第119話 Side - 15 - 61 - だれかたすけて! -

Side - 15 - 61 - だれかたすけて! -



コンコン・・・ガチャ・・・


「・・・」


「あなたはハロキティ・リラックーマァ嬢で間違いありませんね」


「・・・はい」


お部屋に姿絵を持って入ってきた騎士様にそう聞かれたので私は答えました、騎士様は私と姿絵を見比べて頷き・・・何かを書き込んでいます。


「明日の夜のお食事、希望はありますか」


「・・・は?」


「常識の範囲内ではありますが、ご希望されたお食事を用意致します」


「・・・」


「今すぐでなくとも結構です、よくお考えになり今日の夕方お食事を持ってここに来る騎士に伝えて下さい、希望が無ければ「無い」と答えて頂いて結構です」


「・・・はい」


バタン・・・ガチャ・・・







「あーあ、最後のお食事かぁ」


「え?」


数日ぶりにアターシャー様が私に話しかけて来ました、視線は私じゃなく鉄格子の入った窓の外を向いていますが・・・。


「知らない?、処刑される罪人に与えられた慈悲みたいなものよ、死ぬ前に希望するものを食べさせてあげようっていう心遣い」


「死ぬ?・・・」


「あなた、何度も面会を要求してたけど通らなかったみたいね、あぁ・・・残念・・・ふふっ」


「待って、でもシェルダンの当主様と面会して私は釈放・・・」


「あぁ、誤算だったわ、面会「できれば」釈放の可能性が高いと思ったのだけど、面会出来なきゃどうしようもないじゃない、シェルダン家の人々にあなたの気持ちが伝わらないまま、予定通り罪人として処刑される事になるわね、最後のお食事が明日って言ってたから明後日かな」


「え・・・」


「察しが悪いわね、あなたの運が尽きたって事、こうなったら諦めて処刑されるしかないなぁ・・・」


ようやくアターシャー様が私と視線を合わせました、とても楽しそうな表情で・・・あぁ・・・私は、私の心はこのクズに弄ばれてたんだ・・・悔しくて涙が滲みます。


「っ・・・お前、私を騙して・・・」


「あら、人聞きの悪い、私は騙してないわ、普通は面会を申請したら相手に伝わる筈、それが何故か伝わらなかった・・・或いは伝わったけれどシェルダン家の当主があなたに会いたくないって断ったか・・・」


「会いたくない・・・」


「そう、当然ね、ずっとあんな善良な人達を騙してたんだから怒っているのでしょう、それに、婚約者様に危害を加えようとしたのが許せなかったのかもね」


「それを知っていて、私に希望を持たせたのか!、・・・ありもしない未来に縋ろうとする惨めな私の姿を見て、お前は笑っていたんだ!」


「そうね、いい暇潰しになったわ」


その言葉を聞いて私は怒りで目の前が真っ赤になりました、我慢していた涙が頬を伝わります。


「この・・・」


パシッ・・・ドサッ!


「あぅ・・・痛い!」


「あら、幼い頃から格闘技を嗜んでいたこの私に勝てると思って?、私を殴ろうとしたわね、少しお仕置きが必要かな」


「あぅ・・・痛い!、腕が・・・折れる!」


「フフ・・・もうすぐ死ぬのだから腕が折れてもいいじゃない、でも・・・あまりやり過ぎると私が目を付けられるわね、これくらいで許してあげるよ」


「・・・うぅ・・・ぐすっ・・・痛いよぉ・・・悔しいよぉ・・・ひっく・・・」


「さて、私も寝てる時は無防備だからこの辺でお別れしましょう」


ドンドン!


「きゃぁぁ!、いたぁい!、外に居るんでしょ!、この女に殺される!助けて!」


ガチャ・・・バタン!


「何の騒ぎだ!」


「騎士様ぁ・・・こいつがいきなり私に殴りかかってきて、なんとか避けて転ばせたけど、私殺されそうになったの!、お願い!、お部屋を別にして!」


「このっ・・・」


「ほらまだ私をあんなに睨んで!、こわぁい!」


「分かった、上に報告する、お前は・・・そうだなとりあえず外に出ろ!」


「・・・ちが・・・違うの・・・こいつが私を・・・私の心を・・・」


バタン・・・ガチャ・・・


2人いた騎士様の一人が外に出て行き、続いてあの女を連れてもう一人の騎士様もお部屋を出て行きました・・・悔しい!・・・許せない!・・・でも私は何も出来ない・・・。


「うぅ・・・ぐすっ、・・・コナンザさま・・・」







「明日のお食事、どうしますか?、何かご希望は?」


夕方、食事を持って来た騎士様が私に聞きました。


「ありません」


「そうですか、分かりました」


「あ、待って、お願い!、シェルダンの当主様とお話を・・・」


バタン・・・ガチャ・・・


「うぅ・・・うわぁぁぁぁ!、わぁーん!、お願いだから・・・私の話を聞いて!、お願いだからコナンザ様とお話させてよ!、・・・お願い・・・」


ドン!、ドン!


私は手の皮が剥けるのも構わず、扉を叩き続けました。


バン!


「うるさい!、やめないと拘束するぞ!」


「ひぅっ・・・」


ドサ・・・


扉を開いて中に入って来た騎士様に突き飛ばされました・・・痛いよぉ・・・。


「お願いだから私の話を・・・」


騎士様は心底面倒臭そうに私を見て。


「無駄な会話はするなと上に言われてるが・・・あえて言わせてもらおう、宰相やお前の派閥のせいで俺の弟は死んで妹は寝たきりだ、呪いの刃事件を忘れたとは言わせない!、今ここでお前を殺してやりたいが、・・・殺せば妹の世話をする人間が居なくなる、だから何もしない、自分の犯した罪を償え、罰を受け入れろ!」


バタン!・・・ガチャ・・・


「うぅ・・・私、そんなの知らないもん、・・・嫌だ・・・誰か助けてよ・・・」






翌日、私のお食事は朝と夕方、とても豪華でした、でも私はほとんど手を付けませんでした、最後の食事になるかもしれないけれど、とてもお腹が空いているのに、それ以上に死への恐怖で食べ物が喉を通らないのです。


結局その夜は一睡もできませんでした。






ガチャ・・・バタン!


翌朝、怯える私のところに騎士様がやって来ました、いつもの朝食の時間よりかなり遅れて、手には何も持たず・・・。


「外に出て下さい」


「・・・嫌」


「手間をかけさせるな、こっちに来い!」


「嫌だ!、離して!、いやぁぁ!」


私は引き摺られるようにして2人の騎士様に抱えられ、塔の地下室に連れて来られました。


地下のお部屋には3人の男性と机が一つ、その横に椅子が置いてあります、他には何もありません。


「座りなさい」


豪華な服を着た男性が私に言いました。


「これより国家反逆罪により死刑を言い渡されたハロキティ・リラックーマァの処刑を行う」


「ひっ・・・」


・・・私、ここで死んじゃうの?、嫌だ!、まだコナンザ様に謝ってないのに・・・。


「嫌だ・・・お願いです、・・・コナンザ様に・・・会わせて・・・」


もう一人の男性が冷たい目をして私に言います。


「あなたはシェルダン家の当主に何度も面会を申請されたようですが、当主様はお会いにならないと回答されています」


「嘘・・・」


「嘘ではありません、ご子息を殺害しようとなされた事に大層お怒りの様子でしたよ」


「・・・」


「では始めます」


「嫌だ・・・」


「最期に言い残すことはありますか」


「嫌ぁ・・・」 


バタン・・・コツコツ・・・


「こちらをお飲みください」


「・・・」


「陛下のご慈悲です、首を吊るされたり、斬られたりする事なく楽になれます」


「嫌だ・・・誰か助けて、・・・ぐすっ・・・」


「自分でお飲みになられない場合は絞首か斬首となりますがよろしいので?」


「やだ、怖いよぉ・・・コナンザ様助けて、嫌だぁ!」


私は椅子から立ち上が・・・ろうとしましたが2人の男性に肩を掴まれ動けません。


「チッ・・・面倒だな・・・おい、手伝ってやれ」


「いやぁ!、離して、お願い・・・死にたくない!」


顎を掴まれ、無理に口を開けられました、そしてコップを持った男の人が近付いて来ます。


「貴族らしく、自分の罪を受け入れなさい!」


コップの中身を口に入て、無理やり飲まされました、嫌だ!、こんな最期なんて、コナンザ様・・・助けて・・・。


液体が通った喉やお腹の中が焼けるように熱い、苦しい、吐き出さなきゃ!。


「ゲフッ・・・ゴフッ!・・・」


突然の嘔吐、マリアンヌ様に作っていただいたお洋服が汚れちゃう、・・・慌てて口に手を当てて・・・あ・・・血が・・・いっぱい・・・。


「ゴホッ!、ゲホッ!・・・あぅ・・・お腹・・・痛いの・・・苦しいの・・・コナンザ様・・・」


どれくらい血を吐き出したのでしょう、身体が冷たくなって・・・、あぁ・・・私、死んじゃうんだ・・・。


「・・・これで良かったの・・・ゴホッ・・・これは・・・一番最初に・・・私が望んだ事、コナンザ様・・・ゲフッ!・・・さようなら・・・それから、・・・ごめんなさい・・・」







「罪人ハロキティ・リラックーマァの死亡を確認」


「思ってた以上に時間がかかったな」


「俺はまだ慣れない、これくらいの娘がいるんだ」


「これも大事な仕事だ、そのうち慣れるさ、・・・嫌な仕事だがな」










「・・・・・・」



「・・・・・・」









「・・・・・・」







「・・・ぬふぁっふ!、ぎゃぁぁぁ!、喉!、お腹!、痛くて苦しくて血が!、血がぁぁぁ!・・・って、あれ?」


痛くない・・・私、どうなったの・・・。


「・・・え、あそこに居るの私ぃ?」


私はお部屋の天井に浮かんでいて、見下ろすと血だらけの私が倒れていました。


そしてお部屋に居る男性達が何かを話しています。


しばらく私の身体を確認して、騎士様一人を残してお部屋から出て行きました。


「・・・」


残された騎士様は何かそわそわしています・・・そしてゆっくりと私のスカートをめくり・・・中を覗き込み・・・下着を・・・


「うわぁぁぁぁ!、待って!、いやぁぁぁぁ!、見るなぁ!、見ぃるぅなぁぁぁ!」


私の大切なところをガン見している腐れエロ騎士の所に行って止めようとしているのに、私の身体は天井に浮いたまま・・・声も聞こえてないようです。


「・・・って!、なんじゃこりゃぁ!、手ぇ!・・・す・・・透けてるし!、それに・・・全裸!」


お・・・、落ち着くの!、しっかりするの私!、手をぐーぱー、ぐーぱー、腕をぐるんぐるん・・・うん、私の意思どおりに動く・・・それに改めて確認したけど・・・全裸。


「もしかして・・・私、ゴーストになっちゃった?」

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