第134話 Side - 15 - 72 - せんぞくまほうきし -

Side - 15 - 72 - せんぞくまほうきし -



ぱぁっ!


「うわ眩しっ!」


「リィンちゃん、呼んだ?」


「・・・」


「トリエラさん久しぶりだね元気?、それからムッツリーノさんも・・・あ、そうだ、これリィンちゃんが馬車の上でガン見してた肉串だよ、みんなで食べよう!、それから超美味しいケーキもあるよ」


「リゼちゃん、私が何を言いたいか分かる?」


「ううん、私そんな凄い特殊能力無いから分かんないよ」


「何で貴方がラングレー王国で私の視察という名の見世物に参加してるの!」


「偶然?」


「そんな事ある訳ないでしょ、私が嫌だって言ってるのにお父様にこの仕事させられたの見て笑ってたんでしょ」


「いや本当に騎士様がいっぱい来て街の人が集まってたから、何だろうなぁって見てたらリィンちゃんが馬車に乗って死んだような目をして手を振ってた・・・」


「・・・」


「ここ良いところだよねー、街も綺麗だし食べ物も美味しいの、それに博士と一緒にゴンドラにも乗ったんだぁ」


「ゴンドラ・・・」


「・・・姫様あの街に着いてからずっとゴンドラに乗りたいって言ってましたもんね」


トリエラさんが肉串をもきゅもきゅ食べながらボソッと呟きました・・・リィンちゃんゴンドラみたいな感じの乗り物好きだもんね・・・。


「羨ましい・・・羨ましいよリゼちゃん!、私だってゴンドラに乗りたい!、でも危ないからダメだってこの国の宰相さんが・・・ぐすっ」


「そりゃそうだよ、間違って転覆でもしたら国際問題になるからね」


「でも乗りたいの、・・・ゴンドラ・・・」


「こっそり転移してちょっとだけ乗って帰って来てもいいんだけど・・・、リィンちゃん忙しいよね、私たち明日にはギャラン大陸に行く予定なんだけど」


「・・・あんな所に何しに行くの?、デボネア帝国が崩壊して混乱してるって聞いてるけど・・・」


「陛下の依頼でね、あそこに転移魔法陣を置いて行き来できるようにしてくれって、魔法陣が無いと私の魔力でも1日に3回が限界だけど魔法陣がある所なら消費する魔力が節約できて何度でも行けるんだぁ」


「お父様が?、何するんだろ・・・」


「さぁ・・・私は言われた通りにしてるだけだから分かんないよ」






コンコン・・・


「あ、誰か来た・・・リゼちゃん、ちょっとそこのソファの影に隠れててもらえる?」


「うん、いいよ」






「はいどうぞ」


ガチャ・・・


「失礼します、夜遅く申し訳ありません、国王陛下がこちらに滞在されているリーゼロッテ・シェルダン様に是非お会いしたいと・・・」


「わぁ、何で分かったのです?」


「天井裏に影の人が居たのかなぁ・・・仕方ないね、行くよリゼちゃん」


フルフル・・・


「い・・・嫌なのです!、いきなり陛下にって・・・怖い・・・それに私は今私服だし」


「ラングレーの国王陛下が会いたいって言ってるんだから仕方ないでしょ、両国の友好の為だよ、さ、行こう(ニヤリ)」


「リィンちゃん!、もしかして・・・私だけ楽しい思いしてるのが悔しくて巻き込んだのです?」


「さぁ、何の事かなぁ(ニチャァ)・・・、あ、そうだ、トリエラさん、魔法騎士団に子供達の体験入団の時に着てもらう小さいサイズのローブあったでしょ、魔法騎士団長が調子に乗って本物そっくりに作ったやつ、リゼちゃんの体格に合いそうなのをお手紙転送の魔法陣ですぐに送ってもらえないかな?」


「はい、かしこまりました姫様」


「ふふふ・・・さてリゼちゃん、略式だけど・・・王位継承権第2位、リィンフェルド・フェリス・ローゼリアの名において貴方を私の騎士に任命します、だから貴方の身分は今から私の専属魔法騎士ね」


「・・・い・・・嫌なのです、騎士には憧れてたけど私には無理・・・」


「拒否権はありません!、私の言うことを聞くのだぁ!」


「いやぁぁ!」






今私はチベットスナギツネみたいな表情でラングレー王国の王城・・・謁見の間に続く廊下を歩いています、私の前にはリィンちゃん、後ろにはトリエラさん。


嫌だって抵抗する私にリィンちゃんは「転移して逃げないでね、国王陛下にはお会いしますって伝えてあるから逃げたら国際問題になるよ(ニヤリ)」って・・・酷いのです・・・ぐすっ・・・。


でも・・・子供達の体験入団の為に作られたものとはいえこのローブ、黒地に金糸で飾り刺繍され背中には国の紋章まで入った本物そっくりでかっこいいやつなのです、実は着てみたかったから少し嬉しいかも。






「どうぞお入りください」


謁見の間に入って、豪華な絨毯の上を歩き、国王陛下の前へ。


「リィンちゃん・・・緊張するのです、・・・怖い・・・(ボソッ)」


「大丈夫だよ、陛下優しいから」


定位置で止まってリィンちゃんはスカートを摘んで軽く頭を下げ、私は後ろで臣下の礼をします、これで良いんだよね・・・。


「よく来てくれたリィンフェルド殿下、そしてリーゼロッテ嬢、夜遅くに呼び出して済まなかったね、楽にしてくれ」


頭を上げると、玉座には30歳後半に見えるスレンダーな美しい女性・・・ラングレー王国の国王陛下って女王様?。


「ふふふ、リィンフェルド殿下、私に紹介してもらえるかな」


「はい、陛下、私の親友であり、専属魔法騎士、リーゼロッテ・シェルダンです」


再び私は臣下の礼をします・・・何回やればいいのですかぁ!。


「お、おはちゅにお目にかかります陛下、リ・・・リーゼロッテ・シェルダンと申しましゅ、以後お見知り置きを・・・」


噛んだのです!。


「まぁまぁ!、可愛いわぁ!、ここじゃ緊張して可哀想ね、場所を変えましょう、お隣にどうぞ、美味しいお茶を用意してあるの!」


いきなり陛下が気さくなおばちゃんと化しました、何、この人、キャラが濃いのです!。


お隣の部屋には美味しそうなお菓子と良い香りのお茶が用意されています、・・・じゅるり。


私とリィンちゃん、それから陛下は椅子に座り、トリエラさんはリィンちゃんの後ろに控えます、陛下の後ろには長身の女性騎士様、ものすごい美人さんなのです!。


夜も遅かったのですが簡単な自己紹介の後、夜中まで色々な話題で盛り上がったのです、陛下は魔法に詳しく、子供の頃にはローゼリア王国にも留学していた事があってローゼリアの陛下とは親友なのだそうです・・・それに私のお父様とも知り合いなのだとか・・・。


護衛の目を盗み一緒に街へ抜け出して悪さをした、国宝の壺を割って今の陛下とお父様、3人並んで前陛下にお説教された、魔法陣の失敗で煤まみれになった・・・などなど、若い頃、ローゼリアでやらかした武勇伝を楽しそうに語る姿は予想以上に気さくなおば様・・・いやお姉様と言った印象。


でも、セフィーロの街は綺麗だった、ワインも美味しかったって話題になって私がポロリ・・・と口に出した博士とやろうとしてる大規模転移網の話には物凄く食い付いて来たのです!、私がまだローゼリアの陛下にも話してない構想段階だから・・・と言うと、計画が動き出したらウチも一枚噛ませなさい!、観光に力を入れてるから転移網は是非欲しい!、と目を爛々と輝かせて迫られました・・・目が座っていて怖かったのです!。


それに転移魔法陣の開発者である私には以前からとても興味を持っていたのだとか・・・、その発端も陛下やお父様からの自慢話によく私の名前が出てきた為・・・。


実は私とお話をしたいと思っていたのだけど私が極度の人見知りだと聞いて遠慮していたらしいのです、でも今日私がリィンちゃんの所に転移して来た時、この国の魔法騎士団長が突然現れた大きな魔力の持ち主を感知し、城が大騒ぎになった、陛下は直感的に私が転移して来たと思い、リィンちゃんのお部屋に遣いを出したら予想通り私が居た・・・と。


「あぅ・・・大騒ぎになってたなんて・・・ご・・・ごめんなさい、安易に他国のお城に転移しちゃダメだった・・・ですよね」


フルフル・・・


「本当は大問題なのだけど、今回は許してあげましょう、リゼちゃんが来てくれたからこうやって楽しくお話しできたのだから」


「はい、ありがとうございます・・・、もうしません・・・ぐすっ・・・」


「あらあら泣かないで、怒ってるわけじゃないの、他のあまり友好的じゃない国でやると面倒な事になるかもしれないわよ・・・って事、しかもリゼちゃん密入国っぽいし・・・、でも今日から私とリゼちゃん、リィンちゃんはお友達、お友達に会いに来るのは何の問題も無いわ、事前に連絡をくれたらいつ来てもらっても良いわよ」


「いいのです?・・・」


「えぇ、今日は私も楽しかったわ、もっとお話ししたいけど、明日からの予定が詰まっててね、もう寝なくちゃ、リィンちゃんも明日からは謁見や式典の準備で忙しいでしょ、式典で居眠りしたら大変だし・・・、だからまた今度ゆっくりお話ししましょう」


「はい、陛下」


「じゃぁ、またね、時間ができたら連絡するわ」


「では失礼します」






「うぁぁぁ、緊張したのです・・・でも陛下、楽しい人だったね」


「うん、今日の話を聞いてると・・・お父様も私を陛下と会わせたくて今回のお仕事を押し付け・・・いや頼んだんじゃないかなって思ったの」


「そうだね・・・、さて、私は明日からギャラン大陸だぁ・・・やだなぁ・・・」


「頑張ってね、でも一応リゼちゃんは専属魔法騎士として私がこの国に居る間は陰から守ってる事になってるからね」


「え、あれまだ有効なの?」


「もちろん!」






しゅたっ!


「ただいまぁ、博士ぇ・・・」


「おう、おかえり・・・ってなんだよそのローブ、魔法騎士団のやつだよな」


「うん、私もよく分かんないんだけどね、成り行きでリィンちゃんの専属魔法騎士になったの、それから陛下に密入国がバレて、お友達になって、いつ城に遊びに来ても良いわよ・・・って」


「なるほど分からん・・・」

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