第136話 Side - 15 - 74 - いれいなー・じゃにぃー -
Side - 15 - 74 - いれいなー・じゃにぃー -
私の名前はイレイナー・ジャニィー、ここラングレー王国、魔法騎士団の団長です。
私は魔力量が多く、見た目は10代半ば、人によっては10代前半の幼女に見られる事もある21歳、王国史上最年少で騎士団長を務めさせて頂いています。
あの日、私はいつものように魔力を薄く伸ばし、王城とその周辺に張り巡らせてお城の警備をしていました、特に2日後には第二王子殿下の結婚式が予定されており、各国から要人や外交官の方々が大勢お泊まりになられています、警備を怠ってはならないのです。
「ひぃっ!・・・何?、この凄い魔力!、お城の中に突然現れたよ、敵かもしれない!」
騎士団詰所に居た私の肌がざわりと粟立ちました、魔力が多い魔法騎士団員が側に居る時にも同じように肌がざわつくのですが、今日の「それ」はいつもの比ではありませんでした、こんな強い魔力は初めて・・・。
私はお城に居る他国の魔導士達に気付かれてはまずいと思い、その魔力の主がいると思われる周辺に結界を張りました、人は通れるけれど放出される魔力だけ外に出さない、私特製の魔法陣・・・これで余程強い魔導士以外は気付かれる事は無いでしょう。
ざわ・・・
「団長!、今の気配なんですか?、団員の皆が驚いて騒ぎになっています」
私の部下・・・副団長が詰所に飛び込んで来ました。
「騒がないで、今は他国の来賓が大勢滞在されています、不安を煽る言動は控えて、それから得体の知れない敵が城に侵入したようです、伝令を出して陛下に報告、近衛騎士団長と、騎士団長、騎士団総長にも連絡して、騎士団長と総長は・・・今夜は王城の外回りの警備だったね、それから今城に居る魔法騎士団全員に召集をかけて、今すぐ!」
「はっ!」
バタバタ・・・
「・・・何これ・・・魔力が多過ぎて私の張った結界が破られそう・・・化け物?・・・伝説の魔王かも・・・でも今城に居る騎士は私と部下が半数、それに近衛騎士団、・・・守り切れるかな・・・私の全力でもこれは勝てないよぉ・・・」
幸い魔力の主は最初に確認したお部屋から動いてない・・・あの部屋は確かローゼリア王国の王女様がいらっしゃる・・・何かあったら私の首だけでは済まないよぅ・・・ローゼリアとは友好国だけど王女様に何かあったら大変な事に・・・あぅ・・・胃が痛くなってきた・・・帰りたい・・・。
「みんな急に呼び出してごめん、魔力量の多い人は気付いてると思うけど、城の中に何者かが侵入したの、とてつもなく魔力が多くて、もし敵なら城の被害が甚大になります」
ざわ・・・
「さっきのあれか・・・」
「俺もやばいと思ってたんだ・・・」
「静かに・・・お願いよく聞いて、今騎士団長と騎士団総長は式典の警戒の為、城の外に出ていてすぐには戻れないの、近衛騎士団には王族や来賓の方達を守ってもらう、だから敵の相手をするのは私達魔法騎士団・・・の、ここに居る団員になります」
ざわ・・・
「しかも相手は伝説の魔王かと思う程に膨大な魔力を持っています、残念ながらここに居る騎士団全員の力でも敵わないでしょう」
ざわ・・・
ざわ・・・
「ならどうすれば・・・」
「今から私が説明する作戦は決定事項です、従わない者は処罰されます、いいですね」
「・・・」
「私が今張っている結界の一部を解き魔力を放出して敵を誘き寄せます、私一人で対峙し敵の動きを封じるのでその隙に団員の半数でローゼリア王国の王女殿下の安全確保及び保護、残りの半数は・・・私ごと敵に全力の攻撃魔法を打ち込んでください」
「そんな事をしたら団長が・・・」
「あの化け物のような魔力の持ち主を倒す方法はこれ以外ありません、私が倒れたらその後は副団長の命令に従って下さい」
「団長ぉ!」
「嫌だ!、団長!」
「うぉぉぉ!団長死なないでください!」
「団長が死んだら俺達はこれから誰を頼りにして生きていけばいいんだ!」
「団長・・・ワシより先に・・・」
「ありがとう、みんなにこれほど心配してもらえて嬉しいです、最初はこんなガキに従えるか・・・って言われたのにね・・・でもこれは城や国王陛下、数多くの国賓の方達の安全を最優先に考慮し、最善の作戦だと私が判断しました、必ず命令に従って下さい、では作戦を開始します」
「・・・さて、準備できた、行きますか」
「団長、ご武運を」
「副団長・・・いや、ジェイムスさん、あとは任せていいかな、みんなを頼むね、くれぐれも私の魔法に巻き込まれないよう、みんなを十分に下がらせて安全なところから攻撃するようにね」
「・・・はい・・・うぅ・・・」
「泣かないで、結界を張って他に被害が出ないようにするから、もし私が抑えきれなかった時は計画を変更して国賓の方達の避難を最優先ね」
「はい・・・」
「じゃぁね、国を守った英雄になるのも悪くないかもね・・・ふふっ」
「さて、ここの結界を解除・・・魔力放出・・・殺気も込めたから向こうが気付けばこちらに来るでしょう、まだ中にいるのは分かってるの、さぁ出てきなさい、私と一緒に地獄に行ってもらうよ」
「・・・早く出てきなさい・・・なんで出て来ないの?」
「・・・」
「あぁ・・・でも死ぬのは怖いなぁ・・・団員のみんなにはかっこいい事言ったけど、足が震えてる・・・、恋もしないで死んじゃうのかぁ・・・まだやりたい事いっぱいあったのになぁ・・・ぐすっ・・・」
「・・・」
「・・・ちょっと待ってよ・・・早く出て来ないと魔力が減ってきてる・・・これ以上時間が経つと結界が維持出来ないのに・・・、そうか、お前が来いと言ってるのね、・・・いいわ、行ってあげようじゃない」
「副団長!、作戦変更、私一人で敵のところに向かうから、あとはよろしくね」
「団長!、・・・やばいな、凄い殺気と魔力・・・近付けない・・・あんなに強い団長でも敵わない敵って何者だよ」
「・・・ここまで近付いても殺気を感じないのは何故?、相当な手練れかも、用心しなきゃ・・・大丈夫・・・怖いけど・・・痛いの嫌だけど、私はやれる、国の為に、陛下の為にそしてお城で働く優しい人達の為に私はお星様になるの」
「・・・長!・・・」
「団長ぉ!・・・」
「こっちに来ちゃダメだって言ったのに!・・・危ないから下がって!」
「違うんです!、その魔力の持ち主はローゼリアの王女殿下の護衛で、リーゼロッテ・シェルダン様、転移魔法陣の開発者で、転移して王女殿下の所に来たと報告が・・・」
「へ・・・?」
「だから、団長は戦わなくてもいいんです」
「・・・」
「・・・」
ガクッ・・・ドサッ・・・
じょろじょろぉ・・・
ほかほかぁ・・・
「団長?」
「きゅぅ・・・」
「わぁぁ!団長!、お漏らし?・・・誰か来てくれ!、団長がぁ!・・・いや待て!、来るなぁ!、止まらない!、団長!、おしっこが止まらねぇよぉ!」
・・・こうして私一人が空回りして、お漏らしまでしちゃった一連の事件は解決したのです・・・恥ずかしい!、恥ずかしいよ・・・いい歳をしてお漏らし!、みんなに見られたの・・・次の日、お見舞いに来てくれたみんなの目が生温かかったなぁ・・・。
「おい、団長の見舞いには行ったか?」
「あぁ、さっき行ってきた、涙目でフルフルして可愛かったぞ、挙動不審だったしな・・・昨日の事がよほど恥ずかしかったらしい」
「あれから団員が全員集まって来たからなぁ・・・団長のお漏らし飲みたいって言う奴が居たのには流石に全員ドン引きだったが・・・」
「副団長もやばかったぞ、団長を抱き抱えて医務室に運んでたが密かに匂い嗅いでたのを俺は見逃さなかった!」
「やばいな・・・」
「それにしても凄かったよなぁ、団長の本気・・・魔力が身体からゆらゆら湯気みたいに出てたし、殺気もやばかった」
「それな、俺、結構離れた場所で待機してたが鳥肌が立ったぞ、えげつない魔力量だよな」
「不謹慎だが団長の本気の戦いも見てみたかったよな、俺らとの演習、すげぇ手加減してくれてたのな」
「冗談じゃないぞ、俺団長死ぬの嫌だからな!」
「予定では俺らが団長に向けて攻撃魔法打ち込む手筈だったからなぁ・・・・敵じゃないと分かって本当に良かったよな」
「それな!」
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