筋肉をほぐすの、無理は絶対にダメだよ・・・違和感ある?」
「今は違和感が少しあるかも・・・これでまた剣が持てるのだろうか?」
「うん、大丈夫だと思うよ、でも僕がいいと言うまで剣は持ってもダメだし振ってもダメだよ、慌てずにゆっくりね・・・急に激しく動かすと悪化するから」
「分かった」
「それじゃぁ僕はこれで、お大事にね」
私は今、トゥーリックさんの宿屋の休憩室でクック・グリンベーレさんの腕の治療をしています、私はクックさんと喋るのがまだ怖くてぎこちないから筆談だけどね・・・経過はとても良好、これからゆっくり時間をかけてリハビリをするのです。
バタン・・・
「ふわぁぁ・・・クックさんのリハビリも始まるのかぁ・・・最近忙しくて少し疲れたのです・・・」
「リゼル君大丈夫っすか?、最近本当に忙しそうで心配っす、この街でゆっくりするって楽しみにしてたのに・・・」
私の後ろをついて来ていたシャルロットさんが心配そうな顔で言いました。
「うん、僕もそのつもりだったんだけどね・・・お仕事が追いかけてくるの・・・」
「少し休みましょうよ」
「ううん、日本で注文してたレギンスが届いたの・・・博士から頼まれた令嬢の治療・・・準備しなきゃ」
「呪いの刃で斬られた子ですよね」
「博士が先に身体の大きさを測ってくれてたから、レギンスの注文を先にしておいたの、・・・明日は直接会って症状を見て来る予定、だから博士のところに転移して一緒に行こうと思うの」
「私も行きましょうか」
「その子はあまり他人に身体を見られたくないらしいの、・・・だからここでお留守番していてくれるかな」
「はい、それはいいっすけど・・・」
「大丈夫だよ、博士のお友達のお家だから僕が危害を加えられる事は無いと思う・・・あ、もう夕方・・・転移の時間だ・・・騎士団本部に行かなきゃ・・・」
「・・・」
「今日は食料5箱と・・・騎士様が8人・・・合ってますか?」
「はい、よろしくお願いします」
「ほい!、転移!」
いつものように交代の騎士様達とデボネア帝国のお屋敷に転移すると、駐留している騎士様が困り顔で魔法陣のあるお部屋に立っていました、何かあったのかな?。
「あれ?、騎士団本部へ転移させる荷物はどこだ?」
いつもはお部屋に用意されている輸送用の箱が今日はありません。
「あぁ、すまん、準備の奴が体調不良でな、少し手間取ってる」
「おいおい、ちゃんとしろよ、待ってもらうのか?、それとも明日の転移で送るのか?」
「悪いが少し待っていてくれ」
「早くしろ、団長に怒られても知らんぞ、・・・という訳でリーゼロッテ様、申し訳ないのですが部屋の外で少し待っていて下さい、必要なものがあれば遠慮なく言ってもらえれば用意しますので」
コクリ・・・
今までは段取り良く準備されていた荷物が今日は遅れているようなのです、・・・仕方ないので待っている間お屋敷を散策しようかな・・・。
「フーフフ、フーフフ・・・」
私は鼻歌でお気に入りの曲を歌いながらお屋敷を歩いていました。
ローゼリア王国内で毎日お昼に放送されている「魔導ラディーオ」の音楽番組「聴いていいとも!」。
その番組の「歌え!、スターダスト!」の枠では私が向こうの世界の色々な曲をカバーして歌ったものを流していて、若者の間でとても好評なのです。
最初は著作権が・・・作曲者にお金払わなきゃ・・・ジャスラック怖い!、って怯えてたけど、ここは異世界!、ローゼリア王国!、ジャスラックはこの世界まで取り立てには来ないのです!。
おかげで私とオーニィ商会が共同出資して作った「オーニィ・ミュージック・エンタテインメント商会」は急成長中!、この売り上げをなんとかして向こうの世界で活動しているミュージシャンに還元したくてアメリア様に相談したけど・・・「そんなのバレなきゃ大丈夫だよ!」って言われました・・・。
ドン!
「ひぅっ・・・」
もう準備できたかな・・・そう思って魔法陣のお部屋に引き返そうとした時、突然背後から肩を掴まれて壁ドンされたのです!、まさか・・・ジャスラック?。
「ひぃぃ!、ごめんなさい!、悪気は無かったの!、・・・でも異世界での楽曲使用手続きなんて分かんないし勝手にお金振り込む訳にも行かなくて!、お詫びにCDいっぱい買ったのです!・・・あれ?・・・女の子?」
壁ドンの相手は首輪をした女の子でした、女の子で良かったのです!・・・これが男の人なら確実に漏らしてたのです!、この子は確か・・・ここの娘さんで・・・リーシャさん?。
そのリーシャさんが壁ドンしたまま物凄い早口でデボネア帝国語を喋っています。
「あぅ・・・私、デボネア帝国語・・・分からないよぅ・・・」
私が困惑していると今度は両肩を掴み激しく揺らされました。
「うぁぁ・・・や・・・やめて・・・痛いよぅ」
「おい!、何をしている!」
騎士様が異変に気付いて来てくれました。
ドン!
「きゃっ」
私に掴み掛かっている(ように見える)リーシャさんを騎士様が突き飛ばしました、リーシャさんは廊下に倒れます。
「あぅ・・・ぐすっ・・・ひっく・・・」
「大丈夫ですか?リーゼロッテ様、・・・団長に報告しないと・・・」
「ぐすっ・・・私は大丈夫・・・少し驚いただけ」
リーシャさんは・・・騎士様に突き飛ばされて泣いています。
・・・何か言ったほうがいいのかな?、でも言葉が通じないのです・・・。
「#$+*T_T#”@”>ω<&$・・・ニ・・・ニホン・・・ノ・・・ウタ・・・」
「え?」
「イマ・・・ウタッテタ・・・アイカワナナセ・・・キョク・・・ナゼ?」
「・・・」
確かに今私が歌っていたのはお母さんのCDコレクションにあった相川七瀬の「恋心」・・・何で曲を知ってるの?、それに・・・。
「日本語喋ったぁ!」
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